第七話『記憶と勝負』1
「お~い。起きてよ、懸」
うぅ……。誰だ、俺の眠りを邪魔する者は。
「誰だよ……。ふぁ~……」
そこには一人の女の子が立っていた。ほうきを持ちながら呆れた顔で俺を見ている。
最近はお母さんは起こしに来ない。だとすればあいつしかいない。
視界がはっきりしてきた。俺はこいつを知っている。こいつは……。
「……!! ああ!! 出たな、くそビッチ!!」
「もう~。朝からそれはないでしょ、懸。それに私はまだ……」
「その後の言葉を言うな。警察に突き出すぞ」
後、その照れ止めろ。そうこいつはビッチで変態こと、俺の従妹、杉山優姫だ。
優姫は従妹と言っても遠い親戚だ。俺はビッチで変態だと思っているが外では人気者だ。外では全然ビッチでも変態でもなく清楚な感じで振る舞っている。
おかげで優姫は女子にも男子にも人気でまさにリア充である。顔を美人でスポーツも出来る高スペックな人間だ。ただあまり勉強が出来ない。それだけが俺にとっての唯一の救いだ。
もし勉強が出来ていたら、俺がいる意味が無くなってしまう。まあ、意味を求める必要はないとは思うがな。
「たくっ。懸の部屋を掃除してるんだよ。それなのに酷い……」
「そんな泣きマネされても俺には響かないからな」
なぜならこいつは変態だからだ。
昔、たまたま見てしまったのだ。変な本を読んでいるを。
それ以来俺は少しこいつに苦手意識を持っている。それに逆に優姫は変な本を俺に見られてから俺にそれを見せつけてくる。
本当に残念な従妹なのである。顔は可愛いだけどな。実に惜しい。
優姫は少し頬を膨らませ、少し怒っていたがすぐに掃除に戻った。
「と言うか俺の家に来るなら伝えてくれよ」
「いや、伝えたよ。しっかりお母さんとお父さんには」
「俺には伝えてくれなかったのかよ」
まあ、俺に伝えたら絶対に俺の部屋に入れないからな。
それが分かっていたから伝えなかったのだろう。にしても家族も家族もである。
俺に少しくらい教えてくれてもいいのに。最近家族にも嫌われ始めている。
これじゃあ返って呪いが悪くなっているじゃないか。
「どちらにせよ、私は二か月に一回懸の部屋に侵入するんだから」
「問題発言だぞ、優姫」
もういちいち面倒くさい奴だ。だがいい奴だ。
優姫は二か月に一回俺の家に来て掃除、洗濯、整理をしてくれる。もちろん、俺の部屋も。
問題発言をする奴だが、しっかり家事をしてくれるし別に困ってはいない。ただ対応に困る。
昔あんなもの見なければな。まあ、本性を知って良かったかもしれない。
「だいたい俺は別に頼んでないだぞ。それなのにどうしてだ?」
「それはもちろん……」
優姫は手で顔を隠しこう言った。
「懸の事が好きだから……」
「黙れ、くそビッチ」
「これぐらいじゃあ発展しないかぁ……」
なんでそんなに残念そうな顔をするんだよ。何に発展させる気だ。
「まあ、いいや。それより二か月でこんなに汚くなるとは……」
「別に俺の部屋は汚くない」
確かにあまり整理しないがそこまで言うほど汚くしてはいない。
第一自分の部屋だぞ。好き勝手して何が悪いんだ。結局俺には力がないのである。
「でも、大丈夫。私が綺麗にしたから」
そう言って俺に綺麗な部屋を見せつけた。確かに綺麗だ。
優姫は勉強以外は完璧である。なので掃除も得意中の得意。
もう俺の部屋モデルルームにしてもいいじゃないかくらい綺麗だ。
「ああ、お疲れさん」
「も~う相変わらずの不愛想ね。でもそこに憧れるわ」
どんな憧れだよ。どんな反応をしてもこういう反応が返ってくる。
ある意味最悪だ。
「そういえば、整理していたらこんな物見つけたんだけど……」
優姫が俺に見つけた物を渡した。
これは本だ。あっ。これ、図書館のだ。借りたままだった。
「ああ~。返し忘れたな」
「たくっ。そういう事だと思ったよ。返して来たら」
「ああ、今度な」
まあ、その今度はいつになるか分からないが。
だが、その嘘に優姫はお見通しのようで追求してきた。
くっ。異議ありと言えない。
「今、返してきなさい」
「何で?」
「今日は休日だからよ。今日しかないわ」
「いや、それは違う。休日は休む日だぞ。なぜそんな日に行かなければいけないんだ」
ちなみにもう定期テスト、追試は終わり五月の終盤に差し掛かろうとしていた。
本当に休憩出来ていないのだ。今も少し疲れている。
「はぁ~……。その捻くれた理論には流石に憧れないわ」
俺、スゲェ。こんな変態にもこんな呆れた顔をされるとは。
悲しいです。いや、悔しいです。
「だったら、優姫。お前が行け」
「そのツンデレっぷり感動して行きたい所だけど、懸の行っている図書館は本人証明書を見せなければいけないから無理よ」
そうだった。最近の図書館は電算化はもちろんのこと色々と便利になってきている。おかげでズルが出来ない。
全く便利になるのは良い事ばかりではないな。
「分かった、行く」
休日にこんな事をするのは尺だが仕方がない。少しの間だけだしな。
「そんな懸に特大サービス!! 私がお供します!!」
「いらねぇ、そんなサービス」
俺の従妹はそう残念でそしてうざい。
俺は仕方がなく優姫と一緒に行くことになった。




