日記
その二つには微妙に心惹かれるものがあるけど、それ以上に何でサティアの部屋にあるのかが疑問。前の二冊もサティア自身いつからあったのか知らなかったらしいし。
つーか、それ以前に書いたの誰だよ?
著者だけでも確認しようと、本棚に手を伸ばそうとしたその時、数冊の背表紙にタイトルが書かれていないない、真っ白な本が目に入った。
はて、これは?
「にゃ? ……それ、お姉ちゃんの、日記」
目標を変更してその白い本の一冊を手に取ったところ、リセが呟いた。
確かに錠つきで書籍ではなく日記っぽいけど、サティアが日記を書いてた記憶なんてないだが……。
「日記? サティアさまはそんなものを書いていたか?」
「……はい、最近は、あまり書いて、いないけど……前は、書いていた、みたい……です」
「そうか」
三日坊主というわけじゃないが、気が向いた時に書く感じなんかね。
……そういや俺も昔、文字や文章を書く練習で書いてたっけな。幼い頃のサティアなら俺の真似して書き始めた可能性もあるな。
ちょっと中が気になる。だが、さすがに日記を読むのは人としてダメだ。こんな錠なんて楽勝で開けられるけど、錠がかかってるってことは見られたくないわけだし。いや、でも……
「お待たせ……って、どうしたの?」
「え、あ……いえ。その……」
本棚の前で日記を片手に葛藤していると、お茶と茶菓子を持ったサティアがやって来た。
……まずいな。さすがに日記を持ってるところを見られたら、中を読んでなくても読んだと見なされるだろ。
「本当にどう……って、それわたしの日記よね」
さすがに今回は言い訳のしようもなく、俺が悪い。今日は既に一回機嫌を損ねたから、追い出されるかもな。
「それも一番最初の日記ね。懐かしい……ちょっと見てみましょうか。
あ、そうだ、ついでだからアルバムもいっしょ見ましょう。確かこっちに……」
「え~と、いいのですか?」
「ん? 何か問題でもあった?」
「いえ、別にありません」
だが、予想に反してサティアは起こらず、それどころかいっしょに読もうとさえ言ってきた。
いや、本人がいいならいいけどね。よく考えたら、リセが俺を止めなかったあたり、読んでも問題ない物だったんだな。でなければ、サティアが関係すると逆らうことがあるリセが止めないわけがない。
「え~と、確か三歳の頃から書き始めたから、その頃のアルバムは……あったあった、これね。よいしょっ、と。
あ、日記帳……そこにあるタイトルのない白い本を持ってきてもらえる?」
「はい」
サティアは小説が並ぶ本棚とは別の、学術書などが並ぶ大型本棚から数冊の本、アルバムを持って来て、ベッドの上に広げた。
……多少釈然としないものがあるけど、まぁ、問題がないからいいか。




