誤解?もっかい?!地下一階!その3
もしかして?
学校にドアクダーがいるのか?
そんなご都合主義な話が・・・あるのかよ?
確かめるったって・・・どうすりゃ良いんだよ?」
ハイスピード過ぎる展開になっちまった。
萌が仲間に加わっただけだって言うのに。
「アタシが思うに。アリシアが異星人だって言えば良いんじゃない?」
何故に?
「もしも本当にダアクダーとか言う悪の組織員だったら、アリシアをほっとかないでしょ?」
それは考えたよ。
「正体を現すか、若しくは送り狼になるか。
どっちにしろほっておかないと思うんだよねぇ」
で?
「もしも悪の組織員が手を出して来たら・・・」
「出して来たら・・・どうすんだよ?」
即座にツッコミを噛ましてやる。
「その時は・・・白馬の王子が助けに来てくれると相場が決まってるもん!」
おいっ!
「ま、そん時はそん時。なるようになるでしょ?!」
おお~いっ!開き直ってどうすんだよ?
俺達は帰宅した経路をひた戻り、校舎脇にある地下室へと向かっていたんだ。
「でもニャァ、相手がどう出るかはやってみないと分らんのだニャ」
アリシアが考え込む素振りを見せるけど。
「待てよ、そもそも土安の奴がドアクダーって決まった訳じゃないだろ」
そうだよ、偶々名前がそう読めるだけなんだから。
「また引っ込み思案なゆー兄ぃが出た」
萌が髪を櫛て言いやがる。
「ゆー兄ぃの悪い処だよ、手を出さないで様子見に徹しちゃおうとするの」
そーなのか、俺って?
「優柔不断とは言えないけど、手を出しかねて考え込んでしまうの。
もうちょっとだけ勇気があればなって、想う時があるよ・・・」
顔を観ずに俺へと言う萌。
そこには何と無くだけど、普段の俺を観ている義理妹の感情が籠められている気がした。
「そーかよ、そーいう物なのかな?」
「そ~、もぅちょっとだけ・・・」
答えようとした萌の声が停まった。
後ろに控えたアリシアに訊かれたくなかったのだろうか。
学校でこれだけ話すことはなかった、昨日までは。
今日まで長い間、学校で接するのさえ無かった義理妹とは。
こんなに話したことは二人だけの時以外にはない。
萌が気を許す俺のアパートでしかなかったんだ。
義理兄妹になってしまう前ならともかく、今日までは一緒に居ることを避けていたから。
俺は前を行く萌の後ろ髪を観て、なぜ髪を切ったのかを思い出してしまった。
萌がボブカットにする前の俺達は、義理兄妹なんかじゃなかったんだ。
そう、俺が独りでアパート暮らしを始める前の話だったのだが。
「アルジのユージと萌たんには、海より深い訳がアリそうだニャ」
ニャン子に言われたくない。
「それに萌たんは、アタシを邪魔だと考えてるニャ」
そうなのか?
「アルジのユージにひっついてる虫だと思ってるニャ」
虫かよ・・・
ぼそぼそ俺だけに話しかけるアリシア。
「アタシの件が片付いたら、きっと仲良くするニャぞ?」
いや、アリシアには関係ないだろ?
「じゃないと、萌たんが悲しむニャ」
なぜ・・・首を突っ込みたがる?
「アリシアはアルジのユージに期待してるニャ」
だから・・・なにを?だ。
後ろに居る俺達がこそこそ話していると、気配を察知した萌が横目で睨んで来やがった。
マジで怖い顔をしてるんだよなぁ。
「ひそひそ話しないでよね、なんだか悪口を言われてるみたい」
自己中ですなぁ・・・
「違う。これからの話をしていただけだよ」
間違っちゃいないぜ?中身は別だが。
「そうニャ。アルジのユージに勇気を出すのニャと言ってたんニャ」
「なによ・・・それ?」
俺とアリシアにいなされた萌の眉が降りる。
俺達の前には件の扉が待っていたから、話はそこで打ち切りとした。
「先ずは土安の奴が居るのかどうかだよな」
「うん、中の様子を観てみるわ」
萌が扉の隙間から中を伺う。
地下一階にある理化学部に、顧問の土安が居る確率は?
「居るわ」
100パーかよ?!
「しかも部員は誰も居ない・・・って。理科学部に部員っていたっけ?」
「・・・俺も知らんな」
これはもしかして・・・本当なんじゃなかろうか?
マジで・・・ビンゴ?
だとしたら・・・アリシアに言わせる必要があるのか?
い、いや。
そんな馬鹿げたことが世の中にあるモンか。
これは何かの偶然が重なっただけの事ではなかろうか?
俺が尻込みしている間も、二人の娘っ子は中を覗いてぶつくさ言っている。
「あれニャ?あいつがドアクダーニャ?」
「そうそう!アイツ・・・観ての通り妖しい奴だよね」
決めつけんな!
