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機動女神エターナル・レッド ケモ耳ニャン子は俺の女神様?  作者: さば・ノーブ
第3章 Heaven On Earth 地上の楽園
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脅威 その2

真実は・・・どこに?


アリシアと萌は何を語るのでしょうか・・・

姿は普段見慣れたアリシア。

声も・・・聴きなれたニャン子な娘と同じ。


でも、紐解かれるのは・・・



「未来が替えられた?本来の歴史とは違ってしまうの?」


ニャ語を話さなくなったアリシアに質す萌の表情が曇ります。


「そう。アタシの知りえる未来では無くなったの」


これからの未来は、自分も予想が出来ないと答えるアリシア。


「そっか・・・」


未来から、空の彼方からやって来たアリシアが知り得ないと答えて来た以上。


「じゃぁ・・・本来はどうなるべきだったの?

 アリシアの居た世界では、どんな未来になる予定だったの」


想像出来ない未来より、在るべきだった未来を聞いてみたくなった?


「ねぇアリシア。あなたの世界ではユージが保安官になっていたの?」


「え?!」


突然質されたアリシアが顔を向けると、萌は上の空で天井を見上げているのでした。


「萌?」


萌が遠くを観ている様に感じ、話すべきかを躊躇いました。


自分が居た並行世界の野良有次という勇者剣士ブレイヴナイトが、保安官になる未来を萌が知ったのなら?

違う歴史になるとはいえ、自分が来た本来の目的を明かせば萌は何と思うだろうか。

それはユージを慕う萌の心を踏み躙るに等しい・・・


「ホント・・・損な役回りだわ」


機動ポッドの中に居たのなら、こんな残酷な話をせずに済んだのに・・・と。

改めて自分が軽はずみに請け負った任務を後悔するのです。


「こんなことならアルジのユージを目覚めさせるんじゃなかった」


自分が来たばかりに、ドアクダーを急かす結果になった。

ユージに警戒感を持たせないように次元回廊を通って若返り、記憶操作まで行ったのが恨めしく思えてきます。


「ニャン子な私のままでいた方が良かったのかもしれない」


少なくとも、こうして萌に追及されずに済むのなら・・・と。


しかし、ミシェルが警告してきたように歴史は替ってしまったのです。

いつまでもニャン子では居られなくなってしまったようなのですから。


ー 萌に打ち明けたら・・・どうなる?

  私の居た未来には萌なんてそもそも存在していなかったのを知らせればどう思う?

  <地図の巫女>モエルは宇宙船の中で眠り続けていたのを知らせれば?

  本来巫女を継承する立場に居たのは、<珠子>の筈だったと教えれば?


どうしても切り出す勇気が湧きません。


ニャン子としてユージに接近した折、初めて萌の存在を知ったのでした。

だからあの時、萌を見た瞬間戸惑い、不自然だと思ったのでした。


義理の妹の存在を知らされていなかったアリシアが、萌を警戒したのは当然でした。

ユージの覚醒を促すのが目的だったのですから、傍に居る不審者を疑うのは任務として当たり前の事でしたから。


保安官に仕える者として訓練されて来たアリシアが、萌と名乗る不明瞭な存在を警戒して監視する。

与えられた任務上、ターゲットに必要以上近寄る萌を排除するかを調べる内に分ったのです。


それは・・・


「逆に・・・訊いても良いかな萌」


訊き返しても萌はアリシアへ顔を向けませんでした。


「何を?」


唯、上の空で答えるだけ。


「あなたの本当の名は?本当に萌なの?」


「そうだよ。モエルさんは眠ったもの」


そう答えても萌はアリシアに顔を向けません。


「そう・・・じゃないよね。珠子さん?」


「・・・・・誰、それって。

 もしかして・・・<私>を呼んだつもり?」


萌の事をユージの母と呼んだアリシア。

それがどんな意味を持つのか?消息不明な母の名を呼んだ訳は?


