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第四話『願いと拒否』2

 さてどうするか。昼休みはまだ半分時間が残っている。俺の高校は昼食も含めての昼休みなのでだいぶ時間がある。なぜ俺が休憩室にいたのかはもう分かるだろう。

 取り敢えず俺は一度教室に戻ることにした。まあ、あまり戻りたくはないが。



 いつも通り教室の扉を開けるとみんなの冷たい視線が俺に集中した。いやあ相変わらずのアウェーだな。あの日からずっとこんな感じだ。まだ一週間ちょっとしか経っていないのに俺の精神は崩壊寸前だった。

 「さて……」

 俺は辺りを見渡した。どうやら花澤も姫野もいないようだ。流石に殺気がプンプンする男子には渡すわけにはいかない。今のところ会話しているのは花澤、姫野、霧島の三人しかいないのも理由の一つだが。

 花澤を探すのはまず無理だろう。花澤が普段何をしているか分からないからだ。それに花澤を探したりなんかしたら今の状態が余計に悪化してしまう恐れがある。もちろん霧島から飲み物を受け取っているので霧島も除外となる。そう考えると残りは一人姫野だ。姫野がいる場所なら心当たりがあるからだ。いつもなら教室でずっと不愛想な顔をしながら座っているが今日は教室に居なかった。もしかしたらあそこにいるかもしれない。にしてもジュースを渡すだけでこんなに苦労するなんて。俺はやっぱりぼっちなのか。いやいや、落ち着け。今はそうなだけだ。俺は自分でそう思わせて少しリラックスした。

 そうと決まれば早速そこに行ってみるか。もし居なかったら自分で飲むしかない。

 俺は足早かやかに教室を去った。



 俺は目的の場所に着いた。その場所は屋上だ。ここの屋上の扉は実は開いていてすんなりと屋上に出られるのだ。ここにはおそらくいるはず。俺は少し不安になりながらも屋上の扉を開けた。

 がシャン!!奥から少し鈍い音がした。

 「誰かな? 僕の邪魔をする奴は?」

 「俺だよ、桜」

 どうやらビンゴだったようだ。

 「なん~だ。あのクソヘタレ君ね」

 「おい、前より悪口増えてないか?」

 「当然だ!! 僕のこのひと時を邪魔しているんだから」

 まあ、ぼっち好きの桜だったらしょうがないか。

 「それはすまん。それよりほら」

 俺はマスカットジュースをさくらに投げた。

 「これは!! マスカットジュースじゃないか!!」

 そんなに驚く必要があるか。俺が桜の驚きに驚いている。

 「何処で手に入れたんだ!?」

 「そりゃあ、自動販売機で」

 「ふ~ん。中々分かってるじゃないか。少しは役に立つんだね」

 「少しが余計だ。それやるから」

 桜は非常に嬉しそうな顔をした。どうやらマスカットが好きなようだ。にしても霧島が有能すぎる。

 「よし、君をぼっち君と呼ぼう!!」

 「全然嬉しくないから。それにヘタレ君も良いなんて一言も言ってないからな」

 ただでさえ今ぼっち状態なのにあだ名までぼっちにされてしまったら本当に精神が持たん。

 「それぐらい嬉しいって事だよ。やっぱり君はヘタレ君だね」

 ああもう基準が分からん。

 「桜ってマスカット好きなんだな」

 「そりゃあもちろん。他の果物は論外だね」

 「言い過ぎだろ。確かにマスカットも美味しいけどさあ……」

 「僕はマスカットしか駄目なの」

 「それってただ好き嫌いが多いだけだろう」

 「ふうん!!」

 「ぐほぉ」

 そう言った瞬間俺は腹部にさくらの拳を喰らった。ガラン。同時に俺のスマホが落ちた。

 「次、人の欠点言ったらただじゃおかないからね」

 姫野には暴力って言う言葉しかないのか。

 「悪かった。でもいきなり過ぎるぞ」

 「はい、スマホ」

 目が怖いよ。俺のスマホは壊さないでね。

 「どうも。にしてもすごい力だな」

 「さっきの見てたでしょ。僕、ここで少し鍛えてるから。君みたいな人に八つ当たりするためにね」

 はっきり言ったな。そうはっきりと。

 「なんて自分勝手なんだ」

 「ふん。僕には自分勝手なんて言葉ありません」

 やっぱりこいつ面倒くさいな。

 「はぁ~……。そうですか」

 「見た感じだと今のところ呪い解除にまだあまり近づいていないようだね」

 まああの日から何も進展ないしな。

 「でも聞いたんでしょ? 彼女、心から」

 「……!! 桜、あいつについて知ってるのか?」

 「もちろん。でなきゃこういう風に切り出さないから」

 「ということはこころが言っていた事は本当なのか?」

 「そうだよ。心は嘘を吐かないよ。『願いを叶える』というのが一番近道だからね」

 「なあもしかして最初から知ってたのか?」

 「そりゃあもちろん」

 「だったら最初に話してくれよ」

 なんか怪しいと思っていたがやっぱりだな。こいつは相当腹黒い。俺の脳内プロフィールに記録された。

 「あの段階ではまだ知るべきではなかったからだよ。その理由は君の呪いの中にあるよ」

 もしかしてあの時の事を言っているのか。

 「まあいいや。取り敢えずもう時間もやばいし先戻ってるよ」

 確かに時間はやばいが。

 「だけどまだ話が……」

 「それはまた『彼女』の願いを聞いてからだよ」

 ……!!

 「それが君にとって『最初の試練』になるかもね」

 「おい、ちょっと!!」

 そう意味深な言葉を残し桜は去って行った。最初の試練っていったい何なんだ。少し気になったが今は気にしないでおこう。

 俺もさすがに寂しく感じたのでこの場から去った。

 

 

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