第十話『歓迎、そして一歩踏み間違える青春』3
半ば強制と言うか、いつも強制な俺は視聴覚室にいた。
様々な機材が置かれていた。部活披露会の為だろうか。
「それで、俺はどうしたらいいんだ?」
「それはもちろんこれです!!」
桃はそう答え、俺にカメラを渡した。一眼レフ……えらい本格的だな。
えっ? 説明終わりか? 何か言ってくれよ。
「杉山さんには披露会の撮影を手伝ってもらいます。ちょうど、人手が足りなかったもので」
どうやら、説明がまだあったらしく少し安堵したのも束の間、それは面倒くさい仕事を与えられた。
まあ、撮影自体は嫌ではないが、人が楽しそうにしているところを邪魔して撮影するのは嫌だ。
いや、勝手に撮影をすると睨まれるし、撮影をしますと言うとまた睨まれるだぜ。カメラマンってこういう境遇が沢山あると思うと、辛い職業だよな。
あくまで自分の勝手な意見だが。
まあ、とりあえずこういう撮影は好まないのだ。
他の仕事にしてもらおう。
「俺、他の仕事」
「じゃあ、姫野さんは食事を運ぶのを手伝ってください」
「はい、それなら。心、頑張ります」
俺の意見は当然かのごとくに跳ね除けられ、結局撮影をすることになってしまった。
というか、また心に戻ってるし。
「あのさあ、取り敢えず仕事の役割は分かったが、部活披露会は具体的に何をするものなのか教えてくれ」
「おっと。大事な事を伝えていませんでしたね。部活披露会は今年度から生徒会主催の元、実施するものです」
そういう事か。何となくは分かった。
とはいえ、それはそれは大変そうだな。
「生徒会主催なら、俺たちが手伝う必要ないんじゃないか?」
「それは違います。これは中学生に向けた大事なものなんです!!」
おう……。近い近い。
確かに時期としては申し分ない。
「高校全体が協力して、この披露会を成功させるのです!!」
おう……。先ほどよりも近いぞ。
そんなに迫るな。
どうやら、桃は高校についてよく考えているようだ。
「まあ、そういう事なら構わない」
さすがにこんな一生懸命な姿を見たら、断るのもはばかられる。
それに高城や心たちもやる気みたいだしな。
「披露会はいつなんだ?」
「来週の土曜日です。それまで沢山の準備が必要です」
結構ぎりぎりみたいだな。
はぁ~……。俺の休息はなそうだな。
「取り敢えず今日は料理どうするかを考えます」
「いきなり、難題だな」
俺は正直出来る料理が限られる。
カツ丼に、親子丼に、牛丼……って全部丼系かよ。
俺は自分に突っ込みながら、桃を見た。
「何ですか?」
「いや、お前料理出来んのかと思っただけだ」
たまたま見ただけとは言えるわけないので、適当に誤魔化した。
「料理はその……」
えっ。適当に言ったのに本当なのかよ。
俺の言葉で動揺しているのか、顔が少し赤い。
「苦手ですよね、桃さん」
すると、今までうんともすんとも口を開かなかった高城がそう言った。
というか高城、どうして知ってるんだ。
「ああ、言ってませんでしたね。僕と桃さんは恋人同士なんですよ」
「砕け散れ、リア充」
俺はついその言葉を言ってしまった。
少し気にくわないが、そういう事なら知っていて当然だな。
「もう……言わないで下さいよ。私が料理苦手な事を」
少し顔を赤らめながら、桃は答えた。
どうやら、ビンゴのようだ。
「もしかして、俺たちに手伝ってほしい真の依頼は料理についてか?」
俺が尋ねると、明らかに動揺していた。
これもビンゴか。今日は結構冴えてるかもしれない。
「とにかく!! まず、料理をしましょう!!」
恥ずかしさを掻き消すかのように大声で発した。
高城がその様子を見て、笑っている。
本当に恋人同士だな、爆発しろ。
「ここに料理教室を開催します!!」
そう高らかに宣言され、料理教室が始まった。
ああ、帰りたい。
だが、俺は帰れない。




