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第四話『願いと拒否』5

 「では、皆さん!! 昼休みです!! 仲良くね」

 上野先生がそう声を掛けるとみんな移動を始めた。

 案外考え事してると時間はすぐに過ぎ去るもんだ。授業中先生に当てられて少し焦ったが。よくあることだ。こんな事言うと俺が不良みたいじゃないか。ないない。断じてそんなことはない。

 そもそも俺は優等生に近いはずだ。実力テストでは国語と英語は上位に入っていた。それなのに俺は。

 「あの……」

 どんだけ俺は残念な奴なんだ。なんか自暴自棄になってるし。ああもう。

 「あの!! 杉山さん!!」

 「おお、何だ!!」

 急に話しかけられたもんだから呼び出しだと勘違いしたじゃないか。だから俺は不良じゃない。

 その声の主は花澤だった。花澤から声を掛けてくるなんて珍しい。

 「いやぁ、今日の杉山さん変だなと思って。何かありましたか?」

 「俺、何か変だったか?」

 「はい、あの授業中ずっと何やら物々と言っていましたよ」

 「それは授業中に言ってほしいかったな」

 全然気付かなかった。確かに後ろの霧島が少し笑っていたがその事だったのか。ってあいつも注意してくれよ。

 霧島は確か面白いと思った事はそのままにしておくからな。しょうがないか。

 「それはごめんなさい。次はしっかり合図しますね」

 合図かよ。案外花澤もボケたりするんだな。

 「別に気にしなくていいよ。それでどうして俺の所に?」

 「何を考えていたのか、気になったのです!!」

 えらい元気だな。

 いやもしかして俺の事を……。いかんいかん。妄想はいけない。そもそも花澤が俺の事気にするはずないもんな。

 「明後日の歓迎会について考えていたんだ……ああ!! そうだ!!」

 急に大声出したものだから少し花澤が引いている。

 「ああ、すまん」

 「いえ、大丈夫です……」

 大丈夫じゃなさそうだが。

 どうやら花澤は脅かされるのが好きではないらしい。好きっていうのも可笑しいが。

 お化け屋敷とかは連れて行かないようにしよう。おい、いつの間にデート気分になってんの、俺。

 「あのさぁ、もし良かったら歓迎会で開かれる大食い大会に参加してもらえないか?」

 「ああ、大食い大会ですか。そうですね……ええぇぇ!!」

 そんなに驚く事か。普段こういう事話さないしな。

 「むっむっ無理です!! 私、小食なので」

 「俺もだよ」

 「だったらどうして?」

 「色々と事情があるんだよ」

 流石に全て教えるわけにはいかないからな。

 「そうですか。それなら余計私には無理です」

 花澤はとても申し訳なさそうに俺を見つめている。うん。姫野より何倍も可愛い。

 「そうか。悪かったな、無理な事お願いして」

 「いえ!! 全然大丈夫です。気にしないでください。お力にはなれませんが私応援してますから」

 花澤はとびっきりの笑顔を見せた。

 「ありがとう」

 俺はつい顔を真っ赤に染めてしまった。

 「違いますよ!! そういう意味じゃないですから」

 ですよね。普通ならここでフラグが立っているが俺には立たない。呪いもあるしな。そういえば最近呪いが発動してないな。

 俺がぼっちだからか。そう考えるとイライラしてきた。

 「じゃあ、俺はこの後色々とあるから」

 「そうですか……。私も用事があるので」

 何で急に残念そうな顔をするんだ。俺の事好きなんじゃないかと思うだろう。まあただの勘違いだろう。

 さて、次だ。水野探すか。確か一年五組だったか。

 俺は水野の居る教室に向かった。



 ここが一年五組か。

 東隠学園は一学年五クラスで一年生フロアは二階と三階になっている。一年五組だけ三階なのでそのクラスは憧れの的になっている。

 先生曰くただフロアが足りなかっただけで別に特別なクラスではないらしい。人というものは場所が異なるだけで凄いと思ってしまう。俺は思わないが。いやでも水野は特別だ。

 将来は水野みたいな女性と付き合いたい。ちなみに水野は男だから付き合えない。だが可愛い。

 「あれ、もしかして杉山君?」

 その美声は!!天使水野輝兎だ。いやもう女神だ。

 「ああ!! やっぱりだ!! 二週間ぶりだね」

 「ああ、それぐらいになるな」

 まずい、男のなのに顔が赤くなる。

 「どうしたの、急に?」

 「ああ、丁度水野を探していたんだよ」

 そう答えると少しポカンとした顔をして少し照れる素振りを見せた。

 どんな顔しても可愛いな。

 「嬉しいなあ。誰かに探してたなんて言われたの、杉山君が初めてだよ」

 「一緒に人生の最期を迎えよう」

 「え?」

 「ああっっ、すっすっすまん。今のは冗談だ。気にしないでくれ」

 動揺しまくりじゃないか。これじゃあ本当に水野ルートに入っちゃうぞ。

 「だよね。てっきり杉山君そういう趣味なのかと思ったよ」

 「そうそう。冗談」

 「それで、どうして探したの?」

 「実は歓迎会で開かれる大食い大会に参加しようと思ってるんだ。参加人数があと一人足りなくてさあ。もし嫌じゃなかったら一緒に参加して欲しいんだ」

 「それはええと……。ごめんなさい、僕小食だからそういうのは無理かな」

 何だこの気持ち。好きな女子に告って振られた気分だ。って俺は振られるのかよ。

 それもそうか。体系的に水野は小食っぽいもんな。逆に大食いだったら驚くが。

 だがギャップがあってより可愛くなるな。いかんいかん。水野は男だ。それだけは心に入れておかなければ。

 「そうか、ごめん」

 「いいよいいよ。僕応援してるから。杉山君ファイト!!」

 何その可愛い笑顔。写真撮っていい?もう本当に俺の傍にいてほしい。

 「ありがとうな、輝兎」

 「……!!!」

 しまった。つい可愛い過ぎて下の名前で呼んでしまった。

 水野は相当動揺して顔を真っ赤にしている。そういう姿も可愛い。天使だ。

 「本当に嬉しいよ!! これからもそう呼んで!!」

 よしゃあ!!俺はリア充になったぞ。あっ。男子だったな。つい忘れてしまう。

 「じゃあ俺の事も懸って呼んで!!」

 「うん!! ずっと友達だよ、懸!!」

 「ああ!!」

 あれ?周りの女子が凄い目で見ている。

 「何? あの人そういう趣味?」

 「キモイわね」

 まずいな、逃げよう。

 「じゃあまたな」

 「うん、また今度」

 ううぅぅ。幸せだ!!

 あっ。まだ人が集まってないな。嬉しいという感情に浸っている場合ではない。

 急いで探さないと。くそ、呪いの野郎。

 『頑張れ』

 その言葉悪口にしか聞こえんぞ。俺はこの後も参加者を探した。

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