一年生・4月 3
高校入って最初の授業ですが、まあ本格的に授業をはじめる訳もなく予習復習のやり方や先生の授業進行の方針などを教えてもらったあとに自己紹介をしました。
今まで自己紹介してなかったのはここでその時間を取るためだったらしい。
一年間一緒に過ごすんだから皆多少猫かぶってるんだろうけどきちんと聞く。
みんなやっぱり最初からオタクだったとしてもカミングアウトなんてしないから普通に綺麗に纏めていく。
そんな中(顔が)私のタイプど真ん中の男の子が立ち上がって自己紹介をする。
ふむふむ、あれは北沢真澄くんですな。
と、そうだそうだ。言い忘れてたんだけどこのクラスにも攻略対象キャラいたんです。この子のことなんだけど。
というか二次元でも好みの顔だったのに三次元になるとさらにかっこよくなるな。某イケメンミュージカルの推しキャストに似ているぞ…!
好みの顔だから近づきたくなるとでも思った? 残念! 逆に似てるから近づきたくないわ、なんか失礼にも比べてしまいそうだし。
私の好みの顔についてはどうでもよろしいんだ。
肝心の北沢くんの自己紹介なんだけど、みんなと同じように可もなく不可もなくっていう感じでした。
年頃の男の子らしくマンガや格闘ゲームとかが好きなんだってさ。
北沢くんの自己紹介が終わって、次の人へと流れていく。カ行だからまだ猶予はあるとはいえ自分が言うことも決めておかなくちゃいけないな。
無難に音楽聴くのが好きですって言っておこうかな。実際好きだし。
前世では好きなキャストさんがライブやったりしたら行ってたな。あれも楽しかったけど、インディーズのライブに行くのも楽しい。
今はちょっと前まで中学生だったっていうのもあって大体が夜までかかるライブの特性上、親に反対されて行けてません。
高校入ってちょっとゆるくなったらいいなと願ってます。それと一緒に行ってくれる仲間も欲しいね。
という訳でそんなライブ仲間がいないかと気を張って自己紹介を聞いていたらもう次は紗奈の番だった。
「春川紗奈です。天沢中学校からきました」
「好きなことは体を動かすことと、本を読むことです」
一年間よろしくお願いします、と言ったあとにぺこりとお辞儀する様が後ろから見てても文句なしに可愛い!
紗奈の可愛さに打ち震えていたかったんだけど、そうもいかない。なんせ次は私の番なのだから。
不快な音が出ないようにそっと椅子を引いて立ち上がる。
周りを見渡してみると当たり前ながら皆次の発言者である私を見つめている。やっぱりこういうのって緊張するな、と顔が上気するのを感じながらも口を開く。
「平牧中学校からきました、廣瀬真希です」
「好きなことは音楽を聴くことです。これから一年間よろしくお願いします」
最後にちょっと早口になってしまった自分へ苦笑しながらもお辞儀をして席に座る。
うん、何回やってもみんなから見られてる状態での自己紹介って照れるよね。
でも自分の名前を言ったあとに気軽に真希って呼んでくださいって言おうと思ったけどやめた。
だってみんなそういうの言ってないんだもん。同調を好む日本人としては人がやってないことはやるのに気が引けるのです。
自分の自己紹介が終わるとちょっとホッとしながらも残りの人の発言を聞いていく。
音楽が好きっていう女の子もなかなかいるし、ライブ仲間できるといいな。
でも音楽ってひとくちに言ってもジャンルがいろいろとあるから同じジャンルが好きな子となんとか仲良くなりたいものである。
そんなこと言いつつ私はなかなか何でも聞く方だから話をする分には特に困らないんだけどね。やっぱりライブ行くのって好きなバンドになっちゃうから。
とか考えているうちに自己紹介も終わりました。
うちの高校はどうやら40人学級らしい。一般的といえば一般的。
最初に先生が説明していたこともあって、そろそろ授業が終わる時間だ。
今日はここまでらしいし帰りに紗奈を誘って帰ろうかな。