友か下僕か? その2
いきなり命じるユージ。
ですが、周りの子達にはピンとこなかったみたいでして・・・
こんなに速く仕掛けて来るなんて考えてなかったのが実際。
まさかシンバの依頼主が此処まで追い求めて来るとは計算外。
もしも、嵐さんが警告してくれなかったのなら、奇襲を受けていたかもしれない。
「トッポイボーヤ君、言っておくが、店の中では闘うんじゃないぞ」
京香先輩に言われて、気が付いたよ。
「そ、そうですよね。前言撤回、店の外で結界を貼るぞ!」
咄嗟の戦闘準備に気が動転していたんだ。
いくら結界戦とはいえ、店の中での揉め事はご法度だよな。
「うニャ?!ドアクダーの襲来ニャニョかアルジのユージ?」
満腹感に浸っているニャン子がのんびりと訊きやがった。
「野良君?!相手は何処に居るのですか?」
雪華さんは見えない敵に動揺している。
「ゆー兄ぃ?マジで戦闘なの?」
ポケットから財布を取り出そうとしていた萌が小首を捻っている。
「ボクには気配さえ感じられないんだけど?」
依頼主の出現を感じ取れないシンバ。
異能使いであっても奴の気配を察知出来ていない。
「つまりは・・・それだけ手強い奴なのかもしれないな」
店の中を伺っている奴は最初からシンバに異能を悟らせていなかったのを、もっとよく考えておくべきだった。
妖狐の異能を持った嵐さんが見つけてくれていなかったら、本当に危なかったのだろう。
「そういうことよ、ゆー君。
時間の狭間に行っていなかったら、私も見つけられていなかったのよね」
嵐さんが小声で教えてくれるんだ・・・けど。
「うん?どうしてまた時間の狭間なんかに?」
「えっ?!あ・・・っと。それは・・・」
ふと、感じた疑問を投げかけたら、嵐さんが言葉を濁したんだけど?
「ああ、それはな。
嵐の奴が君達の会話を盗み聞きしようとしたからだ」
「ああ?!京香ぁッ!またバラしたなぁ~!」
横で聞いていた京香先輩が、あっさり教えてくれたよ。
「どうして盗み聞きなんて?」
「だって・・・知らない娘を連れて来たから。
どんな子なんだろうって・・・思ったから」
・・・もしもし?!嵐さん?
口をポカンと開けて、俺は言葉に詰まってしまったよ。
「まぁ、それが功を奏したって訳なのよ」
「はぁ・・・そうッスか」
盗み聞きされてても、運が良かったってことだよな?タブン・・・
奴の気配を感じ取れたのは嵐さんが時間の狭間に居てくれたから。
ドアクダーの気配を感じ取れる異能を使っていたから見つけられたのか。
だとしたら・・・
「トッポイボーヤ君、気を付けた方が良いのかもしれないぞ。
こっちが奴を見つけたのがランの異能のおかげなら・・・」
「そうですね、奴も奇襲が出来ないのを悟っているかも知れないですね」
流石、合気道師範代である京香先輩は鋭い。
こっちが敵を知ったのなら、相手だって分かったのかもしれないんだ。
「用心しろよユージ君。
こちらは奴がどんな妖術を使えるのかも分からないんだからな」
顔は俺に向けているけど、瞳は外に居る奴を睨みつけている。
京香先輩は、そこまで心配りが出来るんだ。
「まだ出来そうにないな・・・俺には」
「はん?努力を惜しむなよ、トッポイボーヤ君」
憧れの京香先輩に諭され、励まして貰えた気になった。
「それが義妹ちゃんを護る男の務めだぞ」
ポンと肩をはたいて気合を込められた。
「はい、留めておきますよ心の中に」
京香先輩には感謝しかないよな。
ホント。
上司にしたい女性ナンバーワンだよ・・・あ、上司だったっけ。
感謝を込めて頭を下げると、京香先輩が微笑んでくれた。
「よ~しみんな!ドアクダーとの決戦だぞ」
皆に振り返り、自分自身に発破をかける。
「奴がどんな異能を使えるのかに注意するんだ!」
店を出た途端に結界を貼り、奴との戦闘に備えようとしていたんだ。
「奴を倒してシンバを解放してやろうぜ!」
アイツがシンバを暗殺者に貶めようと企んだんだ。
