第15話 浮かれ過ぎにはご注意を
ある日の午前、栄林庵
「~♪~」
オレ様は気分が良かった、朝っぱらから口笛なんか吹いちまうくらいに。
昨日の昼なんて忘れちまうほどに。
なぜかっつーと…
あの、あの遥がだぜ!?
『付き合う』っていってくれたんだ~♪
なんやかんやで、やっぱりオレの熱い思いが届いたのか?
ひゃっふー!
そうと決まれば『デート』とかいう流れに持ち込めるワケだな!
フハハハハ…!
オレ様万歳、『黒の彗星』万歳!
ん?
…あ~そういえば完全に組織のコト忘れてたな~、
部下とかどーしてんのかな~。
…でもま、いっか!
今は地球の侵略より遥の攻略が先だし?
さっさとデートの予定を考えっか!
今夜にどうやって誘おうかな~。
そう思うとオレ様は店内にあった観光雑誌のページをめくり始めた。
◆◇◆
ま、まずい
…非常にまずいぞこの展開は…!
そしておかしい…どーして?
僕は影からリオンの様子を偵察しながらそう思った。
因みに彼との距離は5mぐらいだが、気づかれないのはエリート諜報員の成せる技だ。
おっと、そんな場合じゃないんだ。
なぜかというと…
え?知ってる?
リオンが遥さんをデートに誘おうとしてることだろって?
そんなもんはさっき読んだ?
す、すごいな君たちは…!
やはり日本人、特殊な空気を読む力を兼ね備えていたか…。
(知らない人や忘れた人は第2話を読んでネ☆)
なら、話は早い。
…その通りだ。
じゃあもう二回目だけどいうよ?
おかしくね?いや、リオンが。
何をどうしたら4日目でデートプランを立てれるの?
しかも付き合ってもいない女性と…。
鉄は熱いうちに打て、とは言ってもアイツの場合は先走り過ぎだから!
鉄まだ熱くもなってないよ、ってかまだ鉄鉱石の段階で叩こうとしてるよアイツ!?
ハンマー…砕け散るよ?
そしてピンポイントで『付き合う』のとこだけ拾うんじゃないよ…不純物がいっぱいあったでしょーが!
どんだけ都合のいい耳してんだホントに…。
ただしまだ希望はある、なぜならデートというのはお互いの了承がなければ成立しないからだ。
っていうかカップルもね。
そういう意味じゃ、アイツはただ一人で勝手に浮かれてるだけ、
せいぜい誘って撃沈されろ!
砕け散るのはお前の心だ!
リオンにはいい薬だろ…。
そう思って僕はその場を離れた。
◆◇◆
そして閉店時刻
あっれ~、おっかし~なぁ~
あっははははは…
うん?おかしいのはお前?
そーだよぉ、ボクおかしくなっちゃたみたい~♪
リオンにはいい薬とかいっときながら、ボクが変なおクスリもらったのかな~。
でもさ、もっとおかしいのは今の状況なんだよね~
それともボクの耳がおかしかったのかな~
そうだよね、そうじゃないと変だよね
遥さんがリオンの誘いになんか乗るはずないもんね~
笑顔で「その日なら空いてるんでいいですよ」
なんていうはずないもんね~。
アハハハ…
ボクはバカだなーエリートでもなんでもないや。
あ~でも~、そうなると目の前のリオンがはしゃいでるのはあり得ないよね。
とうとう目までもおかしくなっちゃった☆
ウフフフ…
お花畑でランランルー♪
………………
はっ!
そこまできて僕はやっと思考を取り戻した。
…いやいや夢だよ、夢。
…うんうん、こんなの現実なわけないよ。
ここは地球式の方法で確かめよっと。
えいっ
ギュウ!
ほっぺたを思いっきり引っ張った。
!!!
…い、
痛ぁぁぁーいッ!!
「痛ぁぁぁーいッ!!」
叫んだ拍子に涙がでる。
「どうなさったんですか!?」
遥さんが驚いて振り返った。
しかし彼女の声は僕には届かない。
…イタイ、いたいよ?…普通に。
ってことは…
……嘘だ、
嘘だぁァー!!
リオンの誘いを遥さんは受け入れた。それは紛れもない事実だった。
久しぶりに僕は目の前が真っ暗になった。
キャー!
遥さんの叫び声が微かに聞こえた…気がした。
◆◇◆
「どーしたんすか、コイツ…」
オレは目の前のタコ野郎を見て言う。
「さーな、身体的なものじゃなくて精神的なものらしーんだ。」
とダイさん。
「要は気が弱ぇーってコトっすか?ダッセェ…」
とオレは笑い混じりに言った。
すると珍しく遥が反論してきた。
「そんな言い方…ユーマさんはちょっと繊細なだけです!」
しかも少し気分を害した様子だったのでオレは慌てた。
「え?」
お、怒ってる…?
「や、わりぃ…」
なんでコイツを庇うんだ?と内心嫉妬もしたが、謝った。
ってゆーかこんな顔初めてみたぜ…。
彼は綺麗な女性が怒った時にみせる独特の威圧感に圧倒された。
「…まあ、いつものことなんだ、寝かせてりゃ治る」
そう言ってダイさんはユーマを二階に運んでいった。
なんだかその後は気まずくなっちまった。
「私の方こそごめんなさい、それと…お疲れ様でした」
お辞儀をして遥は行ってしまった。
でもそこにいつもの笑顔はなかった。
…………
せっかく遥にデートの予約を申し込んだのに、それが成功したっつーのに…。
なんなんだ?この気持ちは…?
一人残ったオレ様は自分に問い続けた。
珍しく暗めのオチです。
ギャグを期待された方スイマセン。
でもリオンにとってはいい経験になったのでは?




