宇宙要塞カイツール その1
ダレットに金で雇われている黒の3連鬼。
彼等に課せられた依頼は、勇者の異能を調べあげて後・・・
「地図の巫女を殺さずに誘拐するとは、かったるい話だぜ」
3兄弟の末弟テッドが、ブツクサと文句を言い募るのです。
「異能の剣士と一緒に居た小娘が、そんなに大事なのか?」
次兄のヘットもつまらなそうに長兄のヌンに零しました。
「そう言うな。依頼金は既に受け取っちまったんだからな」
ヌンだけは依頼の遂行を認めるような雰囲気ですが?
「依頼には巫女の奪取だけしか明記されていない。
あの剣士坊やの始末なんて一言だって書かれてはいないんだ」
確か、異能を調べるように書かれてあったと仰られていたのでは?
ニヤリと悪いかを更に邪悪に染め、ヌンが二人へ言わんとしてるのは。
「報告は下方修正してある。
剣士は未だに覚醒などしておらんと、ダレットには知らせておいた」
「そう来なくっちゃな兄者!」
「あの剣を俺達の物にしてしまえば、俺達が銀河の覇者に成れるのも近付くぜ!」
ユージの異能を我が物とするって?
王者の剣を奪う気なのですね?
でも、どうやったら魔剣を奪えるなんて考えているのですか?
「待て待てテッド。
俺は無理に貰う気はないぜ?
奴がどうしても渡してくれるって言うのなら、貰っておくがな」
ユージが天使を渡す筈が無いでしょう?
「そうだよな、無理やり手にしたって仕えなきゃ意味ないしな」
そうですよ、テットの言う通りだと思うんです。
「だがなテット。
坊やが誰かを助ける為に手放すとあれば・・・どうだ?」
言い出しっぺのヌンは、自分の考え付いた悪巧みを教えるのです。
「そうか!兄者は巫女を捕えて引き渡せと言う気なんだな?」
ヘットがいち早く理解したようです。
「なんだよ二人して。俺にも分かるように説明しろよ」
まだ理解出来ていないテットが、二人に説明を求めるのです。
「つまりこうだ。
俺達が巫女を生け捕りにして、ボーヤに剣との交換を迫る。
しかも魔剣の主人を俺達に替えて渡せと迫るんだ。
言う事を聴かなけりゃぁ、娘を殺すと脅せばいい」
なるほど。
悪知恵がまわりましたね。
「そうか?!でもよぉ、巫女を先に奪わなきゃいけないんだろ?」
「当たり前だ」
作戦を聴いたテットでしたが、何やら一文句言いたげです。
「巫女が大人しく俺達に捕まるかが問題だよな。
下手をすりゃぁ、坊やの前で自害してしまわないか?」
噂では巫女と言う娘は、気高く自己犠牲を厭わないと聞き及んでいたから。
「もしも巫女が自害でもした日にゃぁ、違約金迄支払わされちまわねぇか?」
ダレットに雇われているのなら、巫女だけは生かしておかないと・・・と考えたようです。
「馬鹿野郎!そんなヘマをやらかす訳がないだろう。
娘を死ねないようにしておけば良いだけだろうが。
捕えた瞬間に眠らしちゃえばこっちのもんだぜ」
計画の遂行には問題なんて在りはしないと、ヌンが末弟の忠告を一笑に伏します。
「そうかぁ?だとしたら娘を独りにしなきゃならねぇよな?」
ユージが傍に居たら、そもそも捕らえることが難しいと?
「そこだ。
先ずは娘を誘き出す方法を考えるんだよ」
「なんだよぉ~、考えてなかったのか」
萌を誘き出す方法が、未だに確立されてはいなかったみたいですね。
「お前も考えるんだよ!」
折角の作戦でしたが、萌を捕らえる手段までは考え付いていないみたいですね。
「日中じゃぁ、人目につくしな。
やはり夜の静寂が良いだろうが・・・」
夜に萌が独りっきりで居るなんて、考えられませんけど?
「・・・うむむ。考えても思いつかんぞ?」
「駄目だ、こりゃ」
テットが兄達に愛想を尽かして、匙を投げてしまいました。
「考えてもどうにもならんのなら、娘に貼り付いてチャンスを伺うんだよ!」
結局、そうなりましたか。
「おい!、娘の元へ出かけるぞ」
考え事は苦手のようで、黒の3連鬼は打ち揃って出て行く事になりました。
ユージ達の居る街へと。
ダレットの監視が届く前に・・・と。
でしたが・・・ドアクダー幹部は甘くはありません。
「あいつら。
このダレットを本気で怒らせる気のようね」
<アイン>号の自室で、ダレットはグラスを手に呟いたのです。
「もしも、巫女に手をつけようものなら・・・私がこの手で始末してやるわよ?」
壁一面を飾るタペストリーを見上げ、
「お前等なんて私の<アクゼリュース>の敵なんかじゃないって解からせてあげてよ?」
奥に隠されてある、高機動メカに着けられた名を呟いたのでした。
高い機動力を誇り、女神級と呼ばしめる魔鋼鎧の威力は、黒の3連鬼をも凌ぐというのでしょうか?
