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6.最強の能力―2


 皆が注視するそこは、火花が散った事で一瞬視界は奪われた。が、宇宙人の反応を見れば、分かった一歩踏み出すように前によろめき、そして、諸星達から視線を即座に逸らして、振り返り、すぐに橘、成城を見たのだ。

 つまり、電撃を纏っているだけで、磁力操作等してナイフを弾いたり、防いだりは、少なくとも意図外であれば、できないという事が証明出来た。

 成城達を、特に橘を睨んだ宇宙人はそこで一度踏みとどまり、背中へと手を伸ばし、突き刺さっているナイフを無理矢理に引きぬいた。そしてそれを右手に持ち、背中からわずかに吹き出す緑の蛍光色の鮮血等気にせずに、仕返しをせんとばかりに、投げた。それは回転する事もなく、一直線に橘の眉間を捉えんとばかりに恐ろしい速度で向かった。

 だが、橘の隣には、成城がいる。

 成城が橘の目の前で弧を描くように振るった刀の刃が、一直線に、その切っ先を橘からぶらす事なく向かってきていたナイフを、弾いて飛ばした。成城の刀に弾かれたナイフは回転しながら飛び、近くのすでに崩れかけている民家の壁の一部に突き刺さり、静止した。

「なんのために宇宙人(お前等)の能力を持った俺が橘さんの隣にいるかも考えられなくなったのか」

 成城が呆れたように、呟いた。と、同時、宇宙人は即座に振り返った。当然だ。宇宙人が投擲した間も、宇宙人が振り返ってからナイフを引き抜いた間も、時間は過ぎている。常に、成城、橘、砂影、諸星、飯塚、と五人の人間が動いている。

 宇宙人が振り返ったその瞬間に、既に、諸星の右手が、伸びていた。

「ッ!?」

 宇宙人は驚愕した。稲妻を纏っているのだ。そんな状態の宇宙人に、手を伸ばす、なんて考えは当然、持つはずがない。だが、諸星は真っ直ぐに手を伸ばした。何の迷いもなく。だからこそ、宇宙人は警戒した。この男は、何か考えがあって、手を伸ばした、または、何らかの理由があって触れる事ができる状態であり、手を伸ばした、と考えた。警戒した。

 だからこそ、宇宙人は思わず、上体を引いて、その手を避けようとした。

 だが、それと同時、諸星も、手を引いた。

 宇宙人は、それにも驚愕する。そして、困惑する。

 ブラフか、それとも、この行動まで何か考えているのか、と困惑した。考えも、答えが出るはずがない。そして、考えている間にも、一秒を何個にも切り分けたような恐ろしい程に短い時間の中でも、時間は流れている。常に、流れている。そして、その間にも、誰もが、この最後の戦いのために動いている。

 諸星が笑んだ。もとより、諸星は驚愕しようが、困惑しようが、窮地に立たされようが、余裕がなくとも、得意げに笑んでみせるような人間だった。だが、この時の笑みは、『ほら』と得意げになる様な笑みだった。

 その笑みを見て、宇宙人が『しまった』と思ったと同時だった。宇宙人の肩から、腹部を、真横から、貫く刀の影。

「がっああああ!!」

 宇宙人の悲鳴が上がる。

 体を、貫いていた。左肩から、突き刺さり、右の横っ腹から、切っ先が突き出ている。

 鮮血が刃をつたって垂れている。

 宇宙人の体は恐ろしくよろめくが、未だ残っている回復能力があるため、倒れる事はないが、踏みとどまって、首だけ動かして即座に刀が飛んできた方向を見た。見ると、そこには、砂影の姿。

 刀を手放したのは、当然、触れたまま攻撃はできないからだ。

 だが、宇宙人は疑問を抱く。なぜ、一つしかない武器を手放したのか、と。その武器がなければ、攻撃の手段はないというのに、宇宙人が人の形をしたままだと自ら引き抜く事が出来ない程に刀を貫かせるのは、おかしい。

