2018年 あとがき
※2018年にあとがきを書きます。
結局、マルチ商法に手を出さなかったヒトシですが、その後、2014年頃に再会しました。
ある日、母親から私に電話がかかってきて「高校時代に友達だったっていうヒトシくんって名前の子からアンタあてに電話がかかってきたんだけど」と言われ、実家にヒトシからの電話があった事を知りました。
オレオレ詐欺かと思ったのですが、『ヒトシ』という名前と出身校が一致していました。
そして、どうやら伝言があるとの事で、ヒトシは母親に自分に電話をしてくれるよう携帯電話番号を伝えたて頼んだらしいです。
私は、数年ぶりにヒトシに電話をしてみました。
ある日、私が実家付近を歩いていたら、その様子を何処からか通りがかったヒトシが見ていたらしいです。
(何故、私の実家付近を彼が通りかかったのかは不明ですが)
当時、ヒトシから見て私は「元気がない状態」「良くない状態」に見えたらしいです(抽象的な物言いだったのでよく理解できませんでしたが)。
その時、他の人と一緒だったからなのか、ヒトシからは声をかけられなかったのですが、私が元気なさそうで心配だったらしく、連絡をくれたらしいです。
そして、久しぶりに会おうと誘われました。
あの事件からずいぶんと年月が経過していたため、恐怖心は薄れていました。
なので会ってみる事にしました。
どこに食べに行こうかという話になったら、名古屋駅まで行こうと言われました。
じゃあ電車で行くのかと思ったら、徒歩で行こうと言います!
彼は電車に乗ると気分が悪くなってしまうらしいです(パニック障害?)。
だから僕の住んでいるアパートの近くの最寄り駅まで歩いて来たらしいです。
とんでもない距離なのに驚きです!
仕方がないので、名古屋駅まで歩いて会話しながら向かいました。
私とヒトシは、名古屋駅周辺の居酒屋で会食しました。
約10年ぶりに会ったヒトシは、全然変わってなかったです……外見は。
でも、性格がかなり変わっていました。
彼は少しおかしかったです。
今は何の職業をしているのか聞いてみたら、企業を起こして儲けて、今はやめたらしいが、それが本当なのか分からない。
インターネットで広告収入を得る方法を勉強したとかなんとか言っていたような……
途中から支離滅裂な話になってきたので頭に入ってこなかったです。
ヒトシは未だにガラパゴス携帯を使っていました。
ネット関係に強いはずなら、スマートフォンくらい持っていてもおかしくないのに。
他にも熱くヒトシは語っていました。
サバサバして、明るくて、ひょうきん者だった彼が、妙に哲学的な事ばかり口にしたり、「日本の政府は腐っている」「ドイツを見習うべきだ」「人間は本当は悪魔ばかり」だとか「日本はくだらない人間ばかりだ」とか「悪いやつは首を切断してさらし首にすればいい」とか「風水的にではなく地下は行かないほうがいい。地下には幽霊がいる」とかなんとか……などど学生時代とは打って変わってキャラクターが豹変していました。
(学生時代のヒトシは政治に全く無関心な少年で、おバカなキャラクターでした)
ちょっと普通の精神状態じゃないと思ったので、精神科か何かに通院したほうがいいんじゃないかと言ったら、実は昔は通っていたらしいです。
しかし、医者を信用できなくなって通院するのをやめてしまったらしいです。
心は肉体を鍛えれば改善されると彼は言う。
彼は筋肉モリモリになっていました。
毎日筋トレしているらしい。
私が「それは須藤元気か何かに洗脳されちゃった系?」って言ったら「いや、違う」と彼は言う。
そして「これは俺が気づいちゃった事なんだけれどね、誰にも言わないでほしいんだけど、あきおだけに教えてやる。腕のあたりは冷たくしてもかまわない。だけど、デコルテから胴体のあたりは温めたら精神が鍛えられるから。精神病も治るから」と言っていた。
う~ん……この俺だけが気づいちゃった系発言は統合失調症だろ、と思いました……。
ヒトシはガラケーだったので、LINEで連絡先の交換などはできず、メールアドレスと携帯電話番号を交換しました。
彼は日本に嫌気がさして、その時、「一ヶ月後くらいにはドイツに渡独する」と、まさかの発言!
(だからドイツに行く前に会いたかったらしいです)
そこで就労ビザを取得して永住するつもりだとか何とか言っていました。
学生時代から嘘をついて人を驚かせるタイプのキャラクターだったため、私はヒトシが絶対に嘘をついていると思っていました。
「じゃあ試しにドイツ語喋ってみてよ」
と言ったら、単語だけでなく、ちゃんと文法も繋げて喋れていました。
ビックリしました!