「赤ニャン子に見せた鎧なんかじゃない。
これが本当の秘密兵器って物なのよ!」
アリシアを敗北に追い込んだ物よりも強力だと、ダレット本人から言われてしまいました。
そんな危険な鎧を出撃して来られては、ユージやアリシアに勝ち目は?
「あいつ等がこの星に来る前に。
片付けなければならないのよ、邪魔なんてされて堪るものですか!」
でも、ダレットは焦っているのです。
モニターに映される惑星間映像を見て。
そこには、もう小惑星要塞の目前までに迫った艦隊が映っていたからでした。
「御承知願えますでしょうか、ミシェル様?」
ワープ通信の映像が、知らせて来ていました。
モニターに映されているのは、彼我の艦隊が干戈を交えんとする姿。
ドアクダーの巡洋艦クラスの赤黒い姿と、左銀河連邦宇宙軍艦隊の巡洋警備艦が向き合う光景。
さながらそれは、惑星間戦争とでも呼べるほどの規模を見せつけているのでした。
「既に最後通牒を拒絶されていますので・・・」
問題は無いとも言えましたが。
「抗戦の許可と、殲滅の是非を」
ミシェル保安官に伺うのは、艦隊の指揮を託されているレミュウス補でした。
「やっておいて・・・何をいまさら・・・」
通信モニターを手で軽くスライドさせるミシェル保安官。
モニターには、触れただけで承認のサインが書き込まれたのです。
「戦闘は速やかに終えるよう。
殲滅は許可しない、降伏する者は逮捕に留めなさい。
まかり間違っても、太陽系破滅砲の使用は認めませんよ」
ミシェル保安官は、相手が如何なる手段に及んだとしても使用するなと命じたのです。
喩え、艦隊が壊滅の憂き目に陥ろうとも。
「艦隊旗艦を後方に据え置くのですね、了解しました」
太陽系破滅砲を搭載している巨大戦艦を。
レミュウス補は、最期の手段として温存すると言い切ったのです。
「いいことレミュウス。
地球にいる反次元爆弾を作動させれる巫女を・・・
殺してしまえば、なにもかもがお終いなのよ。
この太陽系だけでは収まり切れない破滅が、齎されるのだと理解しておきなさい」
それに対して、ミシェル保安官が注釈をつけたのです。
「巫女をこのまま、眠り続けさせるのが我々の務めだと認識しなさい」
触れてはならない鍵。
もしも開けてしまえば・・・
「古から言い伝えられたパンドラの箱。
彼女は今、パンドラの憂鬱ってものの中に居るのよ」
左銀河連邦を、唯の一発で葬り去れる爆弾。
それを作動させない為にも、ドアクダーを停める必要があるのだと。
「戦闘は許可。しかし、脅威を拭い取るだけに留めておきなさい」
地球に直接影響が出なければ、ドアクダーを殲滅しなくとも良いと?
「了解いたしました、ミシェル保安官」
レミュウスからの通信は、そこで終わったのです。
彼女に与えられたのは、ドアクダー艦隊と要塞の無力化。
その際に、太陽系破滅砲の使用は認められず。
ですが、ミシェル保安官は言い忘れてしまっていたのです。
「惑星破滅ミサイルの発射は留め置かれてはいません。
もしも小惑星要塞に手古摺るようならば、発射の判断は我が艦隊にあるという事です」
惑星を破滅に追い込めるミサイルの発射は、連合艦隊にあるのだとレミュウスは考えたのです。
善悪の判断も、そもそもの可否も。
全てが命令一つで決まってしまうのです。
そこに生きる者の命の尊さを完全に無視した、悪魔のミサイルが艦隊に保有されていたのでした。
「戦闘!第7艦隊は、現時点を以って総攻撃を敢行するッ!」
左銀河連邦艦隊が展開する土星宙域において、決戦の幕開けが来てしまいました。
ミシェル保安官の裁可を受け、レミュウス座上の旗艦から命令が下り。
「全艦、発砲を許可する!砲撃初めッ!」
全長2000メートル級の警護艦から、40センチクラスのレーザー砲が敵艦隊目掛けて放たれて。
有効射程内に居るドアクダー巡洋艦に紅い光が突き立っていくのが望見されたのです。
宇宙での艦隊決戦は、光が瞬くたびに何かが消える。
圧倒的破壊が、敵味方に降り注ぐのでした・・・
遂に干戈を交えんとする両軍。
宇宙艦隊決戦の幕は開かれるのでした・・・
運命の会戦が呼ぶのは?
幸か不幸か・・・
次回 宇宙要塞カイツール その2
レミュゥスは艦隊決戦の場に居るのです。絶対の自信を持った連邦軍の中に・・・・




