EpisodeⅢ
それから少しの間は、転生というものがどういうものかというのも含めてアイリスに訊いてみた。
「転生というのはそのままの意味です。
マスターは今回、片手銃を<転生の間>に納品したので、遠距離物理職のガンナーとなっています」
「それってこのガンナーをカンストまで上げてもできるの?」
「はい。転生は職業をカンストであるレベル99まで上げれば特定の場所でクエストを受注できます。
人間種である場合は人間種首都<ジパング>の教会で。獣人種である場合は獣人種の首都<海洋都市オケアノス>の海底神殿など、その種族の首都の神域に通じる場所にクエストが配布されます」
確かに<転生の儀>のクエストを受けたのは<ジパング>の教会だ。
「なるほど……」
「サポートキャラである私は転生できませんが、プレイヤーであるマスターは何度でも転生できます」
「制限がないの?」
「はい。ですが、一度転生したものはできません」
「それって制限じゃないの? 職業は一つの種族に四つまでだし」
「いいえ。種族にある四つの職業に転生し終えた場合は、他の種族に転生できます」
他の種族にまで転生できるのか。
公式ホームページにも攻略サイトにもそんなことは書いてなかったはずだが……。
「どうしてそんなシステムが公式に書かれていないんだ?」
普通ならそんなシステムは真っ先に書くと思うんだが。
けれども、その質問にアイリスは言いづらそうな表情をする。
「その質問にはお答えできません」
なにか情報の制限でもかかったのだろうか?
「まあ、このゲームの運営は全く持って謎だからな。
そんな隠し要素もあるか」
このゲームの運営。<ジャッジメント>には謎が多い。
こんなにも高クオリティのゲームを開発したからには相当の大企業というのがプレイヤー全体の予想だが、いくら調べても情報が全くないのだ。
「まあ、とりあえずは……どうすればいいの?」
「えっと、私もよくは分かりませんが、すべての種族の職業をカンストまで上げれば運営から新しいクエストが配布されるそうです」
「全部かあ……」
<ユースガイア>の種族は全部で六。
そのうち職業が近接職・遠距離物理職・魔法職・回復職の各四つ。
つまりは6×4で24回も転生しなくてはいけない。
いや、もう人間種の近接職は終わったから、あと23回か?
「大丈夫ですマスター。私も頑張ってお手伝いいたしますので全ての職業をカンストまで上げましょう!
そうすれば……」
「そうすれば?」
「い、いえ、なんでもありません!」
なんだろう?
あ、そっか運営の特別クエストか。
「新しいクエストってのはなんだか分かる?」
「すみません。それにも私は答えられません」
まあ、最初から教えてくれるとは思っていなかったが。
その時のお楽しみってことか。
「それじゃ、早速レベル上げに行きますか。
アイリスの実力も見たいし」
「はい。ご期待に沿えるよう頑張ります!」
とりあえずはエリアの端にあった出口から通常フィールドへと飛ぶ。
今回は少し短めです。
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