ブラックバーニア・アタック その2
何かの気配を感じていた。
だから、感づかれないように見張っているんだ。
って・・・萌も気がつかなかったのかよ?
夏真っ盛り・・・朝から暑い。
暑いのですが、この子は普段通りの日課を続けています。
「ほらほらぁ~!起きてよねゆー兄」
父の書斎を自室に誂えたユージの部屋に、萌が現れて。
「起きないのなら・・・いつもの奴を喰らわせちゃうよ?」
ベットの上で布団に包まるユージへ?
「起きないね?じゃ~・・・」
まるで獲物をみつけた猫のように足を踏ん張って?
「起きるんじゃぁーッ!」
飛び上がりましたッ?!
ボスッ!
怒涛の飛び蹴りが布団に炸裂ぅッ?!
「はい、起きようね・・・って。あれ?」
普通・・・死んじゃいませんか?
死ななくても気絶するでしょう?
足元の布団を観た萌さんの眉間に?マークが。
「いつの間に?隠れ蓑の術を覚えたのかしら」
布団の中は空っぽ。
「違うッ!そうじゃなくて、どこに行ったのよぉ?」
既に起きていたのか?それとも身の危険を悟ったのか?
・・・って。萌さん、普通気が付くでしょ?
「まさか・・・アリシアとどこかにしけ込んだんじゃぁ?」
病んでますね相変わらず。
と、萌たんの思惑の人が現れたようです。
「萌た~ん、朝ごはんは未だかニャ?」
「ニャ?居た?」
振り返った萌たんは、寝ぼけ眼のアリシアを観て思うのです。
「こいつはゆー兄の単独犯ってこと?」
「ニャンと?!アルジが遂に犯罪を犯したニョか?逮捕ニャ~!」
ボケた二人が呆けっ子を炸裂させていますが、気にしないでおきましょう。
昨夜から感じるものがあった。
外からの視線と言うか殺気と言うか。
兎に角ただならぬ気配が襲って来ていたんだ。
「もう朝になったのに・・・襲ってくる気配はないな」
俺は奇襲を喰らうのを懼れて、寝ずの番をしていたんだ。
もしも俺の勘が当たっているのなら、奴等に違いないんだ。
「黒の3連鬼・・・どこから狙って来るんだ?」
萌を誘拐に来たのか、俺の剣を取りに来たのか?
「お~いアルジ、差し入れだぜ」
平日なら出勤しているシンバだけど、今日は休みの日らしい。
「お、サンキュー」
ボトルへ、煎れたての珈琲を注いで持って来てくれた。
「どうだ、変わりないかい?」
「観ての通りさ」
俺がじっと番をしてるんだからさ、何も無かった証だろ。
「じゃぁ、交代しよっか?」
シンバが頼みもしないのに交代を申し出てくれた。
「いいのか?折角の休みなんだろ?」
いつも朝早くから出勤していくシンバにとって、偶の休みは貴重な休息日の筈だ。
「休みだから代わってやれるんじゃないか。
アルジこそ寝ずの番なんだし、少しくらい休んでおけよな」
そう言ってくれるシンバの心に癒されるぜ。
「そうか、じゃぁ少しだけ横になる」
「あ・・・じゃぁここどうぞ」
俺が横になって休むと言ったら、シンバが自分の太腿をトントンと叩きやがったんだ。
「・・・え?」
「良いから。枕代わりに使えってば」
恥ずかし気もなく太腿を指差してくるシンバ。
「いやあの・・・恥ずかしくない?」
逆に俺が恥ずかしくなるぞ?
