空を見上げていたらニャン子が降って来たんだが? その3
振って沸いたような異星人来襲?
いいえ、彼女は単にコスプレ偉人だった・・・訳じゃないか?
これからどうなんの・・・俺?!
取り敢えず・・・部屋に案内したんだ。
空から降って来たニャン子を。
何も俺は間違っちゃいないんだぜ?
見た儘を言ったら、少女は<猫>に違いなかったんだから。
「ど~ぞ、粗茶でも」
俺は日本人だから、訪れた客人に最低限の<おもてなし>を進呈したんだが。
「ニャ?この緑色の液体は?」
差し出した湯飲みを見下ろして、赤毛のケモ耳少女が訊ねて来る。
「緑茶だが・・・気に入らないのか?」
人の好意を無碍にする気じゃないだろうな?
俺と湯飲みを交互に観て、ケモ耳アリシアが何かを感じ取ったようで。
「飲み物ニャ?この液体は?」
本当にお茶を知らないのか、湯気を立てているお茶をしげしげと観てから。
「毒入りじゃぁないニャ?」
・・・何を言いやがる?
その前に毒なんて俺は持っちゃいないんだぜ?
ジッと俺はアリシアを睨んでやった。
勿論何も言わずに・・・だ。
「うにゅ・・・これが原住民のしきたりって奴なのニャ?」
原住民扱いかよ・・・俺って。
更に無言で睨んでやると、流石に判ったのか。
「でわ・・・」
煎れたてのお茶を・・・マジか?
「ぎょっくん・・・・・・・・」
一気飲みしやがった!
「ニャッははぁッ?!熱いニャ熱いニャ!猫舌が焼けたニャぁッ!」
阿保か。
急須で煎れたとはいえ、まだ湯気を立てている緑茶を・・・・一飲みにするとは。
(作者・注)
「ニャしてこんなッ!さてはお前!
アタシの舌を火傷させて倒そうと目論んだんニャ!」
あのなぁ・・・自分が勝手にアホな真似をしたんだろーが。
「きっとそうニャ!お前は敵の手先ニャ!」
飛び退くニャン子が、俺を指して啼く。
どこの世界にお茶でもてなす敵が居るんだよ。
フーフー逆毛を立てて威嚇するニャン子に、俺は肩を竦めて。
「まぁ、日本人じゃないみたいだし。
文化の違いって奴みたいだな、アリシア」
ニャン子に敵じゃないと分らせようと手の平を見せてやったんだ。
何も得物なんかを持っちゃいないと・・・
「文化ニャ?ニャ・・・ニャる程ニャ。
そうニャんだ・・・これが異文化交流とかいう奴なのニャ?」
まぁ・・・もうどうでもいいけど。
「そ。
アリシアが呑んだのが日本茶って奴。
熱湯で茶葉を煎じて点てる・・・古くからの文化でもあるんだ」
「ニャ?!そ~ニャのか。これは貴重な体験を与えられたニョか!」
驚きと感動の色が表情に現れる。
ニャン子アリシアは、猫目を見開いて火傷させられた湯飲みへ舞い戻ると。
「これは大変失礼おば!
アタシはこの星にやって参りました保安官補助手でアリシアと申しますニャ」
湯のみに対して自己紹介を始めやがった。
「古くから居られると聞いてお伺い致しマシュが。
どちらにこの星の保安官が居られますでしょ~か?」
は?!
「アタシはルーボック星の保安官補様より預かった手配書を渡さねばならないのですニャ」
はいいぃッ?!
「地球はなにぶん初めてニャので、どうか御教え頂けニャいでしょうか?」
ちたまじゃなくて地球・・・なんて言ってる場合じゃない。
ニャン子のコスプレが板についてると思ったら、地球外生命体でしたか。
「はぁぅうッ?!」
悶絶しちまったよ。
「嘘だろ?!アリシアは人間じゃなかったのかよ?」
それとも頭のバネが外れたコスプレイヤーだったのか?
「ニャ?大きく言えば人間ニャが?
正確に言えば、人科人目ニャン子属、ニャン子星の赤毛族。
保安官様からは紅ニャンって呼ばれているニャ!」
あ・・・紅ニャン?
それに保安官・・・って?
「そーニャ!自己紹介が途中だったニャ。
アタシはブルドック星の保安官、ミシェル様の元で働くアリシア。
ルーボック星に居られる保安官補、レミュウス様から御遣いを受けてチタマまで来たのニャ」
「はぁ・・・」
もうね・・・星の世界だよ・・・・
「このチタマにもドアクダーの手先がやって来るらしいニャ。
疑われる奴の手配書を手渡すのが御遣いの目的ニャ。
レミュウス様の助手であるアタシ、アリシア・紅の役目ニャ!」
つまりアリシアは保安官とか言う奴の補助の補助?
「もしかしてアリシアは下っ端?」
「言ってはニャらんのニャー!!」
逆毛を立てやがる・・・ニャン子。
「まぁ、それは良いとして、だ。
外宇宙生命体であるアリシアが、探しているのは保安官だろ?」
「そうニャ!この辺境に遣わされておられる保安官様を探してるニャ」
保安官って言う奴がどんな奴なのか。
「なぁアリシア。保安官ってどんな奴なんだよ。
まさか猫の親玉なんじゃないだろ~な?」
「失礼ニャぞ!畏れ多くも保安官様は・・・・」
ふむ。保安官様は?
