コネ
「王族目当てか……」
王族がギルド実習を受ける場合、場所が王都なのは確定しているので、コネを築くつもりなのだろう。
士族の生まれだとよくやる手らしいし。三代続けて騎士か勲士が……あ、思い出した。
「何か言ったか?」
おっと、声が漏れてたか。図星らしくクッコロが睨んで来てる。
「……別に、何でもないさ」
まぁ怖くも何ともないが。
「何でもないハズがないだろう! 何が言いたい!」
「ハッ、没落士族に興味はなくてな、言いたいことなどないさ」
二代続けて騎士・勲士身分を得られず、士族身分剥奪にリーチがかかってて、イスカンダル家に騎士身分を売ってくれるように泣き付いてきた家の騎士未満なんて。
「貴様、そこに直れ! 今すぐ粛清してやる!」
鼻で笑って軽く挑発すると、クッコロはすぐさま激昂する。
クッコロが出向しているということは、当然ながらイスカンダル家は騎士身分を売り渡していないということだ。と言うのも、色々理由はあるが、主には今回のようにクッコロはすぐに頭に血が昇る性質だからだ。
先祖代々同じ性質のようで、能力的には士族身分に相応しいクセに、ほぼ常に没落の危機にあるらしいし。むしろ三代続けて騎士身分を得て、士族になれたのは割りと奇跡だろう。
「ほう、いい度胸だ……」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください。
何でいきなり喧嘩腰なの、るーくん!?」
受けて立とうとしたが、途中でサティアが止めてきた。
何でかというと、ギルド実習の主導権を握る為だな。指導者として致命的な欠陥があるヤツに身を任せられるわけがない。ただでさえ危ない性質なのに、今のクッコロは功を焦ってるんだし。
「狭いんだから暴れないでって言うか、粛清とか無理な広さでしょ、ここ」
「いえ、そういう問題ではないと思うのですが……」
「むう……あの人は苦手だけど、あっちの人は聖地を焼いた天使と同じ名前だし……」
信号機三人は割りと他人事みたいに傍観してるな。……黄色いのだけ妙な事を言ってるが。聖地って何だ?
「…………」
そして男の娘は黙って推移を見ている。信号機と違ってただ傍観しているのではなく、この事態をどう判断して立ち回るべきか考えている感じだ。なかなか懸命だな。
強いて難点を挙げるなら、立ち回りを考えているのを覚られちゃダメだというくらいか。
「止めないでいただこう。生意気な学生の指導も担当冒険者の職務の一つ。今は騎士ではなく冒険者なので、貴女も姫ではなく一生徒として私の指示に従ってもらう!
貴様も同様だ、イスカンダル!」
……まぁ、言ってることは正論だな。中身が伴っていれば立派なんだが。




