第六話『痛い病と弱点』2
「これで、全部ですね」
俺たちはあれから、テスト用紙や資料を運んだ。
「ああ、ありがとうな」
「そうよ、感謝しなさい」
「どうしてお前はいつも上から目線なんだ」
少しくらい俺の事を考えてくれよ。まあ無理か。
「おお!! 終わったみたいですね」
その明るい声で上野先生は俺たちに話しかけてきた。
「はい。もうこれでいいですか?」
「いいですよ。ごめんね、いつも手伝ってもらっちゃって」
「そう思っているなら他の人にやってもらってください」
今月これで十回ぐらい手伝ってるぞ。しかもほとんどが上野先生だし。
「大丈夫ですよ、先生。杉山は一日中暇ですから」
「おい、勝手に暇人扱いするな。俺だって忙しいんだ」
ほら、本読んだり、音楽聴いたりとかするしな。俺デパートリ少ないなあ。
「それもそうですね。またお願いね、ミラクルボーイ」
納得しちゃったよ。少しくらい否定してくださいよ。
もう心が痛いよ。まあいつもの事か。
「分かりました……。ですがそのあだ名だけはやめて下さい」
上野先生はそっと頷いた。本当に分かっていると良いが。
「じゃあ、これで私たちは帰りますね。さよなら、先生」
そう姫野が言い足早に職員室を出ようとした。
「あっ。ちょっと待って下さい、姫野さん」
「なっなっ何ですか、先生?」
動揺し過ぎだろう、姫野。どんだけ英語苦手何だ。
ちなみに上野先生は英語と国語の先生をしている。国語は他の先生がいない時の代理で主に英語だ。
英語の授業中もこんなテンションだ。そして男子はデレデレである。
色んな意味で集中出来ない。
「実はもう実力テストの採点をしたんです。それで明日でも別にいいですけど今言っちゃいますね」
姫野は凄く嫌そうな顔をしている。もう察しているのだろう。やっぱりか。
「私は別に……」
「あの、姫野さん? 大丈夫ですか? 体が震えてますけど」
「だっだっ大丈夫ですよ。本当に」
こんな動揺している姫野を見たのは初めてだ。少し嬉しい。
「じゃあ、言いますね。姫野さん、あなたは来週追試です」
「……」
「大丈夫か? 固まってるぞ、姫野」
「ふん!!」
「ごふぅ」
ただ心配しただけだぞ。何で腹パンしてくんの。今回本当に痛いぞ。
「まあ、あまり聞きたくなかったかもしれないけど頑張ってね。来週の月曜日放課後職員室に来てください」
「はい……」
「姫野さん、もう帰りましょう。ね?」
花澤は姫野の気持ちを察して声をかけた。まあ姫野の気持ちも分からなくないが。
「そうね……帰りましょう」
「じゃあ、俺たち帰りますんで」
「では、また明日ですね」
「杉山は一人で帰りなさい。一人で」
こんな状態になってまで俺に対して冷たいのか。後、二回も言わなくていいだろう。
「どっちにしても途中まで道同じだから。我慢しろ」
「まあ、一緒に行きましょうか」
花澤がいて本当に助かる。いなかったら一生言いあってるペースだからな。まあ今なら勝てそうだが。
「ええ……」
そんな姫野の今にも倒れそうな暗い声を聞きながら俺たちは外に出た。




