2.ヴァリュクール家
ドナドナの歌を頭に思い描きながら、よくもわからず僕は連れていかれる、、、
姉妹と向かい合う形で馬車に揺られながら、ヴァリュクール家へ連行されていく、、、。
「でさー、、、アレフがさ~、、、いやん♡」
道中では、姉の方のアヤカ(どっちかというと妖?筋骨隆々、頭の中身は脳筋の模様、、、汗もうアヤカシさんでいいか!笑)さんが、ひたすら勇者様とやらの立身出世の話ばかりしてくる、、、(誰得だよ、、、汗)
んで、一方の妹さんはと言うと、、、
「きゃっ!!ごめんなさい、、、」
妹さんの方に向くと必ず目が合い、合うたびにこれだよ、、、汗
そんなに僕の顔が面白いのか、、、?
こんなやりとりをしばらく続けたところで、馬車が止まる。どうやら着いたようだ。
馬車の扉が開き、外を見まわすと、、、で、でかい!!
なんだ、この豪邸は!!
僕の予想をはるかに上回る邸宅がそこにはあった。
「ユート様、お疲れさまでした」
執事らしく、バトラさんが僕を誘導して馬車から降ろすと、アヤカシさんが、
「ユート、さっさと行くよ!お父様とお母様にお礼を言ってもらわなきゃだからね!」
っと、グーパンを差し出してくる。
若干あきれつつ、姉に導かれながら屋敷の中に入っていった。
・・・・・・・・・・・・・なんじゃこら、、、汗
玄関をくぐると、いわゆる西洋のお城のような雰囲気があたりを包む、、、こんなとこ入ったことねぇよ、、、汗
雰囲気に飲み込まれて挙動不審になりながらも、姉に導かれて廊下を歩く、、、歩く、、、たまに階段をあがる、、、歩く、、、遠いなおい!
で、廊下を歩いてると、大きな姿見が見えた、、、で、、、そこに写る自分の、、、姿??
「えぇっ!?」
って、どうみても20歳前の若造じゃあないか!!
誰だこれ!!
僕!?
挙動不審に身をよじらせていると、妹が顔を覗き込んでくる。
「ユート様、どうかなさいましたか?お身体でも?」
いやいやいや、心臓に悪いからね!!
違う意味でドキドキしながら、なんでもなく、慣れないために緊張している旨を伝えると、妹の方は納得してくれたようだ、、、汗
その様子を見ながら、姉はカラカラ笑いながら先導している。
「着いたよ!お父様入ります」
ある扉の前に来ると、姉は立ち止まってノックをし、許可を待って扉を開けた。
どうやら執務室のようだ、、、
「お帰りアヤカ、サラ。で、その者は?」
執務室の長たる威厳を携えた男は、姉妹に向かって問い合わせる。
「帰宅の道中、野盗に襲われた私たちを救ってくれたユートよ。お礼したくて連れてきたわ」
「ミツキ=ユウトと申します。旅の道中でご子女が襲われているのを見かけまして、、、お礼と言われましても、人として当然のことをしたまでですので、お構いされませぬようお願いいたします。」
この人の眼光、怖いな~、怖いな~、、、って稲川淳二ばりに内心おびえながら、一刻も早くこの場から立ち去るべく頭を働かせる。
貧乏暇なし人に、この雰囲気は許容できませぬ!!
「そうか、それは大儀であった。構うなと言われて、はいそうですかと帰してしまえば、ヴァリュクール家の名が廃る。ユート殿はこれからご予定でも?」
「いえ、当てもない旅人ですので、特には、、、」
この眼光に睨み付けられたら、こうなりますよね、、、汗
「なら、しばらく我が家に滞在してはくれませぬか。恩人に報いないことは貴族の名折れともなる。また、滞在していただける間に礼を考えたい!」
「は、はぁ、、、」
これ何!!この雰囲気の中何日も過ごすの!!
僕、もう、おうち帰りたい、、、(;´Д`)
その後、執務があるとのことで執務室を辞した僕と姉妹、、、姉は、颯爽とどっかへ行ってしまったよ、、、。
「えっと、僕はどうしたら良いのかな?」
サラさんに尋ねるけど、真っ赤な顔して俯いたまんま固まってる、、、汗
「、、、、、、、、、、え、えと、、、、今日はお部屋お配しますので、ひとまずそちらでお休みください、、、、」
そこまで言うと、歩き出して行った、、、あれ?振り向いた?
これは、僕について来いってことかな?
とりあえず、サラさんについて行く、、、しかし、会話が無い、、、。
そりゃぁね、僕も女の子に免疫は無いよ?
