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夢見の良い枕  作者: 劇鼠らてこ
前章
33/59

32話 『影に隠れた苦労人』

名前から察してる人は多かろう。


『【ワープ】』


 次に映ったのは、恐らく王城内の個室。 

 相変わらず主観視点で、シルバーアイズの声だけが響く。

 【レコード】って声は聞こえなかったが、なんでコレが見えているんだろう。


 【ワープ】とシルバーアイズが呟いた直後、視界に弱い竜巻のようなものが発生する。 恐らくその竜巻の内側にいる。

 その竜巻は7秒ほど続いて消えた。


 竜巻の晴れた眼前にはランキュニアーの婆さんとペイティがいた。

 なるほど、ここか。


『……師匠、お久しぶりです』

『久しぶりだねぇシルバ。 背、伸びたかい?』


 ランキュニアーの婆さんは息子か孫をみるような優しい目をしている。 ペイティ視点だと横顔でわからなかったが、やっぱこの人性悪なんて称される正確には見えないなぁ。


『御冗談を。 私達が変わらない事、あなたが一番よく知っているでしょう。

 そして……ふむ。 オレイユ家の娘か。 何かお取込み中だったかな?』


 視点がペイティに向く。 シルバーアイズの視界に映るペイティは、薄いながらも銀色のオーラを纏っていた。 シルバーアイズが魔法を使った時に出る波紋をかなり薄めたような色だ。


『な、なんでわかるんですかー?』

『僕もエルフの端くれだからね。 それくらいはわかる。 用があったのなら早めにお願いしても……うん?』


 ん、なんだアレ。 ペイティの頭……いや脳かな。 そこによくわからない色合いの何かがある。


『あ、いえ、もう確認は終わったので――』

『そうだシルバ。 あんた、群青と白色の体色をした子猫を見たことはないかい?』

『――師匠。 私もそれをあなたに聞きに来たのです。 どこでそのネコの情報を?』


 銀の波紋が婆さんの家中を包む。 婆さんはため息が出るほど綺麗な白金色だな。


『この子が聴いてきたのさ。 口ぶりから察するに、この子が仕えている公爵家、この子に繋がりが或る侍女、あとは騎士団と軍か。 そんな大仰な勢力が子猫一匹を追いかけているそうさ』

『なんと。 想像以上に身近な所で事が動いていましたか……。 ふむ。 どちらかと言えば、僕の方が渦の外側にいるようだ。

 オレイユ家の君、名前は?』

『ぺ、ペイティ・オレイユです』


 ペイティのオーラが震えている。 シルバーアイズの出す銀の波紋に影響を受けているようだ。

 これがペイティの言ってた有無を言わさない迫力の正体か?

 

『そうか。 ペイティ。 君に僕の知っている子猫に関する情報を託そう。 君の方が渦中に近いようだからな。 生憎と中々時間のとれない身。 そのまま渡すから、覚悟してくれ』

『シルバ。 この子はリベートなんだよ? そんなことをしたら……』

『師匠。 だからこそです。 この子なら、適合するでしょう』


 リベート?

 ペイティの記憶では聞こえなかった箇所だ。 意味は復帰とか立ち戻るとか……先祖返りとか。 

 

『帰ってから見るといい。 【ムーヴ】』


 視界に銀のオーラで編まれたプレゼントボックスが生成される。

 ほんとにプレゼントボックスで渡したのか……。


『え、ちょ……!』


 ソレはそのままペイティの頭に吸い込まれるようにして消えた。 否、先程のよくわからない色の部分に収まったと言うべきか。


『……? なんともないですー?』

『眠るときに開封するんだ。 それでは師匠。 失礼します』

『相変わらず忙しないねぇ。 お抱えなんてやめたらどうだい? 私みたいに』


 ランキュニアーの婆さんが何か白金色のオーラで包まれた物を投げ渡してくる。

 それを杖先でキャッチするシルバーアイズ。 どうやってキャッチしたんだそれ。


『あなたのせいで忙しいんですよ、師匠。 それでは 【ワープ】』


 視界は来た時と同じように竜巻に包まれた。

 7秒。 そしてまた、同じように竜巻が晴れる。

 そこはさっきみた王城の一室だった。 魔法ホント便利だな。


『……はぁ。 どうしてこの国はこうも厄介ごとばかりなんだ……。 奔走するこっちの身にもなってくれよ……。 リロイ様もリロイ様だよなぁ。 そんなに息子が心配なら最初から監視役なんてつけないで腹割って話せばいいのに。 いつもはズバズバ物事進めるくせに、家族の事になるといきなり弱くなるもんなぁ』


