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第七話『記憶と勝負』3

 俺たちは久しぶりに図書館に入った。

 見た目は昔と変わらず、モダンな感じが残っていた。ただ少し綺麗になっていた。

 「いらっしゃい」

 懐かしの司書さんの声だ。

 「どうも」

 「失礼します」

 俺たちはお辞儀をし、司書さんの前を通り過ぎた。

 「さて、どうする?」

 「どうするって……。本を返しにきたんでしょ」

 そうだったな。すっかり忘れていた。

 「まあ、後で返す。久しぶりに見てきていいか?」

 「いいけど……。嫌らしい本は駄目だよ」

 その謎のドヤ顔は何だ。

 「見るか、バカ。まず、そんな物置いていない」

 すると、少し優姫は笑った。

 「ふっ。この様子だと大丈夫そうね。私も見たい本があるから、別々に回りましょう」

 「そうだな」

 その方が俺も助かる。俺はあまり人と合わせる事が得意ではない。(呪いのせいで)

 なので、こんな風に回るのは本当に久しぶりのせいだ。(呪いのせいで)あまり言うと痛めつけられるから止めておこう。

 「じゃあ、後で」

 そう答え、優姫は奥の方に向かっていった。

 さて、俺はどうするのか。帰るか。いや、まずは本を返すんでした。

 俺はもう一度司書さんの所に戻った。

 「あの……すいません」

 「はい?」

 どうやら相手は俺の事を覚えていないようだ。それもそうか。一日にたくさんの人に会ってるだし覚えている暇はないか。

 にしても少し不愛想すぎないか。

 「実は自分の部屋は整理していたら、返し忘れた本を見つけて……」

 「うん? どれどれ…………!!! これ、一年前の奴じゃないか!! 今まで何をしていたのかね?」

 そんな事言われても忘れたからしょうがないだろう。まあ、自分が悪いんだが。

 先ほどより視線が冷たい。確かに一年前に借りた本を今返したら、そりゃあ怒るだろう。

 「すいません。完全に忘れてました」

 「まあ……しょうがない。今回は気にしないでいい」

 「ありがとうございます」

 なんだ。意外と優しい人じゃないか。

 視線は冷たいままだが。

 「じゃあ、これだけなので」

 そう言って即座に退散した。

 さて、今度こそどうしようか。久しぶりに回るか。

 この図書館は様々なジャンルに区切られていて意外と沢山の本があり、そして広い。

 高校でもそこそこ広い図書室があるから、別に来る意味は無いんだがな。

 よし。たまにはライトノベルの所に行ってみるか。俺はライトノベルが置いてある場所に行った。

 うん?あれは……。

 「届かない!! 我の暁の力で!!」

 もしかしなくてもあいつだ。

 「これでどうだ!!」

 丁度外から風が吹いてきた。いや、風さん合わせなくていいよ。本当に。

 と言うか風で取れるわけあるか。

 「普通に脚立用意しろよ……」

 「うん?」

 やばっ。ついいつものように口に出してしまった。ぼっちの悪い癖の一つである。

 ここまで来たら無視するわけにはいかないな。

 「俺だよ、俺」

 「なん~だ、雑種かぁ」

 俺だと気づくと茜はほっとしたようだ。

 「俺は雑種って呼んでいいなんて一言も言ってないんだが」

 「まあ、気にするな。お前にピッタリだろ?」

 「チっ。帰るわ」

 「まっまっ待って。冗談だから!! お願いだから帰らないで!!」

 やっぱりこいつチョロイな。俺が帰ろうするとすぐさま茜は慌てて俺の裾を引っ張った。

 「それで? お前何してんの?」

 「あそこにある本を取ろうしているのだ!!」

 そう言い茜は指を差した。確かに女子には取りにくい場所だ。

 まあ脚立があれば大丈夫だろう。

 「なら、脚立で取れ。俺は要らないだろう」

 「いや、要る」

