闘う少女 その1
オードアクダーに因って拉致されそうになっていたモエル。
飛び込んできた二人が立ちはだかるのでしたが・・・
主人の命に、下僕たる真紅の少女が応えました。
呼び出された戦闘妖精烈華が、金色の礫を振り撒きます。
アリシアを包み込む魔法の礫に因って、少女は灼炎王へと変身しました。
結わえてあった黄色いリボンが解け、赤髪が靡きます。
深緑の瞳は異能の炎を宿し、主人のユージに応えたのでした。
「アルジのユージに仇為す者ニョ!焔の中で燃え尽すが良いニャ!」
決め台詞のつもりなのでしょう・・・が、ニャ語は緊張感が萎えますね。
炎を纏うアリシアが変身を遂げ、戦闘妖精に命じるのです。
「烈華ニャん、バスターソードになってニャ」
機動少女が手に出来る最大の武器、バスターソードに成れと・・・
「ふん?!ふんふ~ん!」
戦闘妖精の烈華が、小唄を謳いながらアリシアの右手に載りました。
バァオオオォッ!
猛烈な輝の渦と化した烈華。
妖精の姿は掻き消され、アリシアの手に現れ出て行くのは紅き剣。
柄からの長さ約1メートル程の両刃の剣。
機動少女が持っていた物よりかは若干細短いが、威力は計り知れない。
機動少女が誇った魔力が、そもそも強力過ぎたのですから。
「戦闘準備完了ニャ、アルジのユージ!」
炎を纏うニャン子な灼炎王アリシアが、剣を構えて命令を待ちました。
「ドアクダーを吹っ飛ばすニャか?」
半魚人を前に、アリシアは懼れもなく言い除けます。
「ああ・・・そうだな」
主人のユージはアリシアに命じようとしません。
じっと半魚人と化した校長と、その前に佇む萌を見ているのです。
突然乱入して来たユージとアリシアを睨み返す城戸校長だったドアクダー。
「糞ッ!折角捕まえたというのに・・・こうなれば強硬手段だ!」
半魚人なドアクダーが、腹に着けられていた何かのボタンを押し込んだのです。
紫色に発光するボタンを押したのでした。
ブオンッ!
圧されたボタンが唸ると、途端に辺りが変わっていきました。
「我が結界から逃れられると思うなよ!
ここがお前達の墓場になるのだ、保安官補助手!」
正体を晒し、自らがドアクダーの一味だと告げた様なものです。
アリシアの身分を知る者。
変身したアリシアのみならず、ユージも萌も結界の中に巻き込んだのでした。
つまり・・・
「黄土安久田だろお前の名は?
萌を突け狙って来たのは、お前が首謀者なのか?」
「知っていたのなら話は早い。
邪魔立てする者は全て排除するように命じられている!」
半魚人の黄土安久田が、棘を突きつけて応えたのです。
「その娘だけに用があるのだ。
お前達はこの中で死に絶えるが善かろう」
目的の為には邪魔な存在を抹殺する・・・それがドアクダーのやり口なのでしょう。
結界の中でなら、殺人も他人の目に留まらない。
どれだけ無残な死を遂げても、誰にもバレやしない。
怪人達が結界を利用するのは、潜むだけでなく自分の異能を存分に使う事が出来るから。
ですが、オードアクダーは認識違いを侵していたのです。
相手が保安官補助手だからと多寡を括っているようです。
しかも、萌を人質に獲るでもなくユージに救出のチャンスを与えてしまっていますが。
「勝手なことを言うな!萌は俺が護るんだ」
アリシアに命じる前に、ユージは萌の前に立ち塞がるのでした。
「ゆー・・・ユージ?!」
萌は今、モエルなのでしょうか?それとも義妹なのでしょうか?
半魚人の前に立ち塞がるユージの背に呼びかけるのは・・・どっち?
「アルジ!アタシに命じるニャ!」
ほったらかしにされたニャン子な灼炎王が、アルジの命を待っていたのです。
「命じてくれないと、何も出来ないニャぞ!」
そうでしたね、機動少女も言っていましたよね。
下僕は変身した後、主の命が無ければ何も出来ないのだって。
ですからユージはオードアクダーを倒せと命じれば済む事なのです。
でも、命じなかった理由があるようです。
結界は半魚人が造った筈です。
でも、そこにはユージ達と半魚人ドアクダーの他にも、もう一つの影が存在していたのです。
「喚くな保安官補助手!