 うわぁ。

 なんかいきなりイケメン感が消えて中間管理職のおっさんみたいになった。

 聞く限り王様はフランツの事見限ってないんだな。 さっきの王様とシルバーアイズの話でもそうだったけど、やっぱフランツはなんか魔法にかかってるのか?


『オレイユ家、ねぇ……。 そりゃ慕ってくれるのは嬉しいけど、命まで差し出すみたいなのは付き合ってられないよなぁ。 どう思うよアウル』

『ホー』


 視界が動くと、そこにはシロフクロウが。 


『だよなぁ。 随分血が薄まったっていうか、他に仕えるべき主を見つけてるあの子は大丈夫だろうけど、親御さんには会いたくないよな……。 そもそも俺はハーフエルフだってのに。 そういう面倒な手合いはハイエルフのお師匠が背負うべきだよなぁ』

『ホー』


 あー……愚痴を全部ペットに吐き出してるのか。

 律儀に相槌打ってるこのフクロウいいやつだな。


『っはぁ……。 お師匠の造ったコレを設置して、今日の仕事は終わりだけど……アウル、やってくれないか?』

『ホー』

『ですよねー。 俺がやらないとなのはわかってますよ、っと……』


 段々シルバーアイズ(こいつ)が可哀そうに思えてきた。

 苦労人で、愚痴を聞いてくれるのはペットだけとか……。 あと、素の口調が大分柔らかいな。 対外と今とで別人格なんじゃって思う程違う。 声色まで違う。


『ジェシカ・ライカップねぇ……。 エルフじゃないのは間違いない。 しかし魔法の気配はする……。 ロザリアと同じタイプかな。 でもそれならもっと悪逆非道で卑劣な手段を取ってきそうなもんだが……。 フランツ坊を籠絡する程度に収まらないだろうなぁ』

『ホー』

『そういやローレイエル家ってロザリアと親交があったんだっけか。 あー……気合入れて守らないと帰ってきたアイツに色々言われそうだな……』


 コイツもロザリアと繋がりが……って、ランキュニアーの婆さんの弟子なんだから当たり前か。 ロザリアはランキュニアーの婆さんの友人って言ってたし。

 ジェシカ・ライカップはエルフじゃないのか。 しかし魔法が使える?


『100年前と違って、サクっと殺して終わり、じゃだめなのが厄介だよなぁ。 誓約は守るけど、どうしてこう面倒な事になるのかなぁ』

『ホー』


 怖っ!? 

 物騒だなオイ!


この世界(・・・・)でも俺は中間管理職か……。 アレか、魂に染みついた天職なのか? 嫌だぞそんな天職』

『ホー』

『お前は気楽でいいよなぁ。 イテッ!? ちょ、啄むなって! 悪かったから!』


 この世界でも……? 

 なんだ? こいつ、もしかして……。


『っはぁ……。 ビールが恋しいなぁ』

『ホー?』


 こいつ――!





「ホー」


 !?

 いつのまに居やがったこのフクロウ!

 窓は開いていない、ドアも動いてない! 今の記憶はコイツの夢か……!?


「ホー」


 確かにシルバーアイズはレコードの魔法を使ってなかった……けど、シルバーアイズの視点だったぞ?

 こいつの夢なら、コイツの視点か少なくとも三人称視点になるんじゃないのか?


「ホー」


 ばさりとフクロウが羽ばたく。 羽は一切落ちない。

 バサ、バサと何度か羽ばたいて――。


「ホー」


 フクロウは壁を透過して、どこかへ去って行った。

 ……。


 何がしたかったんだ……?


明らかーな名前でしたからね!

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