「ふむ・・・でわ。今より敢行するニャ」
「がんばってねー(棒)」
棒読みだよ萌・・・
あっけに取られている俺を置いて、アリシアが颯爽と(?)部室のドアをこじ開けたんだ。
「そこなるドアクター!アタシに見覚えがあるニャ!」
・・・単刀直入過ぎんだろアリシアさん。
「あ、君は確か・・・」
声の主に振り返った土安は、いきなりの珍客に動じて。
「野良君の従妹・・・だったかな」
覚えていたのか・・・ならば話が早いな。
俺と萌は対峙する二人に注目したんだ。
「違うニャ!アタシはこういう者ニャ」
何処から出して来たのか、アリシアの左手には見慣れない手帳が。
「ほぅ?手帳屋さんでしたか」
・・・・・・・・W
「違うニャー!このワッペンを観るんニャァ!」
手帳らしきものには星型の金色ワッペンが着いている。
「星形の中に猫?それが何か?」
そーなんだ?俺にも分らないんだけど、説明プリーズ。
「ウニャぁ~!しらばっくれるのニャ。
ニャン子星の保安部マークニャがぁ!」
「はははっ、冗談の好きな子だねぇ」
・・・相手にされてないぞ・・・アリシア。
「きぃ~っ!惚けても無駄ニャ。
お前はドアクダーと呼ばれているニャはバレているニャぞ!」
「ははははっ!徒名でしょ、知ってますが・・・なにか?」
・・・むむっ?!これは間違いだったのか?
でも、傍で訊いていたら何かが引っ掛かるんだが。
「ゆ~兄ぃ、やっぱりアイツは怪しいよ。
アリシアが冗談を言っていると分かっているのなら、もっと邪険にあつかうよ」
そうか!どうも何かが引っ掛かっていたと思ったら、奴は初めからアリシアを異星人だと見抜いていたんだな。
「見破っていて、敢えて知らぬ顔を貫き通す。それが意味するのは?」
俺が口走ったのを萌が受けて、
「多分、誤魔化し通した後で、仲間とコンタクトを執ろうとするんでしょ?」
正解。
奴独りだけではない筈なんだ、秘密結社なんだから。
異星人の少女が何者かを探っていやがった。
つまりこうなる事は承知の上。
相手が少女だけに何が目的なのか、奴の方が待ち構えていやがったんだ。
「これはうっかり手を出しちゃったかなぁ、ユー兄ぃ」
こうなるなんて考えてなかっただろ萌。
「まぁ・・・なるようになるしかないさ」
「・・・だ、ねぇ」
他人事みたいに言ってしまったよ。
当のアリシアには聞こえてないだろうから。
「君ってニャン子星から来たんだ?何か証拠になる物はないかい」
先手を打って来たのは土安のほう。
「よ~し、見せてやるニャ!」
よせばいいのにアリシアは・・・帽子を取り去る。
「観よ!アタシにはこの通り・・・ニャンコ耳があるニャ!」
ピョコンと撥ねるケモ耳を突き出すアリシア。
「ほほぅ・・・これは素晴らしい。コスプレも此処まで進化したのか」
ボケるのもいい加減にしたら?
突っ込みたくなるのを我慢して、萌に目配せを送る。
もういいぜって。アイツの正体が知れたから。
でも、独り盛り上がるニャンコは・・・
「どうニャ!これを観ても言い逃れをする気ニャ~」
「はははっ、コスプレイヤーがどう関係しているのかね」
しらばっくれやがるなぁ。現実逃避してるようには見えないが。
「こうなったら・・・無理でも吐かせるニャ!」
「だから・・・なにを?」
あ・・・これはいかん。
「うにゃ~ッ!逮捕ニャぁッ!」
ブちぎれたアリシアがニャンコ吠えした所で。
「あ~、こんな所に居たんだ(棒)」
萌に連れ出させる為に目配せしてあったんだ。
棒読みの萌が部室に入ると。
「土安センセ、どうもです~」
アリシアの口を塞ぐや否や。
「連れ帰ります~」
問答無用で引き摺りだして来た。
「ニャぜニャぁッ?!捕まえるニャ~ッ!」
ひょいッ
俺はアリシアの後ろ首根っこを摘みあげる。
ぷらぁ~~~~~ん
「にゃ・・・・」
暴れていたアリシアをニャンコ掴みにしら、ニャン子は固まった。
「帰るぞ!」
「ん、だねぇ~」
「にゃぁあああ~~~~」
一言制してから、萌を伴ってまた帰宅の途に就いたんだ。
ブランと垂れ下がるアリシアを摘まんだままで。
この状況を整理しながら、俺は考えて歩く。
「先ずは、どうするのか・・・だ」
次なる手をどうするかの、作戦会議を開く為に帰るからさ。
奴がもし、仲間に連絡を執ったら?
「下手をしたら攻め込まれるかもな」
確かにそれは否定できない。
でも・・・と、考えていたら。
「ニャン子掴みは辞めるニャ~~~ッ!」
摘まんだ俺に吠えてるんだがニャン子が。
「せめて猫ダッコにするニャ~~~!!」
うむ・・・無視するわッ!
まさか・・・猫掴みされるとはにゃぁ~~~~~~
猫って首の後ろを摘まれて持ち上げられたら、動きを停めちゃいますよね?
それが・・・猫掴み!
なんの話やねん。
撤収したユージ達は、お腹が減っていたんです。
何も食べていませんでしたから。
アリシア「にゃ?アタシも食べていいニョか?」
なんだか一騒動起きそうですが?
次回 それ美味しいの?その1
ああ、何故に日本の文化は豊かなのニャ?知らなかったらこうなるニャぞ?
 