「あニャ?どんなお方だったニャか?」
「・・・知らないのかよ」
俺が突っ込んでやったら、ニャン子が固まりやがった。
「ニャァああぁ~ッ!教えてもらうの忘れてたニャァ~っ?!」
「アホかぁ~~~~いッ!」
泡を喰うニャン子に、呆れ果てる。
見ず知らずの奴を、どうやって探すんだ?
「そ、そうニャ!もう一度帰って聞くニャ!」
何の為のお遣いなんだよ。
俺が密かに毒吐いていたら、アホニャンが叫びやがった。
「悲ニャああぁっ?!この辺境の星に来るタクシーなんてニャいのニャ?!」
腰に巻いた金色の円環をまさぐっていたアリシアの絶叫が。
・・・・って?タクシー??
「おまけに片道分のチケットしか貰ってニャかったのニャぁッ!」
・・・こりゃぁ・・・駄目ポ。
「じゃあさ、アリシア。
何かの方法で通信を交わせば良いんじゃね?」
「それ!無理」
何故に?
「チタマほど辺境な場所に公衆電話はニャいから。
銀河の果てにあるここになんて、超光速通信は届いてニャいからぁ~」
超光速かよ・・・
「行きは良い善い帰りが無いニャ!!」
どうするんだよ・・・アリシアは?
「こうなったら・・・自前で探すニャ!」
「アホか、相手も判らないのにどうやって探すんだよ?」
突っ込んでやったらニャン子が涙目になりやがった。
「損にゃ~ッ?!アタシはどうすりゃ帰れるニャ?」
・・・ふむ。
「辺境の惑星で独りぼっちニャ?」
・・・可哀想ではあるが。
「ニャン子星に残して来たお母さんやみんなに逢えなくなるニャ?!」
・・・哀れでもあるが。
「ついでに悪漢にでも襲われちゃうニャ~!」
・・・自業自得でしかないよな?
「もうこうなったら・・・原住民を抱き込んで」
・・・おいおいっ?!
「手当たり次第に探すのニャ~~~~~ッ!」
マジかよ?
俺はこのアリシアが、どことなく憎めなくなってきていたんだよなぁ。
阿保でドジっ子で・・・ニャンコな少女が。
「しょうがねぇなぁ、取り敢えずここにアジトを構えたらどうだい?」
つい、出来心で余計なことを言っちまった。
「ニャ?ホントにゃぁ?」
ぱあっとアリシアの顔が明るくなった。
「まぁ、袖触れ合うのも他生の縁って奴」
「ソデ・・・なんニャか、それ?」
キョトンとするアリシアを観て、俺は可笑しくなった。
「あはは・・・まぁ、気にしないで。ここに居たら良いんだよ」
惚けた娘だけど、本当に純粋で猫みたいな娘だと思ったよ。
出逢いは足蹴にされたけど、何だかアリシアと居れば面白そうだなって。
「俺は野良 有次。
漢字で書けば有るに次ぐって書くんだ」
アリシアが怪訝な顔で俺を観てから。
「ウニャ?翻訳機で示すニャ」
目の前に突然モニターを現したんだ。
地球外の文明だろうけど、俺はもう驚きはしないぜ。
現れたモニターに、指先で書いてやったんだ<野良 有次>って。
そしたらどうだ!
「「ノラー・・・アルジ・・・ニャンコ族と認識」」
おい!俺は猫じゃねえ!
「ニャンと!先祖はアタシと同じニャ?アルジ?」
「違う!俺の名はユージ!」
はっきりと誤解を解いておかないと、後でややこしくなる。
「ユージは・・・アルジ。
アルジのユージ?ニャか??」
変な呼び方をするんじゃない!俺はユージだってば。
「了解ニャ!アルジのユージ。今よりアルジか、若しくはユージと呼ぶニャ」
「ダアアアァッ?!どうしてユージだけにしておかない?!」
俺が何と言ったって聞き耳を立てちゃくれないよーな気がした。
「何か不都合でもあるニョか?アルジ」
確かにそう呼ぶ奴も居るだろうが・・・おかしいだろ?
こんな獣耳尻尾有りな少女から言われたら。
「それじゃあアルジ。これから宜しくニャ!」
微笑まれたよ、ケモ耳少女に。
俺はこの時知っておくべきだったんだ。
こんなケモ耳尻尾有りな少女が実在しているんだって。
てっきり夢の中だと思い込んでいた自分を。
「あり得ないだろ・・・こんなお伽話なんて」
って思い込んでいたんだ。
真面目な話で・・・だぜ?
なんだか訳の分からない子だね。
でも、良く観たら・・・
ニャン子と言うか、女の子だったんだな?
そう。
俺はそこに気がつけなかったんだ。
とある事故に遭遇するまでは・・・
次回・・・さば・ノーブ作品伝統のアレですW
画像はとあるお方に修正していただきました。
是非・・・ご覧下され!
次回 俺は早計だったのか?その1
ああ、俺の前に・・・天使がいる?!