22話 『放課後お嬢様ズ』
前の話と結合する可能性あり。 後で。
『エリザ様、聞きたいこととはなんでしょうか。 それも2人、内密に……』
『呼び出してしまってごめんなさいですの、ミルトさん』
ん、何ここ。 ティールーム?
公爵家としてのプライベートスペースですの。 侯爵位まで、家ごとに与えられていますのよ。
『いえいえ、私にできる事であればなんなりと。 ……ジェシカ・ライカップの件ですか?』
『あ、いえその件ではないですの。 その、ミルトさんは魔法について詳しいですの?』
今にして思えば一応ジェシカさんの件ですのね。
一度に持って行ける情報はもっと多くできるってペイティが証明してくれたからな。 持って帰る情報を増やせばいい。
『魔法……ですか。 エリザ様のご親友であるロザリアさんが一番詳しいのでは?』
『ロザリアは今この国にいませんのよ?』
『……そうでした、ね』
この反応……今思い出したって感じだな。
ロザリアは記憶魔法を使えたのでしょうか……。
『うーん……テュエルに聞けば分かるかもしれませんが、すみません、私では力になれそうにないですね』
『いえ、大丈夫ですの。 あと、その……もう一つ』
王室抱えの魔法使いとかいうのは、騎士団と関わりないのか?
あら、そんな話よく……あぁ、ペイティですのね。 シャイニングスター様は王室から滅多に出ませんから……。
ん? なんて?
『何でしょうか』
『その傷……何かありましたの?』
シャイニングスター? え、それ名前?
はい。 シャイニングスター・シルバーアイズ様ですの。 元王室抱え魔法使いであるシャフト・ランキュニアー様のお弟子さんですのね。
精神を削ってくる名前だな……。
『あぁ……少し猫に引っ掻かれまして。 不覚です』
『猫、ですの? ……それ、群青と白色では無かったですの?』
『あら、エリザ様の猫でしたか。 ……殴れなかったのは不幸中の幸い、と』
ミルト嬢ってホントに温厚なのか……?
少なくとも私はそう思っておりますのよ?
『いえ、私の猫ではなく、公爵家に侵入した猫ですの。 ユリアが侍女達に見つけたら捕まえろと言っていたのを聞きまして……』
『猫程度も捕まえられないんですか、あの女……。 あ、いえ、すみません。
そうですか、つまり敵だったんですね。 シャルルー家にも侵入したんです、その猫。 生物として発生しているはずの気配や音が一切しなかったので、何者かの使い魔かと思って撃退しようと攻撃したのですが、逃げられてしまいまして……』
そいやペイティも音がしなかったって言ってたな。
ペイティが聞こえないとなると、本当に怪しいですのね。
『わかりました。 こちらもあの猫を見つけたら捕縛しておきます』
『お願いしますの。 それでは――』
『何者ッ!』
うわっ! び、びっくりした……。
この角度から見るとわかりますけど、投げたのは簪でしたのね。
『……すり抜けた……?』
『な、何が……』
『! す、すみません、エリザ様。 御前で戦闘行為など……数年前の反省を生かし切れていませんでした!』
もしかしてエリザ嬢が気絶した事まだ気にしてる?
そうらしいですの。 だからこそミルトさんは私の前では温厚ですのよ。
いやソレ温厚って言わない……。
『あ、いえ、大丈夫ですから頭をあげて欲しいですの。 ……何かいましたの?』
『はい。 気配はありませんでしたが、何者かがこちらを覗いていました。 今の会話を聞かれた可能性があります。 少々お待ちください』
……ユリアやお父様達も言いますけど、気配って何ですの? どうやって感じ取ってますの?
あー……なんだっけ、息遣いとかその人間の発する音? だっけ?
『……ダメですね。 気配・音共にありません。 ここに侍女を呼んでもよろしいですか?』
『え、えぇ……。 なんだか、ミルトさんが遠いところに……』
温厚ってなんだっけ?
性格は温厚ですのよ。 とる手段が手荒なだけで。
だからそれって温厚っていわな……
『フレイ、ここに』
『先程、この部屋を覗いていた何者かが逃走しました。 学院内でこの部屋から離れようとしている人物・動物を見つけたら捕縛してください。 責任はシャルルー家がもちます』
『承知』
今上から来たよな!
侍女ってすごいですのね……。
『え、えっと……それでは、今日はありがとうございましたの』
『はい。 テュエルなら何かわかるかもしれませんが、聞いておきましょうか?』
『いえ、ユリアがテュエルさんに聞きに行ってると思いますが』
何事も無かったかのように……。
初めてみる方でしたの。
『へぇ、あの女が……。 わかりました。 それでは帰り道、お気を付け下さいね』
『はいですの』
いつも通りのログハウス。
紅茶を飲む枕と、対面に座るエリザ。
「ミルト嬢は何も知らなかったけど、エリザ嬢とミルト嬢を覗いている奴が居た、と」
「夢の中の映像にも映っていませんでしたの。 そもそもあの部屋は誰かが覗ける構造じゃないんですけど……」
口元に手を当てて考え込むエリザを尻目? にグイグイと紅茶を飲んでいく枕。
ちなみに、今のエリザは仮眠中だ。 帰って来てすぐに横になって、そのまま夢の中にダイブした次第である。
「まぁ魔法関係の事はユリアがテュエルって奴から聞き出すだろ。 ……、今日、ペイティと一緒に寝たりは?」
「流石に無理だと思いますの。 ユリアが一緒に寝たのだって例外ですのよ?
……って、聞きだすってことは今日も一緒に寝ますの!?」
世界に光があふれ始める。
元から浅い眠りなのだ。
「おう。 エリザ嬢から言いだせばユリアも快諾するだろ?」
「……しかたないですの……」
光。




