第二話『多重なあいつの多重な事情』4
「じゃあ僕は一年五組だから。ありがとう」
そう言い水野は教室に入っていった。嬉しい一時でした。
「さて、俺も自分の教室に行こう」
俺が教室に入ると一瞬教室内の生徒全員が向いたが、すぐに視線を戻した。やっぱり昨日の事がひびいているのか。まあまだあまり生徒が集まっていないようで良かった。とりあえず質問攻めにはならなさそうだ。
「ああ!!! 杉山さん、大丈夫でしたか!!」
この声の主は花澤だ。
「昨日は色々とごめん。本当に大丈夫だから」
「もう本当に心配で仕方がありませんでした。まさか入学式の途中で急に倒れるなんて」
「すまん。それ、少しトラウマになっているからあまり話題に出さないでくれ」
「すいません!! もう言いません!!」
心配するのも無理はないが。
「では私は自分の席に戻りますね」
そう言い花澤は戻っていった。
「あれ? 姫野は?」
俺は周りを見渡したが、姫野の姿が見えなかった。俺は一度教室を出た。(あまり長居はしてなかったが)
「あ!! 杉山君ぅぅぅんん!! 待ってたよ!! テヘっ☆」
「まず、そのぶりっ子止めろ。あいつもそんなことしないぞ」
何だよ、テヘって。少し残念そうな顔をした桜はこう答えた。
「チっ……。さすがにこれぐらいじゃあ響かないか。そんなにヘタレじゃないんだ、ヘタレ君」
今時そんなのに落ちる奴なんていないだろう。
「なら、ヘタレって言うな。それにさくら、俺は探してたんだぞ!」
「いきなり下の名前で呼ぶとは案外大胆なんだね、ヘタレ君」
ああ、こいつめんどくさい。それにヘタレって言うな。
「あいつと区別するためだよ。勘違いするな」
「別に分かってるよ。僕はね、屋上に居たんだよ」
道理で見つからないわけだ。俺は時間の許す限り探したが見つからず、戻ってきたら教室の前にいたのだ。全く無駄骨だ。待っていたほうが良かったな。
「屋上で何していたんだ?」
「君はそれを聞くのか!? だから君はヘタレなんだよ。僕はぼっちが好きなの!!」
どこまでも変な奴だな。まあぼっちも悪くないと思うが。俺も中学生時代そうだったし。
「そういうことか。だからヘタレって言うな」
「ぼっちは素晴らしいものなんだよ!! 一人で自由に過ごせるし、誰とも争うこともない。なのにリア充どもは……」
お前もそういうキャラか。嫉妬って怖いな。裏で絶対藁人形打ってるだろう。今はもう古いかあ。
キーンコーンカーンコーン。聞き覚えのあるチャイムが鳴り響いた。
「鳴ったな。とりあえずHRだから、教室に入ろう」
「チっ……。そうだね、入ろう」
たく、どこまで嫌な奴何だ。俺はそう思いながら、桜と一緒に席へと向かった。