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夢見の良い枕  作者: 劇鼠らてこ
前章
34/59

33話 『家族集結』

短い回ですの。

『エリザ、昼はすまなかったな。 つい熱くなってしまった』

『い、いえ……お父様、楽しそうでしたの』

『そうか……。 昔からディニテと私はああして高め合って来たのだ。 久しぶりに童心に帰ったのかもしれないな……』


 食堂か。 そういえばここやけに長机で椅子も多いけど、4人家族じゃないのか?

 お客様とか、親族が来た時に使いますのよ。 全席使う事は滅多にありませんけど。


『む。 帰ってくる予定があるのならば言えばいいものを……。 エリザ、ミカルスが帰ってきたぞ』

『ふぇ、お兄様が? ユリア、すぐに迎えに……』

『ペイティが向かったようだな。 あの子の聴覚は私よりも広い。 かなり前から気付いていたのだろう』


 そういえばペイティはエルフらしいぞ。 エルフの子孫。

 えぇ!? ど、どういう事ですの!?

 シルバーアイズとランキュニアーの婆さんが話してた。


『でも、どうしたのでしょう。 お兄様が連絡をしないなんて……』

『ふむ……騎士団で何かあったのやもしれんな』


 ペイティがエルフ……ミルトさんもその家系でしたし、もしかしてエルフの血をひく者は想像以上にいるんですの……?

 そもそもどういう見分け方してんのかわかんねぇからなぁ。 耳が尖ってるとかならわかりやすいんだが。


『おや……食事時でしたか。 ただいま帰りました』

『うむ。 お前も食べるのなら用意させるが……』

『いえ、食事は済ませてきました。 その……サマエラと』

『ほう。 そうか、そうか……。 欲しいのなら、お前の手で掴めよ?』

『勿論です。 むしろ、父上には一切の手を出さないように頼みます』

『わかっている。 ふむ、今日は良い事が多いな……。 久方ぶりに良い気分だ』


 サマエラって誰?

 ……お兄様の恋人ですの。

 ……わーぉ。


『では父上、()はここで失礼します。 少し汗をかいてしまったので……』

『ほほぅ?』


 ほほぅ?


『……特に意味はありませんよ。 今父上が想像しているような事は特に』

『お前もいい歳なのだ。 それくらい有ってもいいと思うのだがな……』

『父上、今の時代は昔とは違うのです。 慎重さこそが大切でしてね……』

『でもお兄様。 ディニテ様が言ってましたの。 自ら振り向かせてこそ――』

『――父上。 少々出かけてきます』

『待てミカルス。 やはり私も行こうと思う』


 親馬鹿と兄馬鹿か。 まぁ俺も行けるなら行くな。 うん。

 私はそんなに子供じゃないですの……。


『お兄様……? お父様まで、食事時に物騒な事はだめですの!』

『む……うむ。 そうだな。 食事が終わってからだな』

『エリザ。 エリザは純粋なままで育ってほしいんだ。 団長の毒牙にかかってはいけないよ? アレは特殊な例なんだから』


 毒牙って……普通男に使うもんじゃね?

 知らないですの。

 やっぱ子供だよ。


『ディニテ様は……素敵な女性ですの』

『あー、エリザ? アレに憧れるのはやめてほしいのだが……』

『何故ですの? 強くて、綺麗で、かっこいいですの』

『その場から一歩も動かずに僕を含めた騎士団の全員を熨す女性だよ? エリザはそんな野蛮なものに憧れるのかい?』

『む、ミカルス。 それはいかんぞ。 お前は私の息子なのだ。 倒せとは言わんが、ディニテに膝を着かせるくらいはしてもらわねば』


 俺もディニテ母ちゃんはかっこいいと思うけどなー。

 かっこいいですの。 なれるとは思えませんけど、憧れますの。


『……父上や団長がおかしいのです。 細剣で剣を斬るなど、人間の為し得る技ではありません』


 こわ。

 剣ってそもそも斬れるんですの? ユリアが折っていたのは見たことがありますけど。

 いやそれも怖いけどな!


『む、いかんな。 エリザの前でそういう話は……。 それに、食事中だった』

『いえ、別にそこまで気にしなくても大丈夫ですの。 食事中は大声を立てるべきではないとは思いますけれど……』


 枕さん、備えるですの。

 何に?


『――そうよ、ミカルス。 あなたも。 食事の最中にする話ではないと、最初に気が付かないのかしらぁ?』


 うお!? どっから出てきた!?

 記憶(ここ)の中でもわからないんですのね……。 

 

『お、お母様? 今日は帰る予定では……』

『詰まっていた予定が一気に消えたのよ。 どっかのライカップのせいで増えていた予定がね』

『セシリア……気配を消して近づくのはやめろと何度言ったらわかるんだ』

『団長に引けを取らない技術……流石です、母上』


 母ちゃんはこんなんばっかか……。

 む。 お父様もすごいですのよ?

 わかってるよ。


『ミカルスがいるって事は、騎士団も予定が一つ減ったんじゃないかしら?』

『……母上、騎士団にも守秘義務がありますので……』

『シオン商会を舐めちゃだめよ、ミカルス。 騎士団の内部事情程度、簡単にわかるんだから』


 じゃあなんで聞いたんだよ!

 お母様は悪戯好きですの。

 そんな理由!?


『あなたは今日休みだったからわからないかもしれないけれど、軍の方でも案件が一つ減ったはずよ』

『……そうか。 そろそろ食事も終わる。 後で私の部屋に来て話し合うとしよう』

『えぇ。 エリザも含めて、ね』

『母上? 何故、エリザまで……』

『私達の家族の中で、渦の中心に一番近いのはエリザよ? 参加するのは当たり前じゃない』


 やっぱジェシカ・ライカップ関連か。

 ですの。 


『ごちそうさまでした、ですの』

『ユリアとペイティも呼ばなければな。 特にペイティはシャイニングスター・シルバーアイズ様からの指名付だ』


 あー。 エルフだからか。

 あ、枕さん。

 何?


『それでは一刻後、集まるように』

『わかりました』

『奥様、お食事は……』

『私()済ませてきたからいらないわぁ』

『母上……どこから聞いていたんですか……』


 多分そろそろ起きますの。 というか、起こされますの。

 あ、はーい。 流石に今日はユリアと寝るのは……。

 無理ですの。 ユリアが怒られてしまいますの。

 ですよねー。



 白い光が世界を覆った。


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