第十話『歓迎、そして一歩踏み間違える青春』7
「料理教室って言われても……どうすれば?」
俺が料理教室をすると宣言して、一番困っていたのはもちろん桃だ。
「取り敢えず、俺たちの前でもう一度クッキーを作ってみろ。話はそれからだ」
まずはどこまで料理が苦手なのかを調べなければいけない。
味から考えれば、何となく分かるが。
俺たちは桃の作業を静かに見守る。
「では、作りますね……」
緊張した面持ちで、クッキーを作り始める。
だが、少しずつ俺たちの表情は曇っていく。
姫野は顔に手を当て、花澤たちは少し苦笑いをしている。
まあ、予想はしていたがここまでとは。正直、料理をしない方が良いんじゃないかと思う。
恐らく、先ほどのクッキーは姫野たちも手伝っていたのだろう。
作業の一つ一つがとても危なっかしい。とてもじゃないが、料理とは言えない。
「出来……ま……した……」
最後の文字が聞き取れないぐらい、弱々しい声を出しながらクッキーみたいなものを差し出す。
うむ。やはりまがまがしいな、これ。
再びクッキーのようなものを口にする。
やはり不味いな。
「よし、桃。お前、料理を止めよう」
「「それで、いいんですか!?」」
俺の言葉に花澤と桃は突っ込んできたが、これはどうしようない事だ。
う~ん。どうしたものか。
「では、他の料理はどうかしら? クッキーが駄目でも他のなら行けるかもしれないわ」
姫野は桃にそんな提案をする。
確かにそれはそうだな。
「じゃあ、親子丼作ってみろ。その次には牛丼と豚丼を」
「全部、丼じゃないの……。それにそんな物、披露会で出せないわ」
いや、他って言ったら丼しかないだろう……ありますね。
「まずはケーキはどうかしら?」
「クッキーよりレベル高くないですか……」
何を作らせようか、俺たちは悩む。
「じゃあ、シュークリームは?」
「それはそれで無理があるだろう」
霧島の案もすぐに無くなる。
万事休すとはまさにこの事かと思い知らされる。
「やっぱりクッキーしかないな」
「そうね、他は無理そうね」
「クッキーがお手軽ですよね」
「俺もそう思うぜ」
「僕も同感です」
その様子を見た桃は拗ねていた。
「いいですよ。どうせ、私は何も出来ませんから……」
「別に出来ないとは言ってないだろう」
俺の言葉に桃は少し驚いた表情を見せる。
よし、食いついたな。
「いいか。人生何事努力が必要だ。料理もそうだ」
「それは、あなたに一番似合わない言葉だと思うのだけれど……」
うるさいぞ、姫野。
細かい事は良いんだと目線で姫野に送る。
それを理解をした姫野は少し呆れた表情を見せ、俺の話に耳を傾ける。
「とにかくだな、まだ時間があるんだし大丈夫だ」
「でも、このままじゃ他が……」
「他は気にするな。俺たちがやるから」
俺はせめてもの慰めでそう言った。
時間がないのは事実だし、他の仕事だってある。
だが、桃は自分なりに一生懸命に頑張っている。
俺らしくもないが、そんな奴を応援したくなった。
「まあ、無理だったらそん時だ。それは気にするな」
「はい!! 私、しっかり頑張ります!!」
どうやら、ようやく元気を取り戻したようだ。
こういうのは高城がやるべき事なのだがと思いながら、高城を見る。
高城はそんな俺に笑顔で返してきた。
「とはいえ、今日も時間だし……ここで終わりするぞ」
「そうですね!! では、皆さん解散!!」
ようやく、披露会準備二日目が終わった。
まだ、これがしばらく続くと思うと、憂鬱でしかなかった。
お~い俺の休息はどこに行ったんだ!?
俺は心の中でそう嘆いた。