学生時代、万年成績下位で(ビリになるくらい)、英語も喋れず、あの自他共に認める成績の悪かったヒトシが、まさかのドイツ語を流暢に話すのです!
話によると、ドイツ語の教室には通わず、本などを読んで独学で勉強したらしいです。
結局、彼が働いている間に行けずじまいだった近所の洋食店。
話を聞いてみたら本当に働いていたそうですが、そんなに長くは務めておらず、とっくの昔に店を辞めていたそうです。
(じゃあ尚更、どうして私の実家の近くを通りかかったのか謎ですが)
店主の奥さんの悪口ばかり言っていました(笑)
ヒトシはあれから紆余曲折、色々あったそうで、23歳頃に父親とは死別、さらに住まわせてもらってお世話になっていた伯母とも死別し、天涯孤独になったそうです。
生き別れた母親はまだ生きていて、父親が病気で倒れた時に手紙を出したそうな。
それがきっかけで父親と離婚した実の母親と再会を果たし、一時期は頻繁に会ったり泊まったりしていたそうです。
ヒトシの姉は小さい頃に父親から虐待を受けていて、それが原因で両親は離婚したらしい。
父親はヒトシを引き取り、母親はヒトシの姉を引き取ったらしいです。
が、血を分けた実の姉が『ヒトシに母親を奪われる』と思って、姉との関係が険悪になったらしいです(姉はリストカットをするなど、精神病を患っていたそうです。過去の虐待にトラウマを抱えていて、ヒトシと母親が仲良くなるのが嫌だったらしい)。
ある日、ヒトシは姉に「もう二度と会いに来てほしくない!!」と激怒されたらしいです。
母親のもとから自分がいなくなれば丸く収まる、との結論になり、号泣の中、母親と抱きしめ合って、ヒトシは母親の元を去ったらしいです。
波乱万丈の人生。
それで一時期病んでしまったらしい。
しかし、精神科に通院するのをやめて、肉体を鍛え、自分で乗り越えたとの事。
だからヒトシは変な事ばかり言っていました。
「筋肉を鍛えると健全な精神が宿る」とか「魂」とか「太陽」がどうとかこうとか。
20代前半の頃、同級生みんながヒトシと連絡を取れなかった事があった。
ちょうどその頃らしいです、精神的に病んでいたのは。
折りたたみの携帯電話を折ったらしい。
それで誰も連絡が取れなくなったのでした。
そんなヒトシが、何故、僕と会おうと思ったのか不思議だった。
ヒトシいわく、私が病んでいる状態に見えたらしい。
だから精神病を乗り越えた自分のように、私にも体を鍛える事を奨めたかったらしい??
途中から話がよく分からなかったので、意味不明ですが……。
とにかくヒトシの言う事は支離滅裂でした。
別れ際に、私は、自分がゲイであるとヒトシに初めてカミングアウトしました。
もうドイツに行ってしまうのだから……と思って。
そしたら「そんなのとっくの昔から知ってて今更だっつーの!」と笑われてしまいました(笑)
ずっと知ってたらしいです。
ヒトシはクラスメイトの中でも、しょっちゅう私の実家に遊びに来ていました。
彼は勝手に人のクローゼットの中を漁るような性格だったので(そういうヤツでした)、その時にゲイもののアダルトビデオやゲイ雑誌を発見していて、ずっと知っていたらしいです(笑)
ちなみ、ヒトシはノンケ(異性愛者)です。
後日、ヒトシからの画像付きのメールには、大きな幾何学的な模様の太陽の画像と、理解するのに困難なメッセージが送られてきました。
あれから連絡を取っていないので、今現在、ヒトシが本当にドイツに渡ったのか、それとも、まだ日本に居るのか、それは分かりません。
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今でも付き合いのある女友達のクミ。
この作品を書いている当時、クミはマルチ商法にハマっている彼氏と付き合っていました。
しかし、私が本作を最後まで書き上げて、この作品を読んでもらった数カ月後、クミはその当時の彼氏とは別れました。
クミから振ったそうです。
クミは、情の深いさそり座の女性です。
本作の効果があったんじゃないか、私の心の痛みを少しでも理解してくれたんじゃないか、と思ったり……。
とにかく、変な輩と縁が切れて良かったです。
彼女は今現在、別の男性と結婚し、今は一児の母になりました。
めでたし、めでたし。