学生、院生、その後も毎日毎日大学に缶詰で、遊ぶ余裕も無かったし、教員でもないのに学生の面倒は見させられるわ、学会で忙しいのに、先生の出張に付き合わされるわで、自分の時間なんて取れたもんじゃなかったし、、、
ただ、この空気感はなんとも息苦しいのよ、、、もう少し緊張をほぐしてほしいなぁ、、、
「あ、サラさんって趣味とかあるの?」
「えっ?わ、私は、そ、その、、、お料理とかお裁縫とか、、、//」
「へぇ~、お料理するんだ!貴族のお嬢様ってそういうのとは無縁かと思ってたよ」
「いえ、うちは近世一代の名誉子爵なので、お父様の後には続かないのです。だから、貴族の方に嫁ぐとかじゃないと、、、、」
「そうなんだね、、、悪い事聞いちゃったかな、、、汗」
「い、いえ、そんなことは、、、」
あらら、、、また俯いちゃったよ、、、。
「そ、それじゃ得意料理とかは?」
「え?えっと、得意ってほどじゃないんですけど、ミエッキのワイン蒸しとかはおいしいって言われます。あと料理じゃないけどお茶を入れるのが好きで、、、//」
「へ~、ミエッキって何?」
「ミエッキって言うのは、この辺りで取れるお魚で、小ぶりですけど淡泊でおいしいのです。」
「そうなんだ。それにお茶を入れるのが好きなんだね!」
「そうなんです。使用人の皆様もおいしいって言ってくれるのですが、メイドさん達からは、仕事を取るなと怒られてしまうんです、、、」
ふむ、どうにも貴族令嬢らしからぬ趣味をお持ちのようで、どうやらメイドさん達からは困られているようだ。(笑)
と、サラさんの趣味を聞いたら、すっかり話しやすくなったみたいで、気が付いたらゲストルームに到着したようだ。
「こ、こちらがユート様のお部屋となります。なにかありましたら、使用人に言っていただけましたら対応させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。」
と言うと、踵を返して立ち去ろうとしていた。
「あ、サラさん!迷惑ついでに先ほど言ってたお茶をいただいてみたいんだけど、、、良いかな?」
「あ、お飲み物でしたら、メイドに持ってくるように申し付けますよ?」
きょとんと首をかしげるところが、またなんとも可愛い。(/ω\)
「いや、サラさんのお手並みを拝見したいんだけど、、、やっぱり迷惑?」
貴族令嬢だし、やっぱ無理か~!!と思いお願いしてみた、、、
「わっ!私のですか!!い、いえ、迷惑とかじゃないのですけれど、、、一応メイドさん達のお仕事なので、、、」
「僕はさっきのお話を聞いて、是非サラさんのお茶を飲んでみたいなと思ったんだけど」
「そ、そうですか、、、ゲスト様のお願いとあらば聞かない訳にはいきませんね!じゃ、早速準備してお持ち致します!」
そう言うと、サラさんはスキップしそうな勢いでどっかに行ってしまった。
多分、厨房かな?
僕は、ゲストルームに入り、ベッドに倒れた、、、疲れた~!
ってか、なんだ今のこの状況は、、、。
とりあえず、ヴァリュクール家で少しお世話になれるのは良かったけれど、、、お金も無いしな~、、、この先どうしよう、、、
宛もなく悩んでいると、ノックが聞こえた。
「どうぞ~!」
言いながら身体を起こす。
「失礼します」
入ってきたのはサラさんだよ!喜
「じ、じゃぁお茶をお入れしますね、、、//」
そう言うと、近くにあったテーブルに持ってきたティーセットを置き、お茶を入れる準備をし始めた。
いい匂い、、、これは確かにおいしそうだ。
しばらくサラさんがお茶を入れる様子をボケーっと眺めていると、不意に目が合いサラさんの顔が真っ赤になる。
「ユートさん、そんなに見ないでください、、、恥ずかしい、、、です。」
「あ、ごめん、ごめん!ついつい絵になるな~っと思って、、、」
「そ、そんなことないです。私はこんな貧弱な身体で、体力もありませんし、、、魔法は少し使えますけど、、、戦闘なんてもってのほかだし、、、顔も、、、」
そこまで言うとサラさんは気落ちした感じで下を向いた、、、って今なんと!?
この世界は魔法が使えるのか!?Σ(・□・;)
「え!?魔法!?」
「あ、はい。お母様が結婚される前は神官をしておりまして、帰依神であるアクアの司る水魔法が使えるのです。そこで幼い頃から体力の無かった私も護身用にと母が教えてくれました。」
「そうなんだ、また魔法の事教えてもらっていいかな?それに、僕の祖国では、サラさんは美人にはいるからね!自信を持って!笑」
ぷしゅ~、、、どっかから気が抜けるような音がしたと思ったら、サラさんの顔が真っ赤に染まり、そのまま機能停止、、、お~い!汗
しばらくして、はっと気が付いたサラさんは、お茶の準備を続ける、、、。
「ど、どうぞ、、、」
そっと差し出されたティーカップを見ると琥珀色の液体が揺れている。
紅茶みたいだな、、、
口に含んでみるとまさに紅茶の味がする、、、ってか今まで紅茶って聞いて飲んでたものが本当かどうか疑うレベルでうまい!!!
「お、、、おいしい、、、汗」
「ほ、本当ですか!?」
満面の笑みで僕の方を見るサラさん。
少し緊張がほぐれたようで、二人で紅茶を飲みながらしばし会話を楽しんでいた、、、。