お前の相手は、我が下僕がしてくれよう!」
そうです・・・あの娘が再び。
オードアクダーの下僕と堕ちている少女・・・雪華が現れたのです。
「セッカさん?!」
気が付いた俺が呼んだんだが、彼女は無反応だ。
「オードアクダー!お前は彼女に何をしたんだ?!」
教室で観た雪華さんが、本当の彼女なら。
「お前は彼女をどうする気なんだ?
雪華さんは俺達と闘いたくなんて無いんだぞ!」
恥ずかしがり屋で内気で。
それでいて日本人形みたいに肌が綺麗で白くて・・・
そんな雪華さんが・・・なぜなんだ?
「アイツを思うのならば止めておくが良い。
あの娘は氷の魔法を持つ雪女の一族。
いつかは氷結に目覚め、人を襲うだろう存在なのだ」
半魚人は俺に言いやがったんだ。
雪華さんが・・・人を襲うだって?
「雪女の伝説を知っていよう?
雪華はフローズン星の末裔なのだぞ。
古くからこの地に住み、血縁の中に異能を秘めていた。
その血が目覚めれば、人を襲い生気を抜き取る。
雪華は血縁者の中でも特に異能が強い娘なのだ」
フ・・・フローズン星だと?
それに雪女なんて・・・魑魅魍魎じゃねぇか?
話半分にしても雪華さんは途轍もない存在に違いない。
昼間に襲って来た異能を思い出したって解かるぜ。
結界を造れるほどの魔法力を宿し、氷の魔法で攻めて来る。
なまじな戦闘力では太刀打ちできない。
「だとしても。
雪華さんを利用出来るのは何故なんだ?」
俺は雪華さんが、下僕に為らざるを得なかった理由を求めたんだ。
「どうすれば雪華さんを解放出来るんだ?」
こいつを倒したら解放出来るのか?
それとも倒さずとも解放出来る方法があるのか?
「なぜそれ程までに雪華の事を訊くのだ?」
「決まってるだろ!俺はお節介なんだよ」
本当は雪華さんが悲しそうだったからだ。
翳を感じる横顔を見てしまったからさ。
「お節介か・・・愚かな」
呆れたのか、オードアクダーが嗤いやがった。
「だが、どうせ死ぬ奴に教える必要はあるまい」
「ほぅ?死ぬのはお前じゃないのか?」
速攻で返してやったら、案の定。
「ほざくが良い!
セッカの契約を解除するには、儂の中にある珠を返せば済む事だ」
してやったり!
だったら・・・こいつを先にアリシアが倒せれば?!
下僕たる灼炎王に命じようとしたんだ。
だが、一瞬遅かった。
俺が命じるより先に、雪華さんが攻撃して来たんだ。
「ウニャ?!辞めるニャ雪華にゃん!」
アリシアへと。
氷の塊を次々に取り出してぶつけて来る。
「アルジ!どうするニャ?防戦しても良いかニャぁッ?」
炎を纏っているアリシアには、氷をぶつけたくらいではダメージにはならないが。
「あの槍で斬りかかれたら・・・死んじゃうニャ~~~!」
雪華さんの手に在る薙刀。
あれで物理攻撃を受けたら・・・
「応戦しても良いかニャ~~~ッ?!」
このままほっておいたら、ニャン子は切り刻まれてしまう。
でも・・・も、何も無い!
「アリシアに命じる!応戦し雪華さんを取り押さえろ!
だが、決して手荒な真似は辞めるんだぞ、良いな!」
俺は爆焔波みたいな強力な術を放つなと命じといたんだ。
まかり間違って俺達も巻き込まれ兼ねないからな。
「ラニャ~ッ!」
了承したアリシアが、バスターソードで応じる構えを見せた。
二人の剣戟がいつまで続くのか分からない。
だったら、俺は何をすれば良いのか・・・
言わなくったって分かってるさ。
「萌には一指たりとも触れさせやしないぞ!」
俺の義妹に手を出させる訳にはイカンだろ?
俺は萌の間で手を拡げる。
棘を放つ構えの半魚人に、素手で立ちはだかるより方法が無かったんだ。
「ゆ、ゆー・・・じ?」
か細い声。
でも、なぜだか萌の声ではないような・・・
「助けて・・・ユージ」
呼ばれた名は俺を指しているけど。
どこかで誰かが違うと言ったような気がしたんだ。
俺の中で・・・誰かが応えた気がしたんだ・・・
遂に何かが動き始めたみたいです。
現れたドアクダーに因ってですけど。
萌=モエル?
それなら、ユージは?
だけどもニャン子なアリシアは灼炎王となって闘うしか残されていなかった・・・のかな?
次回 闘う少女 その2
現れたもう一人・・・それは一体誰?誰でしょ~ねぇ~?




