15話 『マクラインフロ』
サブタイトルのマインクラフト感!!
白く、濃い靄の中。丁度人間の腰と胸辺りを濃く染めて立ち上る靄が隠しているもの。
金の髪と茶の髪を持つ2人の女神だ。
黒い大理石に座る金の乙女の髪を、その後ろに立つ茶の髪の乙女が撫でる様に梳いている。天然植物油由来の液体石鹸で洗われるその髪の毛先は、まるで波打つようにうねり、踊る。その髪の根元は、流水が流れるようにさらさらと掻き分けられる。
さらり、さらり。
さらり、さらりと、髪の毛1本1本に馴染ませるように、懇切丁寧に好いていく茶の乙女。湯浴み場には濃厚な、それでいて邪魔にならない花の芳香が彷徨い、2人をどこか和らげる世界へと連れて行く。
ふと、茶の乙女が前方――壁一面に貼られた鏡を見てみると、自分が誘ったにも拘らず頬を染め、なにやらモジモジしている金の乙女の姿が。腿の間に手を入れ、その腿を擦り合わせて手持無沙汰な様子がなんとも愛らしい。
茶の乙女――ユリアは、金の乙女――エリザに向けて目を瞑るよう呼びかける。
何の疑いもかけずに目を瞑るエリザの肩を撫でつつ、木桶に入った湯で植物油石鹸を洗い落とすユリア。一々肩や背中をなぞる度にビクビクと震える様がとてもかわいらしい。
ユリアはエリザの耳元で、「じゃあ次はカラダ、な」と言った。
耳に息がかかったのか、ひゃあと声をあげるエリザ。悲鳴1つとってもユリアはどこか興奮する思いを隠せなかった。
頭髪を洗った物とは違う天然植物油由来の液体せっけんを取り出す。こちらは頭髪用の物とは違い、粘度が幾許か低い。それを右手にたらり、と乗せ、エリザの肩へとかける。
とろとろ、とろーりとゆったり落ちていくその液体石鹸は、エリザの肩甲骨の内側を通り抜け、背筋を緩やかに伝って言った。勿論エリザが驚かないよう、その液体せっけんの温度は人肌を感じさせる程度には温めてある。
それでも背筋をナニカが這う経験というのは中々慣れるものではないようで、液体石鹸が背筋を進んでいくたびに肩を抱いて体をわずかに捻っていたりした。
洗うぞ、と断りを入れるユリア。どこをなんて決まっている。カラダを、だ。
まず、肩。水晶玉を触るような手つきで、水晶の様にきめ細やかな肌をしたエリザの肩の曲線を撫でていく。後ろから前へ、前から後ろへ。腕の方から首へと昇って行き、うなじまで辿り着いてから腕へと戻っていく。ユリアの手のひらとエリザの肌が余計な摩擦を生む前に液体石鹸を救い上げ、今度は手のひらにのせたまま肩を撫でる。
次は背中だ。
指を肩甲骨の形に曲げ、爪を立てないようにしながら触るように洗う。
背骨の上、背骨の左右。
出来物一つない真珠のような肌に石鹸を塗りこんでいく。
さわさわ、さわさわと。
肩甲骨の下あたりを触れると、エリザの身体が少し跳ねることに気をよくしたユリアが、そこを起点として腰の方へ撫でたり首の方へ戻って見たりを繰り返す。
鏡に映るエリザの顔がどんどん赤くなっていく。もう少し続けてもユリアとしては問題ないが、潮時だと考えてやめる。エリザが爆発しかねないのだ。
さて、次は腰回りだ。
液体石鹸を多量に掬い取り、尾骶骨の辺りから伸ばすように広げていく。手首のスナップを使って少しだけ強く、痛くならない程度に。
太っているわけではなく、婦女子としての柔らかさを保ったエリザの腹が、その強さに耐えられずにふるふると揺れる。それを捕まえて、ユリアは更に液体石鹸を塗りこんでいく。背中、横腹、へそ。先程肩甲骨を洗っていたときとは真逆に、指を波打つように動かして揉むように洗う。
それでいて下品な水音をたてない辺り、ユリアはプロであるといえよう。
ユリアはエリザに右手を上げさせる。
再度液体石鹸を掬い取り、広背へと当てる。
流石に温度がぬるくてもそこはくすぐったいのか、ひゃあというかわいらしい声を上げて身を捻るエリザ。それに構うことなく広背、大円、上腕3頭筋の順で撫で上げる。エリザの手まで到達すると、指と指を絡めるようにしてその指を洗う。
