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霊滅師  作者: シクル
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第四十話「集結」

指輪に傷が入ってしまったのが自分でもわかる。原因は明確だ。目の前の男に対して怒りと闘争心を露わにしてしまったためである。

亮太はチラリと指輪を見、すぐに男に視線を戻した。

目的も、何故ココにいるのかも不明な男。この男に関してわかるのは、先程の言葉から霊滅師であることと、霊である亮太を滅しようとしていること。

「やめて下さい! 亮太は悪霊じゃないんです!」

構えている男の腕を握り、必死な顔で男を止める月乃。恐らく戦闘による悪霊化の進行を恐れてのことだろう。

「大丈夫だお嬢ちゃん……。君は騙されているだけだ。俺が必ずアイツを滅する」

どうやらこの男、思い込みが激しいらしい。月乃の話を半分も理解していない。

「女の子に憑くだけじゃなく、洗脳までするとは……ッ! 少年の霊とは言え許せんッ!」

駄目だコイツ。どうやら戦う他に選択肢はなさそうだ。

亮太は面倒そうに頭をポリポリとかき、軽く溜息を吐くと構え直した。

「来いよ勘違い野郎」

挑発に乗り、男はすぐに亮太に向かって駆け出した。

男が目の前まで来ると、亮太は男の頭部目掛けて蹴りを放った。

男は身をかがめて亮太の蹴りを避けると、亮太の顎目掛けてアッパーを放つ。

ゴッ! と鈍い音がし、亮太の顎に激痛が走り、口の中に血の味が広がる。下を噛んでしまったらしい。

少し後ろによろめき、口の中の血を唾液ごと地面に吐きだすと、今度は亮太の方から男に突っ込んだ。

男の顔面目掛けて右拳を突き出す。が、その拳は容易く男の手によって受けられる。

すかさず亮太は左拳を男の腹部目掛けて突き出す。が、その拳も男のもう片方の手によって受けられる。

「らァッ!」

そのまま亮太は男の頭部目掛けて頭突きを喰らわせた。頭蓋骨と頭蓋骨がぶつかる音と共に亮太の頭部に激痛が走る。が、それは相手も同じだろう。

怯んだ男は亮太の拳を握っていた手を離し、頭を押さえながら後ろによろめく。

「こ……の……石頭が……ッ!!」

よろめきながら悪態を吐く男の腹部に、亮太は前蹴りを喰らわせる。

「が……ッ!」

鳩尾みぞおちにクリーンヒット。

そのまま男は蹴られた勢いで軽く吹っ飛び、倒れた。

「二人ともやめて!」

男が倒れている一から少し離れた場所で月乃が叫んでいる。

「霊の癖にやるじゃねえか……」

男は腹部を押さえながらもよろよろと立ち上がる。

「まだやるか?」

亮太が問うと、男はニヤリと笑った。

「当然」

懐かしい感覚。生前、ケンカに明け暮れていた時期を思い出す。何とも言えない高揚感、強い相手と思う存分殴り合えるという感覚。

自然と、亮太自身の顔にも笑みが浮かんでいた。

男が構え、同じように亮太も構えた。

「行くぜ……ッ!」

どこか楽しそうに亮太が呟いた――――その時だった。


「やめんかッッ!!」


「――――ッ!?」

どこからか老婆の声が響く。

「お婆ちゃん……?」

月乃が振り向くと、そこにいたのは月乃の祖母、稜子であった。

「金城! 勝手に外を出歩くでないッ!」

「す、すいません!」

男は慌てて稜子の方を向くと、ペコリと頭を下げた。名前はどうやら金城と言うらしい。

「お婆ちゃん……。この人、知り合い?」

月乃の問いに、稜子は静かに頷く。

「月乃、亮太、金城。すぐに家に戻りなさい」

稜子に連れられ、亮太達はすぐに城谷家へ戻った。



「二人ともお帰りーっ!」

待っていたのか、月乃達が家に戻ると満面の笑みで妃奈々が玄関まで駆け寄って来た。

「お帰りなさいませ」

その後ろで、楓がペコリと頭を下げる。

ふと、玄関に並べられた靴を見る。

「お客さん……来てるの?」

「はい、客間でお客様方がお待ちしております」

月乃の問いに答えたのは稜子ではなく、楓だった。

「依頼?」

楓は首を横に振った。

「いえ、詳しいことは稜子様からお聞き下さい」

「うむ。客間で説明する」

稜子は呟くと、客間へと入っていった。



「あら、つっきーにりょー君じゃない」

「う、詩祢さん!?」

客間に入り、最初に目についたのは詩祢であった。その横には先程の金城という男も座っていた。

他に二人、見慣れない人物が正座している。

一人は家柄の良さそうな小学生くらいの少年。もう一人は女性用のスーツを着た二十代後半といった感じのショートボブヘアーの女性だった。

「皆の者、よく集まってくれた」

稜子の声が客間に響き渡る。

「これより、黒鵜討伐に関する会議を始める!」

黒鵜。その言葉を稜子が発した途端、月乃達を除く全ての者の顔つきが、変わった。

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