第五話『試練、そして少し変わる日常』5
突然の休憩から十分後。
「これで、みんな揃いましたね」
「急に何ですか?」
俺たちと一回戦突破グループが上野先生に呼ばれた。
少し間を開けてから上野先生は喋り始めた。
「今年はまさかの一回戦で参加グループが半分以上リタイヤしてしまいました」
今残っているは俺たち、GグループとBグループとDグループの三グループだけだ。
流石に三グループで二回戦、三回戦をやるのは厳しいと判断したのだろう。とは言え俺は取り敢えず大会を再開してくれないと困る。
「なので、二回戦と三回戦をすっ飛ばして決勝戦をこの三グループでやりたいと思います!!」
本当にすっ飛ばしてるな。まあでも妥当な判断か。
「料理はどうするんですか?」
俺はそれだけ気になったので上野先生に聞いた。
「そうですね……。そうだ!! 少し方向性を変えます!!」
何か急に元気になったな。
上野先生が先ほどよりテンションが上がっている。今にもはしゃぎそうな雰囲気だ。
「鍋にしましょ!! うん、鍋が一番です!!」
「今、春ですよ? そんな季節外れの料理誰も喜ばないと思いますが?」
姫野がそう尋ねた。確かにそうだよな。冬にアイスを食べるもんと同じだしな。
「違うんですよ。私、とっておきの鍋を用意してあります。それを決勝戦の料理します!!」
姫野さんまだまだですねと言いたそうな顔をして俺たちにそう発表した。
凄い嬉しそうですね、先生。
「では、すぐに大会始めます!! さあ、決勝も頑張って!!」
そう言われて俺たちは会場に移動させれた。
胃に重そうだな、鍋。
「え~……。それでは皆さんお待たせしました!! 只今より誠に緊急ですが大食い大会の決勝戦を始めたいと思います!!」
「おおぉぉぉ!!!」
相変わらずの盛り上がりだ。と言うかこの大会どんだけ好きなんだよ、みんな。
もう一層歓迎会じゃなくて大食い大会だけ良いんじゃね。それほどの盛り上がり。疲れる。
「では、決勝戦の料理を発表します!! 決勝戦の料理は……」
一回戦の時と同じように司会が白いカーテンを引いた。うん?同じ?
「……」
謎の静寂に会場包まれた。
何、あれ?罰ゲームの料理か?
「決勝戦の料理は闇鍋です!!」
「はぁ!?」
いや、そんな笑顔で言われても困ります。はぁ?闇鍋?
もう大食い大会じゃないだろう。
「方向性、間違い過ぎです。本当にぶっ飛んでますね」
「ふっふっ。だって実は……」
そう変な笑いを浮かべながら上野先生が大食い大会の幕を剥がした。
「はぁ~!?」
「本当は闇鍋大会ですから!!」
「いや詐欺です。詐欺レベルで酷いです」
「これがとっておき私の案です。皆さんいいですか?」
そんな可愛い顔で聞かないでください。許しちゃう、いや許すかあ!!
「大丈夫です~!!」
おい、お前ら。出ないからそんな事言う権利ないからね。君たちはSなの?Sですか?
「闇鍋……」
「おい、姫野大丈夫か?」
大丈夫じゃなそうだな。顔色めっちゃ悪いぞ。まあしょうがないか。
「面白そうだな。なあ、杉山っち?」
「え? お前Mなの? どんだけ守備範囲広いんだ」
その笑顔後で後悔するぞ。どうやら霧島は乗る気のようだ。
「では、決勝戦始めます!! 皆さん準備してください!!」
えっ。始めるの?マジですか。
俺たちは仕方なく定位置に着いた。
「では、行きま~す。よ~いスタ~ト!!」
いやいやこれ競技何ですか。本当勘弁してくれ。
「はぁ~……。やっぱりか」
俺は遠くから見ていたから嘘だったと思いたくて、料理が来るまで目をつぶっていたがやっぱり闇鍋だ。
「じゃあ俺からだな」
「だから何でお前ノリノリなの? 何か悪い物でも食べたか?」
「……。うっ」
「おい、大丈夫か?」
やっぱりな。
「美味い……」
バタン。そう呟き霧島は倒れた。
やっぱり不味いですよね。
「おっと!! みんな美味いと言い残し倒れていくぅ」
みんな我慢しているだけですよね。凄く不味いですよね。そうですよね。
「さあ、次は杉山だ!!」
どうして俺だけ呼び捨てなんだ。
「いや、絶対嫌です。」
「拒否などないのです!!」
「はぁ!?」
絶対無理だ。絶対に。
『食べろ』
なに急に。今まで出てこなかったのにここで呪いが来ますか!?
呪いもSですか。くっ。久しぶりにこの激痛が。
「次は私が……」
「待て」
「え?」
「俺が全て食べる」
「本気で言ってるの?」
「ああ」
もうこうするしかない。俺には拒否権はないのだ。
「ここで何と!! 完食宣言だ!!」
そんな宣言初めて聞いたよ。
「よし……。」
俺は近くにある箸で闇鍋を食べ始めた。
「うっ。美味い、いや不味い!!」
いかんいかん。俺まで倒れるわけにはいかない。
闇鍋はその名の如く闇だ。いやもう地獄の味だ。
今にも吐きそうな気分だ。諦めてたまるか。
俺はただ静かに最後の一口まで進め続けた。例え死にそうになっても。最後の最後まで、食べ続けた。
「杉山……」
途中姫野の悲しそうな声を聞きながら食べた。
恐らく誰もこんなの期待していないだろう。だが俺は呪いの為にひたすら頑張る。
「これで、最後……」
俺が最後の一口を食べ終わる頃には他のグループは辞退と言うかみんな戦意喪失していた。
「何と……何と!! 本当に完食です!!」
「うぉぉぉ!!!」
立ち待ち盛大な歓声が上がった。
「これで終了です!!」
上野先生がコングを鳴らした。
「何と何と優勝は……Gグループです!!」
「おぉぉぉぉ!!!!」
はぁ。ようやく終わった。
「杉山、大丈夫?」
「ああ、これ上手いな……」
俺は結局倒れてしまった。
「……!! 杉山!!」
人というものは不味すぎると逆に美味しく感じるんだな。ああ、闇鍋不味い。




