第三話『ありえない現実と非休日』5
「はぁ~……。よいしょ」
今にも倒れそうなくらい疲れ果てた俺は心を公園のベンチに寝かした。最近運動してなかったのがここで来るなんて最悪だ。
「すぅすぅ……」
そういうのはゲームや漫画だけだと思っていたが本当に聞けるなんてな。やっぱり改めて見ると姫野は可愛い。いつも不愛想でなければモテるんだろうな。
「まだ寝てるのか」
そんな声も届かず心はすやすやと寝ている。
「まだ食べられるよ……むにゃむにゃ」
夢の中でも食べてんのか。どんだけピュアなんだ。
「うぅぅ……。お兄ちゃん?」
「ああ、まだ寝てていいぞ」
まだ寝顔を見たい。まあ健全な男子なら当然の事だ。許してくれ。
「ありがとう、お兄たま❤」
やめろ、本当に死ぬ。
「恥ずかしいからやめてくれ」
「照れ屋さんなんだね、お兄ちゃん」
「ちっ違うからね。人の目が気になるだけだから。いやあ本当に」
「そういうところが心は好きだよ」
「好きという言葉をそんな安易に使うな。好きになっちゃうから」
「……。すぅすぅ……」
再び心は眠った。
「また寝たか。……!!」
なんだ、その無防備な恰好は!! こころは仰向けに寝ており、男子としてはたまらない瞬間だった。いかんいかん。
『やっちゃいなよ、YOU☆』
えらいノリノリだな今日は。呪いが見逃してくれるのか。理性を保つんだ。
『これはチャンスだ!!』
俺の脳内にいる悪魔が囁く。こうときたら天使も……。
『別にどっちでもいい。』
適当だな!!俺には天使はいないのか。堕天使に改名しよう。こんなのただの変態と同じじゃないか。
「うぅぅ~ん……」
まずい起きてしまう。いや起きてください。そうしないと俺がおかしくなる。
『早くしろ!!』
「……!!! 痛い、死ぬぅぅぅぅ!!」
おい、今日の呪いおかしいぞ。いつもは青春を邪魔しにくるはずなのに。どうしてこんな事強制しようとするんだ。まさか呪いを送り付けた人はただの変態!!
だが、今そんなこと理解したって意味がない。俺は実行するしかないんだ。
『キスで……』
えっ。今なんと?無理無理、絶対無理。唐突すぎる。そういうなら上野先生に求めろ。俺は無理だ。
もちろん俺にはそんな拒否権はなく、激痛が走り続ける。
「分かったよ。やればいいんだろう」
すまん、心。俺は心に顔を近づけた。そして……。
「杉山!! あなた何してん!? この変態が!!」
懐かしの声を聞きながら俺は痛恨の攻撃を腹にくらった。いつもの不愛想な姫野に戻ったんだな。
「ぐほぉ」
俺は姫野の痛みに耐えながら事情を話した。
「なるほど……そういうことね」
「理解してくれたか?」
「ええ。後で地の底に落としてあげるわ」
理解してないじゃないか。その目怖いからやめて。お願いだから可愛いままでいて。
「だから呪いのせいだよ!! 第一お前みたいな冷酷な奴にキスするわけないだろう」
「そう、私は『氷の女王』。って誰が冷酷よ!!」
乗りツッコミありがとう。俺がガッツポーズするとまた腹に頭突きをやられた。
「すいませんでした」
俺は土下座までとはいかないがそれなりの謝り方をした。
「別にいいけど。それよりなんで私が杉山と?」
「別の人格とちょっとな」
「ふぅ~ん。それでさっき……」
「だから誤解だって。呪い、呪い!!」
「分かってるわよ、冗談」
顔が笑ってないぞ。怖いから。
「ひとまず帰るわ」
そう言い姫野は去ろうとした。
「あっ。でもお金持ってないんだよね」
「はぁ~……。払うよ。一緒に帰ろう」
そこはちゃっかりしてるんだな。俺たちは駅へと向かい自分たちの家に帰って行った。
ちょっとしたサービスもあり姫野の事も少しは分かったがでもこんな休日と言えるのだろうか?
そう疑問に持った非休日を俺は終えた。
次回から第四話です。