 「悪い、帰るわ」

 少しは探してから頼んでくれ。俺、本当に雑種になっちゃうだろうが。

 『取れ』

 痛い痛い。また呪いかよ。

 どんだけ中二病キャラ好きなんだよ。この変態が。痛い痛い。

 もう言いません。言いませんから。

 「分かった。取ればいいんだろう」

 「うむ。頼むぞ、雑種」

 「殴るぞ」

 『殴るな!!』

 いや、これ冗談だよ。ジョークだよ、ジョーク。

 くそっ。勘弁してくれ。

 「ほれ、これだろう」

 「そうだ!! 感謝するぞ!!」

 俺は茜が欲しがっている本を取り、茜に渡した。

 こういうときはちゃんと感謝してくれるんだな。姫野叶、見習って下さい。

 「それにしてもお前がこんな所に居るなんてな。少し意外だな」

 「そうか? 我の事を理解してくれる人は少ないからな。結果的に一人なのだ」

 「それってぼっちだろう」

 「痛い所を突くな!!」

 自覚はしてるんだな。別に顔は結構可愛い部類に入るから友達居てもおかしくないと思うが。

 それ、俺が言える事ではありませんね。別にぼっちは悪くない。

 「そういえば、雑種にお礼をしようではないか」

 「別に俺は感謝される事、何もしてないけどな」

 そう、俺は別に何もしてない。わざわざ感謝されるほど大それた事は一つもしていないのだ。

 「勉強……を手伝ってくれただろう。それだ」

 「あれぐらい当たり前だ。それに途中から俺、いらなかっただろう」

 勉強はたまに優姫教えたりする。まあ途中から俺は用無しになるんだけどな。

 俺の従妹は優秀だからな。妬ましいわ!!っごほん。

 「とにかく何でもいいから!! 頼む!! 呪いの事について話すから」

 「そうか……。じゃあ、頼む」

 久しぶりの進展だ。まだ肝心の所が分かってないからな。

 それをただ聞けるのは嬉しい。って前まで取引だったけ。

 お願いを聞いたからか。たまには勉強が役に立つ。

 「呪いの解除方法まではどこまで知っている?」

 「確か……お前の人格全てのお願いを聞き、ハッピーエンドにするだったか?」

 俺もうろ覚えだな。詳しい所は感覚で掴む感じだったもんな。

 「そうだ。だが、一番大事な事が欠けているな」

 「そんなのがあるのか?」

 そんな大事な事を教えてくれないのかよ。知らないだけか。

 「ああ。それは君自身も願いを叶える事だ!!」

 「え? 俺も?」

 俺がそう言うと茜は頷いた。願いね……。今の所呪いが無くなってほしいとしか思ってなしな。

 「確かに我の全ての人格の願いを叶える事が主だが、雑種の願いも叶わなければ呪いは解けない」

 「そうは言われてもな……」

 本当にないぞ。何か期待してくれているのにすまん。

 「その様子だと君自身でも気づかない願いかもしれない」

 「そんなの無理じゃないか」

 自分でも分からないのだから、他の人が分かるわけがない。

 「まあ、我らの願いを叶えていく内に気づくかもしれない」

 「そういうもんなのか……」

 だといいけどな。本当に気づかなかったら一生呪いが解けないと言う事になる。

 それは何としても気づかなければ。

 「そうだ。最後に聞いておこう」

 「何だ?」

 急に先ほどまでの笑顔が消え、真剣な表情を茜は見せた。

 「君は今が幸せか?」

 何だ、そんなことか。確かにぼっちだがそこまで不満ではない。

 「ああ、そうだな」

 俺は普通に答えた。

 「本当にかい?」

 「しつこいな。そうだよ、幸せだよ」

 「なら、いいんだが」

 そう言い、茜は口を閉じてしまった。

 「……」

 「……」

 この後しばらく俺たちの周りは静寂な雰囲気に包まれた。

 おい、何だこれ。

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