「なぜ?恥ずかしいなんて考えても無かったぜ?」
普段長ズボンを着用しているシンバの腿は、白く柔らかそうで・・・
「な?そんな瞼を閉じそうになってるんだから。
ボクの足で良かったら使えってばさ」
誘惑に負けそうになってる自分に、甘い声がかかるともう駄目だ。
「足が痺れそうになったら起こしてくれよ」
「ボクの身体は強靭なんだよ、痺れたりしないぜ」
シンバはそう言ってくれるけど、俺の頭の方が痺れちゃったぜ。
珈琲を呑んで喉の渇きが治まり、睡魔が俺に誘惑している。
「ほら・・・」
シンバが俺を押さえると、頭を太腿に載せるんだ。
しなやかで張りのあるシンバの太腿は、枕の中でも超一級品だと思える。
「おやすみ・・・アルジ」
ボクっ子で喧嘩口調のシンバに、こんな女の子らしい声が出せるなんて知らなかった。
何気ない仕草で俺を誘い、それでいて身体を癒そうとしてくれる。
ああ、そうだったっけ。
シンバは誰にも背負えない程の枷を受けてるんだ。
意図しない惨劇を起こした罪を心に背負い続けているんだ。
誰かを想い、誰かの辛さを自分が癒せるのならと思い続けてるんだ。
見た目とは全く違う。心優しい地の龍を宿す女の子なんだ。
シンバって娘は、いつまで枷を背負っていく気なんだろう?
微睡んでいたのはどれ位?
俺の意識が遠のいてからどれだけ時間が過ぎた?
「シンバだから・・・赦す」
萌はフンっと息を吐いて二人を観て言いました。
「何故ニャ?なぜシンバニャンだったら良いのかニャ?」
騒ぎ立てる事も無いのは何故なのかとアリシアが訊いたのです。
「シンバには、人を思いやる心があるからよ」
「ニャンと?それじゃぁアタシには無いと?」
アリシアがもし同じ事をやったのなら?
「アリシア、猫掴みされたい訳?」
問答無用でオシオキが待っていると?
「赦すニャ・・・」
怯えたアリシアが退散します。
シンバに膝枕されて眠るユージを、萌は微笑んで観て言いました。
「ユージ、夜の間中見張ってくれてたんだ。ありがとうね」
敵が襲ってきたら自分を的に闘うつもりだったのかと、少しだけ心配したのでしたが。
「ユージが居てくれるから。
アタシ達は安心して暮らしていられるんだね」
それはまるでどこかの警察官のよう。
いいえ、西部劇の保安官の様だと思えたのです。
「ユージが保安官になったら、地球も安全なんだろうね」
萌は未来を想って微笑むのでした。
「おい・・・どうするよ?」
身体を保護色シーツに包んでいる3人が相談していました。
「こんな昼間に事を起こせるか」
「でもよぉ・・・暑すぎないか?」
待ちぼうけの3人は、夏の暑さで汗みどろ。
おまけにシーツに包まれているのですから・・・
「何も呑まず食わずで10時間も待ってるんだぜぇ?」
「俺なんか、干上がって来ちまった」
「そうだよなぁ・・・いったん引き上げるか?」
黒の3連鬼と呼ばれるドアクダーも、夏の気温には勝てないみたいで。
「帰るだって?どこにだよ」
「もう俺達の抜け駆けはダレットにバレちまっただろうが?!」
帰る事も出来なくなったのですね?
「だったら・・・やるか?」
長兄ヌンが二人の弟分に訊き返します。
「やるしかねぇだろ?」
「手始めに巫女をとっ捕まえようぜ」
住宅の中に引き籠っているが、中に居るのは確実だと考えて・・・
「剣士には手を出すなよ?
先に剣士とぶつかったら、こっちも只では済まないんだからな」
「合点承知の助!」
イキナリ攻め入ろうとしたのです。
身を隠していたシーツをかなぐり捨てて・・・
シンバって娘。
本当は誰よりも優しいのかも。
出番が少ないのが勿体無いので、膝枕させてみましたW
役得はユージの特権かも。
そしてやってきたおっさん3人組。
かなぐり捨てて現れた結末や如何に?
萌は?ユージは?
仲間達は?
次回 ブラックバーニア・アタック その3
奴らの攻撃方法?なんだよ見えないじゃないか?