また広背へと戻り、大円を辿って今度は上腕2頭筋へ。肌ではなく、中の筋肉をもみほぐす動きは絶大なこそばゆさと気持ちよさを産んだ。
烏口腕筋と三角筋を挟むようにして、両手による揉み解し。絶妙な力加減で行われるソレは、エリザの腰を砕いてしまうような快楽を産む。日頃肩を張って生きている人にはお勧めである。
右上半身の仕上げとばかりに大胸筋の根元へと取り掛かるユリア。腋と大胸筋を挟むような手の形をつくり、ぐにぐに、ぐにぐにと優しく、しかし強くほぐしていく。
ユリアの腕がさらに下へ行こうとするところまでは見えたが、それ以降は白い靄に隠されて見えなくなってしまった。SOUND ONLYである。内部で舌打ちする枕。
少しの間嬌声ともとれるエリザの声が湯浴み場に響く。
その後、ゆったりとユリアの腕が靄の中から出てきた。
腿の間に手を入れたままのエリザをユリアに向い合せる。丁度こちらを向く感じではあるが、白い靄がかかっていてほとんど見えない。ガッデム。
そのまま下腹部、かと思いきや、流石に自重したのか腿へとその手が移って行った。
足の付け根にあるリンパ腺を押しながら、親指を押しこむようにしてエリザの腿をもんでいくユリア。マッサージも兼ねているようだ。
内股を開かせて、液体石鹸を垂らす。
とろぉりと擬音がつきそうなその石鹸は、ユラユラと光を反射する。
肩や背筋を洗っていた時よりも少しだけ強い力で腿をもむユリア。
一見肩や背筋といった所謂『固い部分』にこそ力が必要と思われがちであるが、太腿やふくらはぎといった『肉の多い』部分の方が、弾力があるので力が必要になる。
リンパ腺を辿りながらぐい、ぐいと押して行くユリア。
エリザは特別リンパに弱いということも内容で、軽い痛みと気持ちよさ、つまり『いたきもちいい』という未知の感覚に身をよじらせていた。
ふくらはぎへとユリアの指が差しかかる。
またぞや液体石鹸を存分に掬い、脛の上から全体にまぶすようにソレをかける。
脛骨とふくらはぎの間に指を入れ、小さな円を描くようにして揉んでいく。
体を洗っていたはずなのだが、いつのまにかオイルマッサージの様になっていることは気にしなくてもいい。
膝裏のリンパ腺、脛骨周辺のリンパ腺と辿って行く右手と、ふくらはぎそのものの疲れを癒すために揉み解す左手のコンビネーションが見ていて美しい。
毛穴一つ見えないエリザの御魅脚がそれを一層引き立てていた。
その全てが終わると、今度は踝へと移る。
アキレス健を撮むようにしてグリグリとソレを揉む。人差し指と親指を擦るような動作――上下の動作――や、鳥のくちばしのような少し深くへと揉みあげる動作。
その1つ1つが疲れを取ったり血行の流れをよくするためのものである。
さらにユリアの手は足裏へと移る。
踵を5指先で掴むように揉む。中指と人差し指で地団駄を踏むように揉む。土踏まずを親指で抉るように揉み解す。
指の付け根の肉――拇指内転筋――を足の甲側と共に挟み込み、足の外へと向かう様に指を滑らせる。勿論痛みを発生させないために液体石鹸はふんだんに使っている。
指の第一関節も忘れない。人差し指の第一関節、中指、薬指、小指と順々に圧していく。
最後に指の間を洗って終了である。
下腹部はエリザが自身で洗った。
木桶に湯を汲んで肩からソレをエリザにかける。
普段1人で湯浴みする時の3倍ほどの時間をかけて行われたマッサージ付きのソレは、エリザを心身ともに温かくしてくれた。
ほへぇ、というふやけきった声を出すエリザ。
今度は私がやりますの、とユリアに声をかけようとユリアの方を向くと、そこには凄まじい速度で自身の身体を洗うユリアが。
速いのに洗い残しはなく、背中まできちりと洗えている。
なんだかズルイと思わないでもないエリザだが、あまり湯浴みに時間をかけるのもよくないと思って言わなかった。
「ふぅ……んじゃ入ろうぜ」
そう、この2人、未だ浴槽に浸かってないのであった。
風呂描写のみ!




