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仄暗い檻の中の出会いと幼馴染3

俺がいったい何したよ?

 

 「あ、あああ…あなたがいま……」


 まったく何を怒り狂ってどもってるんだか?

 ただ薬を飲ませただけだろ。


 「キ、キスをしたからでしょう!!」








 ……あ。




 そうじゃん、今のキスじゃん!

 しまったなぁ……薬吐き出したことにムカついて頭に血が昇ってた……。


 どうしよう!?

 幼女の唇を無理矢理奪うとか最低過ぎるわ、しかもディープでとか……。

 

 そりゃサティアも怒り狂うわな……でもキスのことでこの娘に色々言われるのはどうかと思う。


「あ、あの落ちついt……「落ち着けるわけないでしょう!

 あ、赤ちゃんができてしまったらどうするの!?」


 ……あぁ、うん、むしろこっちが落ち着いたな。

 サティアまだ五歳だもんな……。コウノトリがどうとか言わないだけましだよな。


 さて、サティアをどう言いくるめるか

 幸い、薬には麻酔成分もあったから獣人の娘は眠っていて状況が悪くなることはないが…


「書き終えた……が何かあったのかね?」


 お、サティアには悪いがタイミングよくおっさんが契約書を書き終えたみたいだ。


「いえ、お気になさらず

 奴隷に暴れられては困るので薬で眠らせたところです」


「そうかね……まぁ、暴れるようなことはないがね」


「念のため、ですよ」


 おっさんから契約書を受け取り不備がないか確認する……署名は問題ないな。

 

「ではこちらを……」


 無属性魔法の《ボックス》──四○元ポケット的な魔法──を使い中から金板を五枚取り出す。


「……うむ、確かに」


「ではこちらに魔印をお願いします」


 魔印というのは魔力的な拇印のこと……扱い的には実印か血判に近い。



 おっさんが契約書に魔印を捺印したのを確認。おっさんもサティアも気付いてないっぽいけど…サティアが立会人って形になってるので、今後おっさんが心変わりして獣人の娘を取り返そうとしても俺は100%拒否可能だったりする。

 さて、これでこの獣人の娘は正式に俺の奴隷になったわけだから……言いくるめるの面倒だしサティアがおっさんに怯えているうちにとっとと帰るか。

 

「取引も終えたことですし、申し訳ありませんがこれでお暇させていただきます」


「おや、もう帰るのかね?」


「ええ少し用事がありますので。それではこれで失礼します」


 よし、あとはこの場を離脱すればミッションコンプリート、獣人の娘を抱っこして速やかに離脱……この娘めちゃくちゃ軽いな。とりあえず帰ったら飯でも食わせないと。消化によくて、栄養のあるもの用意しなきゃ。

 しかし、いくら軽いとはいえ俺も子供の身体だからか少し足取りが重くなってるな、まるで何かに引っ張られてるような感覚すらある。



……はて?

そういやなんか忘れてる気がするけど……なんだっけ?

 

「ちょっとまてよ」


 出口まで歩いているとガラハゲ……じゃなくてガラハドにいきなり声を掛けられた。


「その『けがれたち』をどこに持って行くつもりなんだ。

 それはおじさまがぼくたちのためによういしてくれたまとだぞ」


「そーよ、それがなくなったらまほーの練習ができないじゃない」


 ゲロス……もとい、エリスも言葉を重ね俺を止める。

 こいつらさっきの取引が理解できてないのか?


「この娘は先ほどリオール卿からぼくが買い取ったのでぼくの奴隷ですよ」


「どれい……ってたしかお前のうちでうってるものだよな」


 

「そうですが…それが何か?」


「だったらそれをぼくによこすんだ!」


「寄越せと言われましても……代金はどうするのですか?」


売るとしたら仕入れ値と相場から考えるとだいたい金板八枚、儲けなしの仕入れ値だけでも金板五枚だからとてもガキに払える値段じゃねぇぞ?


