第一話『呪いと救世主』3
クラスごとに並び終え、俺達は何事もなく入場をした。ここからは男女別に分かれるから姫野と花澤とは一度離れることになった。
「えっえっえ~……。今日はお日柄も良く……。」」
どの学校でも校長の長い演説は一つの恒例行事であろう。特に入学式ではなおさらだ。いつもならこのような話を聞いていただけだったが、今日は先程からあの事しか考えられなくなっていた。それは言うまでもない、呪いだ。何かの手違いだろうか。それとも青春だとは認識されなかったのか。どちらにせよ今の俺はとても清々しい。なんせ青春を送れているのだから。青春最高!!そう思った時だった。俺に悪魔の声と今までにない激痛に襲われた。
『今すぐ取り消すのだ!!』
やっぱり嫉妬か。痛い、痛あいいいいぃぃぃぃっ!!!頭が焼ける。頭が!!
「痛い、痛い、痛あいいいいぃぃぃぃっ!!」
くそ、こんなときに。まずい。みんなが見てるだろう。
「あれ?」
誰も俺のほうを見ずに校長の演説に拍手をしている。そうか、聞こえてなかったか。なら……良かった……。気づけば俺は意識を失った。
「あの大丈夫ですか? 杉山さん?」
隣から女性の声が聞こえる。俺はいったいどうなったんだ。
「仕方ない。あれをやりましょ。」
あれってなんだ。俺はまぶたを開けた。そこには女性の唇が……。え、唇!?
「ぎゃああああぁぁぁ!!!」
俺は悲鳴をあげた。
「あら、起きました?」
「起きました? じゃないですよ!! 何をやってるんですか?」
「いやあ、人工呼吸を」
「どうしてそうなるんですか!? 俺は死んでいません!!」
「他に起こす方法ないじゃないですか?」
「ありますから!? たくさんありますから!!」
俺はもう完全にパニック状態に陥っていた。
「ごめんね。まあとりあえず起きて良かったです」
すごい若そうな女性の先生だ。しかも可憐で美人だ。(唇を近づけて来た時は驚いたが)
「ああ、そういえば私は上野遥。あなたのクラス一年三組の担任をしています」
「そういうことですか。わざわざ起こしに来てくださってありがとうございます。色々と驚きましたが」
「いえいえ、杉山さん。とにかく入学式にまさか意識不明になるなんて驚きました!!」
どうして少し嬉しそうなんだ。
「あの、もう入学式も終わってみんな帰ってますよね?」
「はい!! でも今日は入学式を終わりましたらもう下校ですから、特に心配はする事はありません。他の事は後日なので」
「分かりました。ありがとうございます。」
「まあでも初日そうそう遅刻して意識不明とはなかなか面白い生徒さんです!!」
だからなんで嬉しそうなんだ。まあ怒ってないだけましか。
「とりあえずもう杉山さんも下校して結構ですので」
「ありがとうございます。では」
俺は変な雰囲気に包まれた保健室から出た。
「遅い」
見覚えのある少女姫野が待っていた。
「ああ、すまん。それよりなんで?」
「あなたって言う人は……。朝の事忘れたの?」
姫野は呆れた表情を見せた。
「そうだったな。後は花澤は?」
「ああ、あの子なら帰れという念を送ったから多分帰ったと思うわ」
「もうちょっとマシな言い方あるだろ。」
さっきから変わった女性が多いな。普通なら呪いが黙ってないはずなんだが。
「ああ!! そういえばどうして俺は女性である姫野と話しても呪いが起きないんだ?」
「それは簡単よ。私もあなたと同じ呪いを持っているからよ」
「呪いってまさか……『ラブコメが出来ない』っていう呪いのことか?」
「そうよ。どんだけ勘が鈍いのよ」
「一言余計だ。そんなことより……。なあ、呪いの解除方法を知っているんだよな? 頼む、教えてくれ」
「別にいいけど。まずは学校を出ましょうか。ほら」
姫野が指差したほうには首をかしげている上野先生がいた。
「ああ、そうだな」
俺たちは学校を出ることにした。