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4.能力―12


 成城の蹴りが、振り切られ、男の顔を大きくぶらした。

 男の口から鮮血が吹き出し、立ち上がろうとしていたところを無下に封じ、男を再度転がす。

 更に成城は距離を詰める。転がった男に馬乗りになり、伸ばそうとしてきた両手を叩き落とし、そのまま膝で押さえつける。

 成城は分かっている。相手は、手からビームを放つ。掌さえ向けなければ、なんて事はない、と分かっている。

 案の定、男の顔から笑みが消えた。鼻から口から吹き出した緑の蛍光色の鮮血が不気味に男の顔を彩っている。そんな表情を見下ろし、成城は叫ぶ。

「こっからどうにかしてみろよッ!!」

 興奮していた。

 相手が宇宙人で、敵で、倒さねば、殺さねばならない相手だという事と、今ならばそれが一方的に可能だという事もわかっていた。だが、不幸にも、相手は人間と戦うために、人間の形を模している。理由はそれが人間にとって効率的だから、というモノで、実際に今、成城にその理由を押し付けていた。

 人の形をしている。

 倒した相手は翼という異型のモノが生えていて、まだ、なんとか無視する事が出来た。殴り合った相手もその流れと、助けなければいけない相手が二人も身近にいて、勢いで戦ったのも事実。

 だが、今は、一対一である。人間の顔をしたモノを見下ろし、拳を振り下ろさねばならない。

 違うとは分かっていても、人間を、殺す覚悟をしなければならない程であった。都合良く冷静になっていたのも、成城に負担をかけていた。

 人間を、殺す。殺人。いや、違う。だが、人間の形をしている。

「ッ!!」

 冷静になって、一瞬戸惑った。成城は、拳を一瞬止めてしまった。だから、こそ、隙が生じた。

 その隙を、見逃すはずがあるまい。

 男はその恐ろしいばかりの表情で成城を見上げ、そして、ひっくり返るように、後転するように成城を上へと放り投げ、成城の仕掛けから男は抜け出し、そして、体勢を立て直した。

 だが、成城も早い。相手の攻撃を放たせる訳にはいかない、という危機感を抱いていたからこそ、だろう。即座に体勢を立て直し、三メートル程度の距離を一気に詰めようと、すぐに地を駆けた。

 だが、既に、男の右手が持ち上がっていた。

 そして、掌が輝いている。

「ッ!!」

 危機感を感じた。だが、まだ、放たれるまでは早い、そう、思ったからこそ、判断したからこそ、成城は足を止めなかった。が、しかし、男の掌からは、攻撃が放たれた。

 一瞬の出来事に、成城は目を見開く事と、反射的に動く事しかできなかった。

 男の手から放たれたのは、先程までの巨大な、図太いビームではなく、細く、鋭利で恐ろしく強力な、レーザーのような閃光。

 あまりに一瞬の、攻撃。空気を切り裂く鋭利な音が耳に直接伝わった。

「――ッ!!」

 成城の顔がこわばった。右耳に、激痛が走っていた。が、攻撃が当たったのは耳の上の一部分と、走る事で揺れていた髪のほんの一部だけであった。

 身体の一部分が欠損する。例え、僅かでもそれは激痛を感じさせる。が、成城は、踏みとどまった。それどころか、走り出していた。

(今の一撃で分かった。出力調整的な事ができるんだな!!)

 と、なれば、この短い三メートル弱程度の距離を詰める間でも、男の動きに精一杯集中する。右腕はどこに動いているか、左手はどちらを向いているか。

 そして、一度の、攻撃。左手が持ち上がり、成城の胸元に向いた。

 当然、成城はそれを見切っている。二人の距離は大凡一メートル強にまで縮まった。レーザーが、飛ぶ。攻撃の速度は一瞬。瞬きをする暇さえない。

 だが、成城は身を翻し、それを避け、それによる一歩によって、成城と男の距離は一気に詰まる。

 ビームが放たれている時から、手から攻撃が放たれるその瞬間、タイミングを測っていた事が幸を制した。

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 成城の雄叫びが尾を引く。そして、成城の拳が、肘が思いっきり引かれていて。

 その次の瞬間には、成城の拳が、男の顔面を思いっきり殴り飛ばしていた。

 覚悟は、出来ていた。





「敵の数は、……残り七、か。成城さんが相手しているのを、倒せば、だけどね」

 砂影は、そう呟いた。

 山頂に、東雲を除いた全員が集まっていた。高無も無事に合流する事ができ、そして、高無の話しを聴いた霧崎が助けに行こうとしたが、東雲が自ら行くと言い出し、霧崎の判断で成城の応援は東雲に任された。

 東雲自身が、周りの人間に信じてもらおうとする行動だと、霧崎はわかっていた。

「そっちは東雲に任せておいて問題はないよ。彼女は強い」

 霧崎はそうとだけ、皆に言う。説明をするつもり等毛頭なかった。皆に信じてもらうしかない、そんな状況だ、と判断していた。

 続けて、霧崎は言う。

「さて、と。だけど、この人数だとあの機械の部屋に隠れる事は難しいね。それに、さっきも見ただろうけど、ああいう貫通性能を持った攻撃を持つ敵がいる以上、山はただの貫ける巨大な障害物でしかないから、一箇所に留まり続けるのも危険だ。だから、東雲が戻ってきたら、みんなで移動しよう。……とりあえず、村だ」

 霧崎は判断する。

 この中で唯一のテストクリア済みの人間の言葉に、否定をする者はいなかった。

 皆、問題は理解している。

 能力を得なければならない事実もそうだが、それ以前に、この島に潜み、未だ姿を現していない強敵を、どうにかしなければならない。と。

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