 偶然か、と自問する。だが、答えは当然でない。だが、砂影は、今の一撃のために、確かに、刀を放ったのだ。

「ッグオォオオオオオアアアアアアアアアアア!!」

 宇宙人は叫ぶ。叫び、そして、限りのある、肉体に残るエネルギーをフルに活躍させて、細胞分裂を繰り返し、そして、刀を、体から抜き去った。まるで、刀が自ら肉体から抜けだしたかの様な光景だったが、違う。細胞が動き、肉体を再生し治す事で刀を意図的に押し出したのだ。押し出した刀が地面に落ちる前に右手で拾い上げ、武器を手に入れた事で宇宙人は僅かでも余裕を得て、即座に刀を構えて、砂影の方へと向いた。

「ッ、」

 だが、そちらには砂影の影はなかった。

 即座に宇宙人は反対側へと振り返ると、そこに、砂影の影を見た。何故か、得意気でいる、砂影のその姿を捉えた。武器はない。だが、余裕がある。

 が、同時、宇宙人を、蹴り飛ばしたのが、飯塚だった。

 飯塚の行動には、隣にいた諸星でさえ、驚いたし、その光景を見た成城達でさえ、驚いた。

 ドロップキック。綺麗なそれであった。まるで、本職の人間がする様なそれを横っ腹にくらった宇宙人は、大きく横に、よろけた。

 今の、刀を押し出した際に、稲妻を纏うようにまで、エネルギーを回せなかったのだろう。直接的にはエネルギーが能力の発動に関わるわけではないが、体力が持たなかったのだろう。

 その僅かな隙を狙って、諸星でさえ躊躇ったその隙を飯塚はついたのだ。

 挙句、『今回の』攻撃は、恐ろしい程に強力なモノになり、且つ、自らも危険にさせる程のモノである事は、誰もがわかっていたのだ。だが、飯塚はその隙を狙って、飛び込んだ。やはり、特殊な人間だ、と誰もが実感した。

 飯塚が綺麗に膝を落として着地した、と同時、宇宙人が横に倒れた。不意を付かれた事と、体力の低下、保有エネルギーの現象が影響したのだろう。

 宇宙人は横に、人間らしく、倒れた。

 が、同時。

 飯塚が飛び退く。

 と、同時。

 強烈な、爆発。

 皆が、腕で目を、顔を庇った。吹き飛ぶ肉片や血液が、目を潰さないように、という理由だが、ほとんど反射的に手を上げていた。

 何が起こったか、皆そのタイミングの光景は見えていなかったが、皆、理解していた。

 細胞分裂が行われ、刀が肉体から押し出される際、砂影は先の移動で飯塚の手から奪っていた地雷を、その肉体の中へと押し込んでいたのだ。だかこそ、宇宙人が気づいた時には逆の位置に砂影は立っていた。そして、飯塚の攻撃と、その際の転倒により、体内に埋め込まれた地雷が炸裂した。炸裂して、その肉体を腹部から粉砕するように、分断するように、宇宙人の肉体を破壊した。

「ッ!! ……やったか?」

 まず、目を開けたのは当然の如く、諸星だった。やはり、この男も特殊である。

 目の前には、人間の形をした宇宙人の胸から上と、両の足が、ばらばらに、落ちていた。その他のパーツは見当たらない。肉片のほとんどは吹き飛んでいて、散らばっているのは僅かな緑の蛍光色の鮮血だけだった。その多くも、やはり吹き飛んだのだろう。

 次々と視界を取り戻し、その光景を見て、やった、と確信した。

 これで、テストが終わったと思った。だが、油断をしたわけではない。

 砂影が皆にアイコンタクトで、念には念を押す、俺が、と伝え。そして、橘から薙刀を借りて、宇宙人の上と下が落ちているそれへと近づいた。

 ある程度の距離は保ちつつ、観察した。薙刀を選んだのも、ある程度でしかないが、距離を保てるからだ。

(死んでるよな……流石に。さっきみたいな触手も出てこないし。そもそも、触手を出せる程のエネルギーがこの無残な体に残ってるとも、思えないんだよな……)

 思い、確信しつつ、疑いは消さない砂影は、薙刀を構えて、長めに持ち、そして、宇宙人の首を叩き落とそうと持ち上げるように振り上げて、そして、振り下ろした。

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