赦しておけないし、見逃す訳にもいかないじゃないか。
奴を倒せば、シンバの汚点も無くなる筈だから・・・
「いくぞ!戦闘開始だ!」
店のドアを開けた瞬間、左手を奴へ向けて命じるのは唯の一つ。
「アリシア!灼炎王となれ!」
秘密結社ドアクダー幹部、ナンバー11からの命令は単純明快。
この地に居る<地図の巫女>の奪取。
そして邪魔立てする者の排除・・・
原住民達が日本国と呼ぶ、この島国に配属されていたのも何かの縁。
秘密を握る巫女をこの手にすれば、ナンバー11から恩賞が貰えるだろう。
恰幅の良い男がニヤリと哂う。
「ふん、手柄はみんな幹部であるナンバー11に盗られてしまうだけ。
ちんけな褒章などの為に、こんなチャンスを逃せるものか」
恰幅の良い男は嘲る。
「巫女を手に出来れば、直接大幹部に差し出す。
若しくは・・・儂が巫女を手に、宇宙の首領になるのも悪くない話だ」
<地図の巫女>が、どう言った存在なのかを理解していない。
巫女を捕えても宝を発動できなければ意味を為さないのにも、理解が不足しているようです。
「これまでの記録に因れば、なかなかの異能使いだという話だが。
この儂にかかれば赤子同然なのだ」
男が持つ記録が、どのような類なのかは知りません。
ですが、簡単に負けるとは思えませんがねぇ?
「どれだけの魔法使いだとて、これで一網打尽だ」
懐に隠していた瓢箪のように中程が括れた容器を取り出すのです。
「ふふふ・・・かかって来るが良い」
哂う男は闘いを辞していません。
いいえ、むしろ好機だと望んでいたのです。
<地図の巫女>を奪取し、邪魔立てする者を排除する・・・
「これで悪くとも幹部には昇進できる。
いいや、儂こそがドアクダーの首領と成れるのだ!」
獲らぬ狸の皮算用って言葉を知ってますか、あなた?
ドアクダーが待ち構えているのを、薄々だが感じ取っているユージ。
「はいニャぁッ!」
変身を命じられたアリシアが炎を纏いました。
現界する使徒姿がアリシアを灼炎王へと変えていきます。
「野良君!私達も?!」
「いや、未だ待って」
雪華さん達には待機を命じるユージ。
眼で他の異能者達に控えてくれと頼み、アリシアをして闘おうとしていたのです。
「分かりましたわ野良君」
仲間達はニャン子の異能を信じているからこそ控えたのです。
嘗て闘った雪華も、闘わずに済んだ嵐も炎の少女に任せるのでした。
「いつでも呼びつけてくれよなユージ」
地の龍を宿したシンバだって同じ想いです。
「ああ。危なくなったら頼むよ」
炎を纏って揺蕩うニャン子を見詰めたまま、仲間へと応えるユージ。
「アリシア!お前の異能が頼りだぜ!」
「ラ、了解~ニャ」
答えるアリシアはユージに指名されて緊張しています。
でも、少しばかり誇らしげに胸を張るのでした。
アルジたるユージが一番に想うのはニャン子のアリシア。
「アリシア!結界を展開して奴を閉じ込めるんだ」
敵を封じ込めようとユージは考えたのです。
相手をこちらの世界へと閉じ込めてしまえば、少なくとも店にも街にも被害は及ばないと考えて。
そう。
それが今迄のセオリーだったから。
今迄の実践から教え込まれた、当たり前の戦闘形式だったのだから。
だというのに・・・
「引っ掛かったな邪魔者共!」
ドアクダーは結界を貼って封じて来るアリシアに嘲笑うのでした。
「ニャ?!」
「なに?!」
アリシアもユージも、何の事やら分からず。
「このギンキン様に歯向かうなど百年早いわ!」
己を名乗って来たドアクダーをポカンと見詰めるのでした。
その手に握られた瓢箪のような機械にも気が付かずに・・・
なにがドアクダーの余裕と為しているのでしょう?
その手に握られた瓢箪のような物?
果たして戦闘はどうなるのでしょう?
瓢箪といえば・・・「西遊記」を思い浮かべた方も居られるかと?
次回 友か下僕か? その3
戦闘はニャン子の結界で行われる・・・ということは?暑いのか?!熱いのか!




