これが機動少女の威力なのか? その2
現れた土安!
その手は鋏と化していた?!
ドアクダーを舐めていたら痛い目にあった!
そんな時は!
それまで隠れていたアリシアに、俺の声が届いた瞬間。
赤毛のケモ耳少女がフル装備で飛びだして来たんだ。
「アリシア?!その服は?」
そうだな、萌は観たことが無かったんだったよな。
「夜空から落っこちて来た時の服装だよ萌」
「え?聞いてないからッ!」
空から落ちてきたことは話したが、その時の服装までは訊かれても居ないから、俺もアリシアも。
心の中でだけで萌に話しかけたが、
「詳しい事はドアクダーをぶっ飛ばしてからにしてくれ!」
今は悠長に説明してる時じゃない。
俺がやる訳じゃないけど、ケモ耳少女はやる気満々らしいからね。
なぜ、そう言い切れるのかはアリシアの態度を観たら分かる。
「フゥーフゥー、ニャルルッ!」
完全に威嚇してやがる?
ケミ耳をやや逸らして、髪の毛を逆立てて・・・怒ってるのか?
「お前はニャぁーッ!アルジのユージに危害を加えたニャ!」
あ、観てたのかアリシア?
「一宿一飯の恩義のあるアルジのユージに、お前は怪我を負わせたニャ!」
髪を逆立て、土安のドアクダーを睨みつけている。
「それは銀河連邦原住民接触法に抵触しているニャぞ!
勿論傷害罪にも相当してるニャ!言い逃れは出来ない現行犯ニャぞ!」
銀河・・・連邦法だと?!そんな物が存在しているのか・・・は、良いとしてだな。
「アリシア、こいつをぶっ飛ばしてくれないか?」
俺の事はともかく、萌を脅かした罪で・・・だ。
「俺の怪我は良いとして、こいつは萌の身柄を誘拐しようと企てたんだぜ?」
そう言いやがったんだぜ、この悪党は。
「そうだったニャ!原住民の誘拐未遂は重罰に値するんニャァ!」
・・・おい、アリシア。ドアクダーの罪状をいちいち言ってたんじゃキリがないぜ?
「だったらアリシア、こいつをぶっ飛ばしてくれ」
「言われなくてもやってやるんだニャぁッ!」
びしっとアリシアがドアクダーを指差した。
ニャン子な少女としては精一杯の威嚇を孕む、濃緑色の瞳で見据えて。
「糞ッ!そっちも本性を表したか!」
土安だった異星人の犯罪者が鋏を俺からアリシアへと向け直しやがった。
どうやらやり合う気らしい・・・俺のアパートの中で?!
「一つだけ注文があるんだが、御両人」
気になった俺がニャン子とシザーハンズに注文を付ける。
「何にゃ?」
「どうかしたのか?」
気勢を折られた御両人が、俺が何を言うのかと振り向いたんだ。
「頼むから外でやってくれないかな?」
だってそうじゃないか、異星人がマジに闘ったら・・・
「部屋が滅茶苦茶になるのは嫌だ」
「・・・ニャるほど」
アリシアは即座に了承してくれたんだが。
「馬鹿か?こんなアパートなんかどうなろうと知った事ではない」
鋏お化けは拒否しやがる。
「損害賠償は誰に償って貰えるんだよ?」
もしも住む処を失ったら、どこに行けば善いんだ?
俺がドアクダーからの返答を訊く前に、萌の奴がポンと手を打ちやがるのを目の端で捉えた。
・・・嫌な予感がする・・・ものすっごく。
と。
「もしかして・・・此処が住めなくなったらゆー兄ぃは実家に戻らざるを得ないの?」
萌の奴が不謹慎極まりのない言葉を吐きやがった。
「そ、そうなるな・・・」
それしか手の打ちようがないんだが?
「そっかぁ~それなら・・・壊しちゃっても良いよアリシア」
「アホかぁ~いッ!」
思わず叫んじまった。
「ニャ?そうニャのかアルジのユージ?」
戦闘モードだったアリシアが反応して俺に訊いて来た。
そんなの萌の妄想だ、絶対認めんから。
「そうじゃない!良く考えてくれよアリシア。
此処に住めなくなったら俺もアリシアも秘密基地を失うんだぜ。
そうなったら保安官を探す拠点も無くなるんだぞ!」
言葉の限り否定に務めたよ。
「それは・・・困った事になるニャ」
だろ~?
「だったら部屋を壊さないでくれ、頼むよ!」
本当は実家になんて戻りたくないだけだけで、アリシアだって萌と同居させても良いんだが。
「アタシはゆー兄ぃが戻って来たら良いと思うんだけどな~」
拒否る俺に、萌が文句を付けやがるんだけど。
「良く考えろよ萌。実家に戻ってもアリシアは連れて行くからな絶対に」
「・・・・ちぇっ」
ぶぅタレル萌が、つまらなそうに口を尖らせるのはほっておく。
「そう言う事で、御両人は外で闘ってくれ」
「アルジのユージがそういうのニャら」
ニャン子は了解してくれたんだが、鋏お化けと言えば。
「外だろうが中だろうが関係ない。邪魔する気ならこの場で!」
・・・こいつ。人の話を聴けない子だったか。
鋏をカチンカチンと鳴らして、アリシアと対峙し続けやがる。
「そとでやれって言ってるんだよ、このシザーハンズ!」
悪人を説得するのが大変だと思い知らされたわ。
ま、聞き耳持たないから悪人なんだろうけど。
「アルジのユージが言ってるニャ、外に出るニャ」
おお、善い子だアリシア。
「どうしても出ないと言うのニャら・・・出て貰うニャ!」
おい・・・
ビシリとアリシアが言い切ったんだが・・・片手を秘密道具へと伸ばして。
「待て待て待て!人の話を蔑ろにするなぁッ!」
やはり・・・こうなるんだね?
