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白昼夢

作者: 皿日八目

 ここ日本のある町に、一軒の家が建っていた。

 壁も屋根も汚れているし、見てくれはかなり悪い。しかしここに住んでいる夫婦にとってはやっと購入したマイホーム。ご近所にあるどの家よりも素晴らしく思えるのだった。


 そんな家での五日前。夕食を終えた後のこと、唐突に男が語りだす。


「なあ、あの、あのさ、そろそろ、ぼくたち……」


 言葉を濁す男に女、答えて曰く。


「ええ、あの、そうね、うん、そろそろ、わたしたち……」


 なんのことはない。子作りの相談である。


 で、実行されたのはその日。


 産まれたのが今朝。


「え! もう!」夫婦ふたり声を合わせてびっくり仰天。


 寝室を這うはだかの赤子。男の子。これが夫婦の子でなくてなんであろう。しかしふたりは疑った。

 

 寝ているうちに勝手に産まれた? そもそもなんの兆候もなし。ならばこの子は他人の子。きっと迷い込んできたのでしょう、と。


 すぐさま交番へ駆け込んだふたり。女の手にはあの赤子。もちろん服は着せてあったさ。


「この子だれの子、わたしの子じゃない、だってわたしたちのそれ……」五日前、なんて、さすがに恥ずかしくて言えなかったようす。とにかくふたりは捜査を依頼。なにを? この赤子の真の親を、である。


「ふーむ。朝起きたら寝室にね……ちょっと信じられない話ではありますが。ま、一応調べてみましょう。それまではお宅で預かっていただいても?」いぶかしげな顔の巡査。来週退職ってときに、こんな依頼が舞い込んでくるとは……。内心そう思っていたんだと。


 帰宅して夫婦は困り顔。きゃっきゃと無邪気に声を上げ、楽しげに這うこの赤子。五日で子どもが産まれるなんてあり得ない。やっぱり他の親がいる……そうは思っていたけれど、やっぱり赤子は可愛いもの。代わりばんこにべろべろばあ。きゃっきゃっと笑うこの赤子。次第に愛着が湧いてきた。

 

 翌朝。


 寝室で腰を抜かす夫婦ふたり。ま、それも無理のないこと。


 なにせベビーベッドに寝ていたはずの赤子、あの小さな天使、それがまったく姿を消した。で、その代わりにいたのは……



 老人の死体。



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