僕が死んだら、今まで一番美しかった件について
僕はとっくに定年を迎えた両親とともに暮らしていた。
しかし幸せなものではなかった。
僕は引きこもりだった。
中学の時いじめがきっかけで、僕は逃げるように部屋に閉じこもった。
いじめられた原因というのも、実にしょうもないものであり、「目がゾンビみたい」ということだった。
しかしながらいじめの内容は君たちの想像を絶するようなものばかりだ。
【ゾンビ狩り】と名付けられたそのいじめは君たちの想像を絶するものばかりだ。
殴る蹴るは当たり前で、恐喝・脅し・無視などがあった。
教師からもいじめられていた。僕の存在は完全に腫れ物を触れるようであり、はじめこそ形だけの対応をしてくれていたが、いじめの主犯が権力者の子であることがわかると、すぐにその対応をやめ、代わりにこのいじめの原因がまるで僕であるかのように集会で話し始めたのだ。
正義という大義名分を得た、中学生は僕を【正義】の名の下に【罰】を執行しはじめた。
その先のことは、あまり覚えていない。
ただ両親からは、学校に行かないということは一度も許してもえなかったことと、永遠に続く地獄だけは覚えていた。
卒業するころには、僕の見た目はいじめの影響で見た目がゾンビそのものであった。
あまり醜さに自分でも吐き気がしたのを覚えている。
もうなにも見たくない…そういった気持ちからか、僕は家に引きこもり始めた。
毎日母の怒鳴り声が聞こえてきたが、母に僕の心の痛みを理解してくれるはずがない。
ふと過去にいじめたやつらのことが気になり、ネットで検索してみると一人は教師、もう一人は警察官、もう一人は子供二人に恵まれているらしいことがわかった。
なにも感じなかった。よくネット書かれている復讐劇のようなものは、やろうとも思わなかった。
あれだけのいじめを受けたはずなのに、何故?
答えはすぐにわかった。僕の心が死んでいるのだ。
今思い出せば、いじめてきた連中の顔はとても生き生きとしたもだった。対して僕の顔は、死んでいた、まるでゾンビのように。
妙に焦げ臭いかった。魚を焼いてるにしては、においが強かった。
もしかしたら火事か?
そんなこと考える暇もなく、耳を貫くようなおおきなサイレンがなった。火事だ。
生存本能、僕はなにもかもを捨てて生きようと思った。
鳴り響くサイレンに、煙たさに異常な暑さそして火に囲まれた。
僕は今までにないぐらい必死に生きようとしていた。
鼻水をたらし、涙をたらし、今まで人生を否定するように
生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい
その刹那、大きな爆発とともに床崩れ落ちた。
僕の、足元に大きな穴が開き僕はそこに真っ逆さまに落ちる。鋭利に尖ったコンクリートの破片が、僕の足に大量に突き刺さる。
動けない…僕は死を覚悟した。
死んだらどこに行き何者になるのだろう?
天国か?地獄か?それとも異世界か?せいぜいこの三択だ。
じゃあ死んだら何者になるのだろう。
死者を表現する言葉は無限にあるだろう。
ゾンビ・天使・仏か、それとも…
でも僕には関係ないことである。
この暗く狭い部屋でも死はうんと未来に存在し、その歩む道は全て絶望であるということには頭の悪い僕も深く深く理解していた。
かと言って死にたいわけではない。生きたいわけでもない。そんな矛盾のようなものを抱えて生きてきたのだ。
でも最後に鏡が映した姿は、今までのどんな時よりも必死な顔であった。
醜く汚くところどころ焼きただれていたが、僕の目は生きたいと叫び続けた。
頭ではもう死ぬと分かっていても心は生きたがっていた。
その姿に涙が止まらなかった。
なんでもっとこんな必死になれなかったんだろう。
なんで泥だらけになろうとしなかったのだろう。
なんであのいじめに立ち向かって行こうとしなかったのだろう。
後悔が止まらなかった。
もし来世…来世というものがという本当に存在するといういうのなら、僕はもっともっと、この醜くみっともない美しい顔ができる。
そんな来世が来れば、僕は最後のひと時まで、涙が止まらなかった。