第六話『痛い病と弱点』3
「……」
「大丈夫ですか、姫野さん?」
外に出てから姫野はずっと黙ったままである。なので花澤がたまに声を掛けているが反応がない。
相当落ち込んでいるのだろうか。歩き方も何故かぎこちない。こういう時は俺が声を掛ける事にする。
「まあ、追試で合格すればいいだけだし、大丈夫だろう。何が悔しいんだ?」
するとそっと呟いた。
「杉山なんかに負ける事よ。それが一番悔しい」
「そんなに俺に負けて悔しいですか……」
俺、どんだけ姫野にバカにされてんだ。英語とか国語は結構昔から良い方なんだが。
「まあ、追試は実力テストと全く同じ問題ですからそんなに大変じゃないと思いますよ」
花澤がそう励ますとさらに小さな声で呟いた。
「私、暗記するの苦手なのよ……」
「やっぱりな」
「やっぱりってどういう事よ」
どうやら落ち込みで俺に攻撃する気力はないようだ。
よし、今度から英語で攻めてやろう。
「じゃあ、勉強会でもしましょうか」
「勉強会かぁ……」
「どうかしましたか?」
花澤が驚いた表情をしながら聞いてきた。
「いやぁ、俺そういうのやった事ないからな。どういうのか分からなくて」
「それは、ぼっちだったからでしょ」
急に元気なった姫野が水を差してきた。お前も呪いで同じだろうが。
流石にここで言うわけにいかないので心の中で突っ込んでおく。
「うるせぇ、別にいいだろう。それに勉強は一人でやるもんだ」
勉強まで他の人に邪魔されるのは俺としては嫌だ。どうせ勉強会なんて途中からお遊び会になるに決まっている。
一人でやる。それが勉強だ。
「まあ、取り敢えずいつにします?」
「それ、確定してるのね」
「じゃあ、一人でするんですか?」
おっ。珍しく花澤が姫野に厳しい。いいぞ、その調子だ。
「そうね、みんなでやりましょう」
「俺も入ってるのか?」
「もちろんよ」
マジですか。放課後くらい休ませてほしいのに。
すると急に姫野が近づいて来た。
「願い、聞いてくれるでしょ?」
怖い怖い。背筋がぞっとしたぞ。
「それは強制または命令って言うんだ」
「まあ、いいわ。勉強会は土曜日と日曜日にしましょうか」
「そうですね。あっ」
花澤が何か思い出したようだ。急に手帳を開き始めた。真面目だな。
俺もやった事があるが面倒くさくなって三日で止めた。これぞ、まさに三日坊主と言うのだろう。
「私、土曜日は無理です。なので土曜日は杉山さんと二人で勉強してください」
姫野がとても驚いた顔をしている。そんなに俺と勉強が嫌か。俺も絶対にこんな奴としたくない。
「分かったわ。じゃあ私はここだから」
「さよなら」
「またな」
「ええ。また明日ね、花澤さん」
あれ、俺も挨拶したんだが。完全にシカトか。
「じゃあ、私はこっちなので」
「じゃあな」
「はい!! また明日ですね。さよなら、杉山さん」
ほんと花澤は優しいんだな。姫野もこれくらい優しいと可愛いだけどな。まあしょうがない。
次の日実力テストが返された。姫野はもちろん英語が悲惨だった。それに比べて花澤は全体的高得点だった。
ちなみに俺は英語と国語は学年四位だ。え?数学?数学は大惨事だった。
本当に追試ないといいが。最悪だ。




