EpisodeⅠ-Ⅲ
「ん……」
朝だ。
薄く、粗末なカーテンから朝日が差し込んでくる。
昨日の夜のことは……まあ、あれだ。ご想像にお任せする。
「おはようございます。マスター」
「……ん。おはよう。アイリス」
朝のあいさつと同時にアイリスがキスをしてきた。
それはとても気持ちよく、抱き合ったまま寝ていたのでアイリスの身体のぬくもりを感じて、もう一度眠ってしまいそうだ。
「今、何時だか分かるか?」
「はい。大体六時半ぐらいですね。もう少し寝ていてもいいですよ」
んじゃお言葉に甘えて二度寝をしますか。
アイリスを抱きしめなおしながら俺はもう一度眠った。
「というか、どうしてアイリスは時間が分かるんだ?」
二度寝を経てようやく起きたころには、すでに正午を回ろうとしていた。
「時間は感覚的に覚えこみました」
そんなことを言うアイリスはいったい……。
覚えこめるものなのか?
「まずはこれからの事なんだけど、どうすればいいと思う?」
「そうですね。……やはり、いろんな場所には行ってみた方がいいと思います。そうすればマスターの転移できる場所も自動的に増えますし」
「そうだよなあ……」
昨日て試してみたことの一つに転移も含まれる。
転移は俺が行ったことがある場所ならどこでも飛べる便利なものだ。
それに、転移と世界地図は連動してるらしい。
「とりあえずの目標は次の街まで行くことですね。そこで冒険者登録を済まして、それからは人間種の首都である<ジパング>に行ってから考えればいいと思います」
この町は他に比べて小さいらしく、冒険者ギルドというものがない。
まあ、モンスターも村人たちで対処できるレベルだからなくても問題はないのだが。
「ここから次の街までどのぐらいかかる?」
「徒歩だと一週間。馬車で五日ぐらいですね」
やっぱゲームみたいに数分で到着とはいかないか。
「馬があればもう少し早いでしょうけれど、さすがにそこまでのお金は持っていませんから」
悲しいことにこの世界も資本主義。
お金がものを言うのだ。
「まあ、レベル上げしながら進めばいいか」
時間はさらにかかるだろうが、少しでも経験値は稼ぎたいところだ。
何故なら、昨日一日モンスターを狩ってもレベルは1しか上がらなかった。
経験値二倍など当てにできないことを思い知らされたのだった。
「モンスターが弱いのもあるんだろうけれど、要求経験値が鬼畜過ぎないか?この職業」
「それは神様に言ってください」
うん。昨日すでに言った。
そしたら神様はこんなことをのたまってきた。
『そりゃ、簡単にしたらつまらんやろ?
せめてもの情けで経験値二倍にしてんやから感謝しい』
とのこと。
「とはいえ、次の街までの食料とかも確保しないとな」
あとは今日の昼飯を今すぐにでも食いたい。
「食料ならすでに私が買っておきました」
うん。この世界に来てもアイリスはやっぱり有能だ。戦闘でも、夜でも。
「お、ほんとうか?」
「ですが、あまり味はお勧めできませんね。もう少し大きな街まで行けば変わるんでしょうが」
「まあ、それは我慢するしかないか」
そう言いながらも手渡されたパンを口に含む。
触った感触から薄々感じていたが、少し硬い。
「回復薬なども買っておいたので次の街まで行くには問題ないと思います」
ほんとアイリスは有能だ。
「ありがとう。アイリス。んじゃ、善は急げ。早速次の街へと向かうか」
「はい。マスター」
結局、次の街へと向けて半日ほど行ったところで転移で戻りながら進めばいいんじゃね?ということに気付いた。
アイリスもちょっと抜けてるところがあるようです。
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