報告
コンコンコン
パパンの執務室の前に到着し扉をノック
「誰だ」
「マルスです、今日のことを報告に参りました」
「入るが良い」
「失礼します」ガチャ
パパンの声に従い部屋に入る
「それで交渉はどうなった」
「はい、交渉の方は金板5枚を私の個人資産から払う形でまとまりました」
「…ふむ、値段はいいとして……お前の個人資産と言うことは…」
「はい、イスカンダル家の奴隷ではなく私個人の奴隷として契約を結んでいます」
……独断でやったけど問題ないよな?
今回の交渉は俺に経験をさせるための交渉だったんだし
「……そうか、ならば丁度いい
学院の高等部入学の時につける予定だった秘書としての教育を施そう」
……ああそういや、そんな話もあったね
「……ところでマルス、陛下から依頼のあったサティア様たちの送迎はどうした?
ガラハド様とエリス様はリオール家に滞在するとの連絡があったが…」
はて、王宮には連絡を入れたはずだが……パパンと入れ違いになったか?
「あ、はい
今日のところはうちに滞在することになりました」
とりあえず経緯を説明、俺のうっかりの所為だからあまり説明したくないけど隠すと面倒なんだよな…
「……もう済んだことだから仕方ない
サティア様もお前の奴隷を気に入っているようで不満もないようだからよしとするが……明日陛下への説明はお前がしなさい」
明日はリセの登録もあるから王都にいくつもりだったけど……王様への説明は勘弁してほしいわ
「……サティア様がいるなら私も挨拶に行かなくてはならないな
場所はお前の部屋だな」
「はい」
「では行くぞ」
パパンはそう言い先に部屋を出る
俺の部屋まで移動……いちいち階段移動がめんどくさいな
一応、城内移動限定の簡易転移門もあるけどパパンの教育方針で俺には緊急時以外は許可が降りないし
……使用人や奴隷はOKなのに跡取りの俺はダメってどうなの?
いや、あれに頼るのはあまり良くないってのはわかるけどさ
ちなみにこの家だとパパンと俺以外は転移門を介しない転移は使えない……俺はまだ転移は使えないけど
この手の仕掛けはどの貴族の家や街にもあり、転移すると受信用転移門(街の場合は街の入り口)の元に強制的に移動させられ違法な転移の場合は即御用になる
この仕掛けを一部無効化し限定的に転移を可能としたのが簡易転移門だ
……ふぅ、やっと部屋についた
「それでは父上、サティア様に一声かけて参ります」
「ああ、頼んだ」
男が苦手なサティアはパパンも苦手……って言っても大分マシな方だけど
あらかじめ来るとわかっていると多少苦手意識を表に出すものの普通に対応できる
……サティアって俺のことを家業で嫌うけどパパンのことはあまり嫌ってないんだよな…
あれか、和食を支える産業に補助金出しまくってるからか?
特に酒の原料にもなる米への補助金なんかすごいことになってるし…
それに毎年米とかを王宮に納めてるし(だいたいサティアの口に入る)
……昔サティアに教えたのは失敗だったかな………ちょっとパパンに嫉妬中
部屋に入り和室まで到着
トントントン
襖をノックして開ける
「サティア様、よろしいでしょうか?」
中に入ると
「ちょっと待って
……リセちゃん、そうよ
お箸はこう持つの、こうやってスポンジを持つの」
サティアがリセに箸の使い方を教えていた
さっきサーシャを呼び止めたのは箸とスポンジを持って来てもらうためか…
………それはいいけど、サティアはリセを後ろから抱き締めるようにして自分の右手をリセの右手に添えているから百合百合しい感じがするな
やり方は間違ってない、と言うか昔俺がサティアに教えた時と同じやり方なんだけどな…
う~ん、サティアと違って苦戦してるな……まぁ、三歳の頃に一週間でマスターしたサティアが異常なんだけどな
一ヶ月過ぎる頃には俺より箸使い上手くなってたし
「そのままでいいから聞いてください
父上がサティア様に挨拶したいそうなのですぐそこまで来ています
こちらに招いてもよろしいでしょうか?」
「……ぇ…そう、おじ様もお帰りになられたのね……いいわ、お呼びして」
「かしこまりました
……リセ、これから父上が来るから粗相のないようにな」
サティアは多少表情が固くなったもののOKしたのでリセに一声かけ、練習道具をひとまず横に避けさせ外に向かう
あの調子だと箸使いには時間がかかりそうだな…まぁ、五歳だとまともに使えない子もいるから焦らなくてもいいけどな
……あれ、そういやリセってレンゲを左手で持ってたような……気のせいかな?