「ぼくはおうじだぞ、よこせと言ったらよこすんだ!」


王子ってのはいつから盗賊になったんだよ……。


「まぁ、待っておにーさま

お金ならきっとおとーさまがだしてくれるわよ」


 ふむ、エリスはガラハゲに比べると物事がわかってるようだな……けど甘い。

 金板五枚なんてホイホイ出せるわけないだろ、しかも奴隷になんて。

 それに、


「あのですね、国王様は出してくれませんよ。陛下は奴隷を買わないと宣言してますから」


 正確には歴代国王がだがな。

 汚れ仕事をうちに任せている以上、その汚れ仕事の象徴とも言える奴隷を持つわけにはいかない。

 だから代々戴冠の時に奴隷不買の宣言をだす。


「……では、ぼくは先を急ぎますので失礼します」


 とりあえずこれ以上ごちゃごちゃ言われる前に退散する、 煙に巻いたことに気付かれるとめんどいしな。




 

 さて、帰りの馬車を待たせている場所に到着したのだが、何故かサティアが着いて来てる。

 何かに引っ張られてるような感覚があると思ってたら本当にサティアに服の裾を引っ張られていたらしい。

 たぶんおっさんに怯えて思わず掴んだのだとは思うが何故ここまで着いて来る?


 そしてガラハゲたちは何も言わなかった? と言うかなんでサティアは俺が平気なんだ?

 兄弟にすら怯える──原因の一つは兄の第一王子だからだけど──のに……。特にフラグを建てた覚えもないし。

 本当に俺への嫌悪が恐怖を上回ったとかならガチ凹みなんだが……。

 

「……あの……」


自分の思考に若干凹んでいるとサティアが声を掛けてきた。


「その娘を私に売ってくれないかしら?」


「……サティア様も先程の話を聞いてましたよね?」


 俺は気付いてなかったけど真後ろにいたんだから聞いてないはずがない。


「えぇ、もちろん。

 でも買えないのはお父様の話、私が個人的に貯めたお金なら……」


 ほう……、サティアは気付いていたか。


 奴隷不買の宣言はあくまで国王が戴冠の時にするもの、王妃や嗣子の第一王子はともかく、他の王族はそれに縛られない。

 だからガラハゲもそこに突っ込んでたら煙に巻かれなかったんだよな。

 ……まぁ、普通五歳児気付くわけないんだがな。サティアってかなり頭いいよな……。

 

「なるほど、それならば確かに問題ありません」


「な、なら!」


「ですが、それはいつ払えるのです? 陛下たちに出してもらうのは無理ですよ。

 すぐに払えないのなら他の方が欲しがるかもしれませんし、その方は即金で払えるかもしれませんよ」


「それは……そのぅ……予約という形にしてもらえない? ……だめ?」


「い……だめですね」


 危ねぇ! 思わずOKするところだった。

 不安気に『だめ?』とか破壊力ありすぎるわ!


「そ、そんなぁ……」


「まぁ、そもそもこの娘を他に売る気はありませんよ、気に入ったのでぼくのペットにします」


 この娘を買った金はイスカンダル家の金ではなく俺個人の金だったりする。

 契約書にも買い手はイスカンダル家ではなく俺の名前が書いてあるし。

 

「ぺ、ペペペ……」


 ん? いきなりぺを連呼してどうした?


「ペットだなんて、何を考えているの!?」


「何を、とは?」


「この娘を何だと思ってるの!?」


「何って……ペット兼奴隷ですね」


「そういうことじゃなくてっ……!」


 ふむ、何を言いたいのかよくわからんな……まぁ、人権云々を言いたいんだろうけどこの国は王政で奴隷制ありだから人権関連はあまり発達してないんだよな。南大陸あたりでは発達しているらしいが。

 どっちにしても五歳のサティアがその辺りをうまく話せるわけないからとっとと帰ろ。

 

「さて、ぼくはこのあと用があるので失礼しますね」


 用があるっつーか、正確にはできた訳だが。


「待って、私も行く」


 はい?


「あなたがこの娘にひどいことしないか見張るんだからっ!」


 え~、マジっすか~。……あー、でもこのあとの用のことを考えたらサティアに来てもらった方が助かるかも。

 つーか、サティア達連れて帰ってくれって王様に頼まれてたの忘れてたな。

 まぁ、後でいいか。ガラハゲ達もいないし、どーせ王様の頼みだし。

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