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第一話『呪いと救世主』1

 呪いは突如やってくる。どんな時でも俺は中学生時代それを痛いほど味わった。男子でも女子でも関係ない。

会話も遊ぶ事も何もかも。全て呪いは排除してきた。

恐らくこんな呪いをつけた者は相当な嫉妬心があったんだろうな。ほんとふざけているも大概にして欲しい。どうして俺が。もうそんな事を考える気も失せた。

 

 「朝ですよ。起きなさい!! 懸!!」

 俺はいつものようにお母さんに大声で起こされた。別にお願いしているわけではないのだが勝手に起こしに来るのだ。

 こっちとしては少し迷惑である。まあ遅刻しないだけマシか。

 「分かったよ!! 起きるよ」

 まだ眠いが俺はベットから出た。そして一階に降りた。

 「おはよう、懸」

 「ああ、父さん」

 いつも通り父さんは新聞を読んでいる。お母さんは朝ご飯を作っている。

 そう、俺の家族はどこにでもいる家族だ。まあ全ての家庭を見ていないからそんな事は言いきれないが。

 ちなみに呪いの事は家族には話していないと言うか話せない。話そうとすると呪いに邪魔される。自分で解決するしかないのだ。悲しい話である。

 「そういえば今日は懸、高校入学式だな」

 「ああ」

 「はぁ~……。相変わらずだな、懸。まだ反抗期なんだな」

 「まあ、そうだな」

 家族は呪いによって俺が変わってしまった事を知らないのでそう勘違いしている。今はそうしてくれた方がこちらとしては楽だ。

 「そうか。高校生活楽しめよ」

 「……。一応そうする」

 俺はそう答えるしかなかった。まあ変わらないだろう。

 「じゃあ、俺行ってくる」

 お母さんの手料理を一通り食べ終え、準備をした。

 「ああ、いってらっしゃい」

 「いってらっしゃい。気を付けてね、懸」

 「分かってるよ」

 そう答え俺は家を出た。

 

 

 今日から高校生になる。学生時代で一番青春を送れる時だ。(まあ俺は送れないが。)まだ高校までの道のりを覚えていないので少し早めに出ることにした。

 高校はなるべく近いところにした。東隠学園と言うそこそこ頭のいい高校に俺は入ることができた。施設も充実しているそうだ。家族もそれなり喜んでくれたし、特に問題ないだろう。

 俺は家から長く続く坂道を歩き出した。今年は桜が満開のようだ。そんな満開の桜の下を歩いた。

 リア充にとってはピッタリの季節。はぁ~……。リア充なんて砕け散れ。俺も少し呪いに浸食されてきてしまったな。

 しばらく歩き高校の近くまで来た。すると何かが落ちているのを見つけた。

 何かのキーホルダーだろうか。交番にでも届けるか。

 「すみません!! それ、私のです!!」

 前方から一人の少女が走って来た。ショートカットで髪の毛にリボンを付けている。なかなかの美少女だった。しかも俺と同じ高校の制服だった。

 「ありがとうございます。そのキーホルダーとても大事なものなんです」

 「そうか、それなら良かったよ。どうぞ」

 俺はキーホルダーを返した。

 「そういえばお前ってもしかして東隠学園の人か?」

 「はい!! そうですよ。良かった。ここら辺来るの初めてで不安だったんです」

 そう言い終え、天使のような笑顔をした。久しぶりだなこういうの。

 「良かったら一緒に行きませんか? 私、花澤彩華はなざわいろはと言います」

 「俺は杉山懸。うん、一緒に行こう」

 そう俺が求めていたものはこれだ。これが青春なんだ。だが俺は大事なことを忘れていた。

 ズキッズキッ。俺の脳内に何かが襲った。

 『今すぐ離れろ!! 今すぐに!!』俺は知っている。そう呪いだ。

 「いたああああ!! 痛い、痛い!!」

 俺は激痛に襲われた。この呪いは美少女と一緒にいるほど強くなる。俺は寝転び、周りを転がり回った。

 「大丈夫ですか!? 今すぐ救急車を!!」

 もちろんそれを見ていた花澤が慌てないわけない。

 「大丈夫だ。やっぱり悪いけど一緒に行けない。俺は少し寄る所があるから」

 激痛に耐えながらそう言った。

 「全然大丈夫そうに見えません!! 置いてきぼりにするわけにはいきません」

 「お願いだ、頼む。俺は本当に大丈夫だから」

 俺は必死に答えた。

 「分かりました。私は先に行っています。無茶はしないでください」

 そう言い残し、花澤は先に走っていった。見えない所まで走っていくとようやく痛みが引いた。

 高校生になっても呪いからは避けられない。俺はまた呪いに邪魔をされた。こうしてまたフラグがへし折られてしまった。

 「はあ~……」

 俺は深くため息をつきながらその場から歩き始めた。ふと時計を見ると……。

 「え。もうこんな時間かよ。まずい」

 時計は学校登校時間十分前をきっていた。俺は慌てて走り出した。まだ間に合う。

 入学式に遅刻はあり得ない。そう思いながら、走っていたせいか周りが見えていなかった。

 「あっ」

 「えっ」

 十字路の右側から一人の少女が走ってきた事に気がつかなかった。

 ドン。俺と一人の少女は思い切りぶつかった。

 

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