珠子と呼ばれた萌が、澱んだ瞳でアリシアに振り返ったのが答えだったのかもしれません。



萌と名乗る娘は、珠子なのだと。

ユージの母親珠子は、何らかの事情で<萌>となった。


アリシアは独自の推理で呼んだのです。


理由はまだ分かり兼ねたのですが、考古学者だった珠子が行方不明となった折に<替えられた>と考えられたのです。


<地図の巫女>を継承する筈だった珠子。

それがどうした訳か<萌>となって現れた。


そこには地図の巫女モエルの想いが隠されていると思ったのです。


ユージに勇者剣士ユージニアスが宿ったのを知ったモエル。

彼女の強い想いが珠子を変えた・・・もう一度<彼>と逢う為に。









考古学者だった珠子がモエルの眠る遺跡に接近、邂逅したのが始りだったのです。


珠子の存在を知ったモエルが意図せず宿ってしまった。

そして願いを果す為に珠子を始まりの姿へと変え、自らの存在を顕したのです。


生まれたての姿へと・・・自らの容姿になるようにと。


地中深くに眠っていた宇宙船の無限動力は数万年の時を越えても尚、生きていました。

地上に居るターゲットに対して物質変換装置を稼働させ得る程の動力ちからを放ったのです。


独りで探索を行っていた珠子へと放たれ、瞬時にDNAまでも変えられたのです。

意図した通りの姿へと・・・



珠子が消えた後、同行していた野良勇人<有次の父>は赤子を見つけます。

彼はその子を同僚の盛野熊太に託したのでした。

盛野熊太は米国人の妻アメリアに子が授からずにいた為、喜んで引き取る事にしたのです。


金髪で翠の瞳の赤ちゃんを、盛野 萌と名付けて・・・


それが、萌の正体。それが地図の巫女を継承出来た理由。


今は野良を名乗る萌。


今は野良有次の義妹に修まった珠子ははだった娘。



だとしたら?



母である本当の珠子は何処に存在するのでしょう?

既にモエルは再び眠りへと就いたというのに・・・




「宇宙船である事は間違いない」


将軍からの報告を受けた、ペンタゴンの情報官がペンを奔らせて。


「国防長官には報告する必要は無い」


部下に命じて書類を差し出すのでした。


「この件は極秘。何もなかったことにしなければならない・・・分かってるな?」


「FBIやCIAにもですね?」


部下が念を押すと、情報官は首を振ってこう言ったのです。


「無論・・・大統領閣下にもだ」


時の政権だろうが、知ってはならない事があるのだと情報官が言うのです。


「全世界に知れるとすれば・・・その時は地球が滅んだ後だろう」


「勿論、我々も・・・ですね?」


部下の嫌味を無視し、手で下がるように命じた情報官が黒い電話機に手を伸ばします。

部下が退出したのを目で確認し、おもむろに受話器を持ち上げました。


「カイツール社のダレット氏に繋いでくれたまえ」


黒電話の相手先はカイツール社という世界規模を誇る多国籍企業。

あまり有名ではないが、その道では名の通った会社でした。


その道?


多国籍で?


しかもアメリカ軍と何らかの疎通のある?


だとすれば・・・答えは単純明快。


「「軍事産業カイツールの代表が出られました」」


交換手の声が教える通りです。

暗躍する企業、世界を股に掛けるブラックな会社・・・それがカイツール社。


その代表に繋いだという事は。


「ダレット氏、ご注文通りに事を運びましたぞ」


「「ご苦労です情報官。後は我が社で引受けますから」」


どうやら横流しを?


「宜しく。軍関係はこちらで統制しておきますので」


「「くれぐれも内密に運んで頂きますよう・・・」」


まさか・・・国家ぐるみの犯罪を?


「ええ、勿論。それが我々とあなた方との約定ですからね、大幹部ナンバー11」


・・・?!ナンバー11と、仰いましたか?


「「口は禍の元ですよ、貴男あなた」」


やや甲高い声が情報官の耳に入ったかと思えば、通信が途絶えました。


「ふん、なにがドアクダーだ。なにが醜悪カイツール社だ!

 夢幻を追い求める多国籍・・・宇宙結社だ!」


電話を投げつけるように叩きつけた情報官が悪態を吐いた相手。

それはやはり・・・ドアクダーのようです。


そして秘密を知った地球人に対して、悪の幹部は?




モニターに映されているのは衛星放送のニュース。


燃え上がる乗用車を取り囲む野次馬が映されている光景を見ている男装の麗人。


「ふっ・・・」


手にしていたグラスを置いて一言。


「口は禍の元って・・・言いましたよ?」


ニヤリと口元を歪めるのでした。


テロップには合衆国情報官の乗った公用車が爆破されたテロを報じているのでした。


「さて。やっと駒が出揃ったようね」


手元にあるのはチェス盤。

しかも3Dフォトグラムの。


駒が自動で動き、次々に相手に攻め込みます。

ビショップが消え、自軍のナイトがチェックをかけます。


「後は・・・この私が直々にキングを貰うまで」


チェス盤上でクィーンがナイトと共に相手のキングを取り囲むと・・・


「それで・・・チェックメイトよ!」


相手のキングが倒され、クィーンが飲み込んでしまいました。


「あ~っはっはっはっ!そして全宇宙は私の元に平伏す事になるのよ!」


大幹部ナンバー11は嘯きます。

いいえ、この場ではカイツール社のダレットと呼ぶべきでしょう。


秘密結社ドアクダーさえも背き、己が支配欲に溺れた者、ダレット・ヨッドと。


遂に地球上で正義と悪との闘いが開かれようとしていたのです。


巨悪ダレットに因って・・・・

明かされる悲劇。

明かされた存在。


萌という謎の存在は何を求めて生み出されたのか。

物語に深く関わるのは、やはりユージだったのです。

ユージによって。ユージだから。ユージの願いは・・・


かくて、全宇宙を巻き込んだ歴史改変作戦は発動されたのです。

赤毛の潜入捜査員に全てを託して。


次回 脅威 その3

全ては・・・愛のため?母親としての愛なのか?それとも異性としての愛なのか?

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