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第一話『呪いと救世主』4

 俺達は校門の前まで戻って来た。気づけばもうお昼過ぎだ。俺たちの他に生徒はいなかった。

 「さて、ここまで来たから話すわ」

 姫野はそう言い、校門を抜けた桜の木の前で止まった。

 「まずは呪いについて。あなたも私も同じ呪いを持っている」

 「ああ、『ラブコメが出来ない』っていう呪いをか」

 「だけどあなたがさっき言っていたようにこの呪いは解除出来るわ」

 「朝のあれが関係しているのか?」

 「この呪いにはある突破口があるの。一つは同性同士、もう一つは呪いを持った同士では呪いが発動しないの」

 「ああ、それであのとき呪いが発動しなかったのか」

 「他にも呪いを持った同士で行動すれば、呪いを持っていない女子と一緒でも発動しないわ」

 確かに再び花澤と会った時何も起きなかった。

 「もちろんデメリットもあるわ。呪いが発動しなかった分私と一緒ではない時今まで以上の痛みを味わうわ」

 「じゃあ結局は呪いの発動を先延ばしにしているだけなんだな」

 あまり意味ないのか。

 「だけどそれも心配ないわ!! なんせ私という救世主に会えたのだから」

 なぜ上から目線なんだ。エッヘンとでも言いたそうな素振りを見せた。

 「私の人格全てをハッピーエンドにしてくれれば。あなたも私も呪いは消えるわ」

 「なあ、人格全てってどういうことだ? 姫野は一人だろう?」

 「ああ、そうね。これも話さないとね。私には……もう一つ呪いがあるの」

 え、もう一つ?

 「私は『多重人格』という呪いも持っているの」

 「それは本当か?」

 「嘘だったら話さないわ」

 「そうは見えないが」

 「それはこれのおかげよ」

 姫野は右手に着けているブレスレットを俺に見せた。そのブレスレットは他のとは何かが違う気がした。

 「これを着けているから、今は私は『私』でいられる。まあ、なくてもコントロールは出来るけど」

 「朝の言っていた事はこういうことだったのか。でも具体的にはどうすれば?」

 「簡単よ。私たちが付き合えばいいのよ」

 「はぁ!? そんなの無理だ!! 今日会ったばかりだぞ!!」

 「私だって嫌よ。でもこれは私たちの宿命であり運命なの!! やるしかないの」

 好きになったわけでもないのに付き合わなければいけないのか。

 「まあ、いいわ。とりあえず私はあなたの救世主姫野叶よ。これからよろしく、ええと……どなただったかしら?」

 「はぁ~……。俺は杉山懸。お前の救世主だよ」

 何で自己紹介。どこのラブコメだよ。

 「ちょっっと。いきなり。キモイ」

 姫野は笑顔を見せた。その笑顔で言われても悪口にしか聞こえないからな。

 「じゃあ私は先帰るわ。また明日」

 「ああ」

 俺は姫野に手を振った。っていつの間に友好関係を築いていたのか。

 「きゃああ!!」

 姫野が走った途端スッ転んだ。

 「おい!! 大丈夫か? 意外と可愛いところあるんだな」

 バキっ。何か変な音したぞ。

 「うるさい!!! 私は……別に……。あああぁぁぁっ!!!」

 今度はなんだ。一々疲れる。

 「ブレスレットが壊れてる!!!」

 「はぁ!?」

 



 高校生活初日にして俺は今までと何もかも変わってしまった。ぼっちとしてはこんな濃い一日はない。

 俺の事を好きでもないのに俺は呪いを解くために救世主である姫野と付き合わなければならない。しかも全ての人格と。だがあえて一言言おう。

 「こんなの、俺の青春じゃない!!!!」

 そんなことを頭に入れた。

 こうして突如俺と救世主とのラブコメ作りが始まった。終わりの見えない大変な青春を。



                                                                    

 

 次回から第二話です。

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