「父上、よろしいようです」
「そうか」
部屋の入り口まで行きパパンと一緒に和室に戻るとパパンはサティアに挨拶
一通り定型のやり取りを終えるとパパンの目がリセに向く
「この者がそうか
…ふむ、異常の形は獣人……歪みは色……それも問題はない範囲だが…
しかし黒髪に蒼眼か…
娘よ名は何という?」
「……リセ…です…」
「……!?…リセ…だと…
いや、偶然だな」
リセの名前を聞き驚くパパン……予想より反応が大きい……俺がつけたっていうのは黙っとくかな…
「……そこの人に…つけられ……ました…」
リセは俺を指差しパパンに報告……内緒にしようとした矢先に言うなよ
「……どういうことだ?」
「その娘は虐待の影響で自分の名を忘れていたので私が名をつけました」
「…なぜ『リセ』と?」
「心に浮かんだ名だからですが…この名に何か問題でも?」
予想以上にパパンがしつこいな…
「い、いや何でもない
……そうか…
……サティア、私共はこれで失礼します
マルス少し話があるので来なさい」
そう言うとパパンは俺の腕を掴んで和室を出る
ええ~、サティアとリセとまったりしたいのに話があんの?
パパンに拉致られ部屋を出る
そしてなぜかそのまま亡きママンの部屋へ
「あの…ここで何を?」
「少し待っていなさい」
いや、そんなママンの遺品を漁ってないで、いい加減拉致った理由を言って欲しいんだが…
しばらく待っているとパパンは着物やら何やらを持って来て、そこから小間物入れを俺に渡す
「これは?」
「それはあの獣人の娘…リセに渡しなさい」
渡せってこれ一応ママンの遺品なんだが……俺らは使わんとはいえリセにって………はっ、まさかパパンはリセを狙って……ってないか
……リセも自分の娘として見てるなこれは
昔サティアにもママンの遺品の一部をあげてたし
「それとマルス……お前は…覚えているのか?」
「何をでしょうか?」
「い、いや何でもない、気にするな」
まぁ、生まれてすぐのことだろうな……
とりあえず、すっとぼけるけど
いや、だって生まれた瞬間から意識があるとかおかしいじゃん?
え、今さら?
お前みたいな五歳児は異常だ?
いや、この世界ってたまに俺みたいに子供とは思えない子供がいるんだよ
麒麟児とか寧馨児とか呼ばれる子供が……だいたいは魔術の才能が異常にある最強系主人公なんだけど
わりと身近に一人そのタイプの奴がいるから俺も大した問題にならないんだよ
……でもあいつは最強系主人公じゃないよな…
どっちかと言うと…
「…マルス、聞いているのか?」
っと、パパンが何か言ってんな
「申し訳ありません、少し考え事をしていました」
「……まぁいい、明日は王宮へサティア様を送り届け今日の件の報告し、その後リセの戸籍登録をしてきなさい」
「はい」
「それとサティア様とリセの服だが…あれは平民の間で流行っている物ではないか?」
あ、そういやそのことがあったな
「あれは私が買った服です
なかなか腕の立つ職人の作なのですが…」
クリーチャーの店を説明し傘下に加えたい旨を報告すると
「ふむ、ちょうどいいな…」
なにやら考えがあるっぽいな
「明日までに必要な書類をまとめておくから交渉をしてきなさい」
「わかりました」
俺の返事を聞くとパパンは去って行った
……ん?『明日までに』ってことは明日してこいってことか?
え~、二日連続でクリーチャーに会わなくちゃダメなの~?




