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レメゲトン  作者: ズラ丸
第一話
4/28

【旅は道連れ】


「さーてと、どこでご飯にしようかな」


「やっぱり早めに抜け出しやがったな、このペテン師」


「げっ、アディルパイセン……」


 イースト支部から出ると、サイドカー付きオートバイに跨るアディルの姿を見つける。いや、逆か。見つけられた。


「なんのことでせうか? オリエンス管理官が体調を崩されて早めに終わっただけですよ?」


「んじゃ、今から確認してこようか?」


「やめて!」


 思わず叫んでしまう僕。そんなことをしたら、さらに一時間講習を受けるだけに留まらず、謀ったとして追加で罰則を受けることになっちゃうじゃん。

 なんて恐ろしいことを考えるんだ。この干支が一回り上のパイセンは。


「まあいいや、乗れ。中央区まで行くぞ」


「ええー、休みまでパイセンと一緒になんて……」


「確認しに行くぞ?」


「ハイ、乗せて頂きます」


 僕は素早くサイドカーに足をかける。

 僕が乗り込むのを確認すると、アディルは咥えていたタバコを懐中時計のような携帯灰皿で消し、バイクを走らせたのだった。



「──んで、なんで中央区?」


 途中トイレによったコンビニで、アディルから渡された缶コーヒーを飲みながらそう訊いてみた。


 この人工島バベルは東西南北と中央の五つの区で分かれている。ゲーティアに所属する人間は、それぞれの地区へと赴任すると、二人一組の三交代制で仕事を行うのだ。ひとつの区には八人が配属され、休みは持ち回りとなっている。

 休みといえども何かあったときのために待機というのが暗黙のルールと化しているため、滅多に他の区へ行くことはないのだ。

 他の区へ行くということは、それなりに理由があるということだろう。


「だいぶ咒紋が消えてきたからな。補充しに一度工房ラボへ行かねーとってな。お前の方はどうなんだ?」


「うーん、僕の方はもうしばらく保つと思うけど」


「『純粋咒力型』は咒力ジンの変換効率がいいからな。あとお前はサボりすぎだ。まあでも、バラバラに行くよりは二人まとめて行った方がいいだろ」


「確かに、それもそうだね」


 刻剣ヘレヴに刻まれた紋様のことを、咒紋と呼ぶ。咒紋とは、咒力ジンと呼ばれるエネルギーを紋様にしたもので、これがあるおかげで僕らは『御使い』と戦うことができるのだ。

 具体的には咒力ジンによる身体能力と剣自体の強化、そして刻剣ヘレヴ固有の咒力を使った特殊能力である。

 咒紋は咒力ジンを使うことで消費され、ときおり補充してやらなくてはならない。

 これがなくなった刻剣はただの鋼の塊に成り下がってしまい、咒力ジン以外では傷ひとつつけることのできない『御使い』を前にしては、ただただ死を待つばかりとなってしまう。

 一家に一台充電器(充咒力器か?)でもあればいいんだろうけど、そんな便利なものはなく。中央区のレメゲトン本部直轄である、刻剣開発局アルマデル──通称工房ラボまで行かないといけないというわけだ。


工房ラボかぁ。あの近くって、何か美味しいご飯屋さんってあったっけ?」


 そんなことを独りごちると、再びサイドカーが発進した。


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