どっちもどっちだったか・・・諦めよう。
「私の鋏からは逃れられんぞ!」
「鋏ニャんて・・・これで焼き切るニャ!」
ニャン子は取り出したモノをドアクダーへ突きつける。
・・・ああ、俺の部屋が・・・滅茶苦茶になるんだな。
アリシアが取り出したのはライトサーベル・・・の、モドキ。
あの薄緑色した発行体を現した・・・ライトサーベルみたいな奴。
あれで焼き切れるのかは分からないが、見た目だけで言うと。
「なにぃッ?!保安官補の助手がライトサーベルを持っているだと?」
完全に見間違うんだよなぁ。
ドアクダーも一目見ただけでは、本物と比較できなかったようだ。
「煩いニャ!アタシはこう見えても魔法士ニャンだからね」
「なんだとぉッ?!」
シザーハンズはこうして勘違いを増幅した・・・みたい。
確かにアリシアは魔法士と名乗ったんだけど、その実際のクラスは最下層。
見習いも見習い、駆け出しも駆け出し。新米の魔法士らしいんだが。
「そうニャ!切り刻んでやっても良いニャぞ?!
罪を認めて逮捕されるんニャッたら、そこ迄はしないと約束するニャ」
おお?!アリシアがはったりを噛ました!
「くっ?!なんて言う自己中な奴だ」
・・・シザーハンズに一票。
「自己中はお前等ニャ!犯罪者に異星人権はニャいニャら!」
・・・自己中同士の争いなのか?
御両人は得物を手にして言い争ってるんですが。
「一突きで丸焦げにしてあげるニャ?
こんな狭い部屋の中なら逃げ場はニャいぞ?!」
狭いは余計だろアリシア。
でも、言いたい事は分かるぜ。
俺が外に出てくれと頼んだからだろう?
「くぅッ!確かにそうだ・・・こんな汚い部屋ではどうにもならん」
汚いだと?!それは掃除してくれてる萌に失礼だぜ?
「ちょっとアンタ。
アタシが小汚いゆー兄ぃの部屋を掃除してるって言うのに。
汚いとは辛らつ極まるわよ、ドキタナイダー!」
・・・小汚いは言い過ぎだろ萌。
とか思ってる俺を置いてきぼりにして、アリシアと萌がドアクダーと睨みあいになってる。
いつから俺が蚊帳の外に?
「さっさと外に出るニャァ~~~ッ!」
「小汚い部屋なんでしょ、出て行きなさいよぉッ!」
・・・もうね、シザーハンズもたじたじ。
「う・・・ううッ?!言わせておけば・・・出て行ってやる」
後退るシザーハンズ。
初めから素直に言う事を聞いとけよな。
玄関から出たドアクダーは、アリシアのライトサーベルが本物と観えたのか、
それとも二人の娘っ子に圧倒されたのか。
踵を返して出たと思えば、一目散に逃げやがったんだ。
「待てぇ!」
萌が呼び止める・・・が、逃げる奴が停まる訳もない。
「逃がさないニャ」
アリシアがライトサーベルを持ったまま追いかけ・・・
「うぎゃッ?!消さんかアホ猫!」
その辺にあるモノを次々と焦がして行きやがった。
「萌ぇ~ッ!水を持ってこい」
「うひゃぁ~ッ?!火事だぁッ!」
玄関周りが燻ぶって小火状態。
走り出したドアクダーとアリシアを追う前に、消化しとかないと。
俺の部屋は2階だから、水を大量に撒く事も出来ない。
浸水して下の階へ迷惑をかけられないから、取り敢えず洗面器程の水をブチマケテおく。
「消えたぁ~」
萌の声でハッとした時には、シザーハンズはアパートの敷地から遠退いていた。
そして追いかけたアリシアはというと・・・
「げぇっ?!ニャン子が宙を飛んでる?」
驚いた萌の叫びで俺は分かったんだ。
「ああ、飛べるんだよアリシアって」
「マジ?マジで?魔法士って言ったの本当だったんだ?!」
驚愕する萌に、俺は訳知り顔で言ったもんだ。
「空から落ちて来たくらいなんだぜ?
空を飛ぶなんて当り前じゃないか・・・あははは・・・は?」
はぁッ?!飛べるんだっけ?
確かに飛べるとは言ってたんだが、高速移動は出来ないって言ってましたよね?
と・・・言う事は?
「待つニャ!逃げても無駄ニャ~!」
いつの間にか夜になってた敷地の端で。
逃げるドアクダーの背後から。
追い縋らず、空中に浮かんだニャン子がシザーハンズに叫んだんだ。
ライトサーベルを金色の円環へ仕舞い込んで空中浮揚するアリシアが。
「アタシの機動力には勝てっこないニャぞ!」
月をバックに赤毛のケモ耳尻尾有りなアリシアが。
・・・って。
機動力ぅ~?!
ニャン子が奔る!
アリシアはユージの叫びに呼応する・・・
遂に!
ニャン子が?!
アリシアが?!
そうなんだ~~~(棒)
次回 これが機動少女の威力なのか? その3
君はニャン子をかなぐり捨てるのか?もはやお馬鹿な少女じゃなくなるの?嫌だそんなの。




