表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/70

第四話『願いと拒否』3

教室に戻るといつもの姫野に人格交代しておりこの後全く話さずに一日を終えた。相変わらず、冷たい視線と男子共の態度は変わってなかった。



 「ピッピッ……」

 いつも通り俺は目覚まし時計の音を聞きながら起きた。

 スマホでも良いんだがあまり効果音が好きではないので俺は時計にしている。ここ最近は両親はずっと海外出勤で帰って来てない。たまに贈り物が届くが現地のお土産ばかり。おい、本当に仕事しているのか。少し不安になる。

 俺はあまり寝起きは良くないのでなるべく早めに起きるよう心掛けている。だが最近はあまり高校に行く気分になれない。いつまで続くのだろうか。

 「はぁ」

 「……♪……♪」

 そんな少し自虐的になっている俺に一本の電話が来た。ため息くらいさせろ。

 「あの? 誰ですか?」

 電話番号を見た感じ俺の知らない人だ。普通こう聞くのが妥当だろう。ちなみに俺の電話番号を知っているのは俺の家族といとこだけだ。今のところだ。昔からぼっちだったわけじゃないからな。どうせ何かの押し売りだろう。

 『ああ、お兄ちゃん? 元気?』

 「そんなこと聞くまでもないだろ……!! って心!?」

 その電話の主は心だった。何度も言うが俺は一人っ子だ。(自分で言って寂しいな。)

 『正解。よく分かったね、お兄ちゃん』

 「いやいや、分かるも何もどうして俺の電話番号知ってるんだ?」

 『それはお兄ちゃんと一心同体だからだよ❤』

 「切るぞ、じゃあな」

 俺は切ろうとした。

 『ああちょっと待ってよ!! 冗談だから。ちゃんと話すから。だから許してお兄たん❤』

 「お前、何でも可愛いで許されるわけじゃないぞ」

 お兄たんとか急に可愛くするな。本当に萌えるから。でも許す。

 『そんなことないよ。可愛いは正義だよ』

 「いきなり何言ってんだ」

 確かに可愛いは正義だが。いかんいかん。駄目だ、こころと話すとついこうなってしまう。

 『話を戻すね。実はね、今日朝起きたらお兄たんの電話番号が書いてあったメモが置いてあったんだよ』

 「へぇ……。って何でだ!? お前本当に俺と一心同体なんじゃないか」

 いやぁ、怖い。いつの間に見られたんだ、俺の電話番号。

 『とは言っても詳しくは分からないだよ』

 「分かんないのかよ。まさかテレパシーか?」

 『何言ってんの? お兄ちゃんおかしい』

 急に冷たくならないで。結構傷つくから。オカルト系は嫌いなのか。

 「お前に合わせたんだよ」

 『まあ、いいや』

 案外切り替え早いんだな。

 「メモに何か他に書かれてなかったか?」

 『そうだ!! 確か……朝すぐに電話してお願いを聞いてもらえ。桜より。としか書かれてなかったよ』

 あいつか。そういえばあの時さくらに腹パンされたな。どいつこいつもやり方がえげつない。

 「ああ、もういいよ。良く分かった」

 『このメモ通りならお兄たまがお願いを聞いてくれるんだよね』

 「聞くなんて一言も言ってないぞ。後、呼び方統一しろ。お兄たまって言うな」

 『え~……。本当は好きなくせに』

 この可愛いさが余計に腹が立つ。ほんと小悪魔だな。

 「違うから、全然」

 『それはそうとさあ、お願い聞いてくれるの?』

 今にも凍てつきそうな声で聞いてきた。

 「何か今日冷たくないか。頼む、なるべく優しくしてくれ。そうしないと凍死するから」

 『じゃあいいよね、お兄ちゃん』

 おい、無視かよ。俺に拒否権はないのか。

 『心はね、朝早く起きるのが苦手なの。だから心、少し機嫌悪いの』

 俺もだよ、チクショウ。

 「分かったよ。でどうすればいいんだ?」

 『今月お兄ちゃんの高校って歓迎会があったよね?』

 「ああ。それがどうしたんだ?」

 歓迎会とはその名通り俺たち一年生を歓迎する会だ。

 『あのね、午後の部に大食い大会があるんだ。それにお兄ちゃんは出て優勝して欲しいの』

 「はぁ!? 唐突すぎるから。どうしてだ!?」

 『お兄ちゃんも歓迎会の資料貰ってるでしょ? それを見て』

 俺は鞄の中を探り資料を手に取った。

 「優勝すると一か月間食堂を無料で食べ放題……。そういうことか」

 『そう!! 優勝して食堂でお腹一杯になるまで食べたいの!!』

 「いやいや、俺には無理だ」

 俺はどちらかというと小食のほうだ。あまり大食いには向かない。

 『大丈夫!! 迷惑かけないから』

 「そういう問題じゃない。って言うか既に迷惑だ」

 『あのね、この大食い大会はね三人一組でやるものだから心配はないよ』

 「それは俺の状況を知っての事か!?」

 何度も言うが俺は今ぼっち状態だ。一緒に参加してくれる人なんて早々いない。

 『でもお願い。これが呪いを解く鍵になるかもしれないんだよ』

 確かに願いを叶えれば呪いが解けるかもしれない。さくらも言っていた。

 「はぁ~……。分かったよ。やるよ、それ」

 『本当に!? ありがとう、お兄ちゃん❤』

 「どうせまた猫かぶりだろう」

 『そんなことないよ。信頼してるよ、お兄ちゃん』

 「おい……!!」

 電話は切れてしまった。最後の最後までマイペースだな。

 はぁ~。面倒な事になったな。取り敢えず頑張るしかないか。そう自分に言い聞かせ俺はいつも通り食事をし支度をして高校へと向かった。

 なるべく多く食べられるようにしよう。俺はそう決心した。


 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