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化け物討伐と救いの手

 

 

「あらん。、おかしいわねん。。大貴族や王族の方々にはお抱えの職人がいるはずよねん」

 

 腐りきっても服飾関係者、さすがに王侯の服飾事情は知ってるか。

 

「あ、いやサティア様のじゃ……」

 

 ってサティアの服を買う約束もしてたな。

 

「あらん。、もしかしてアテクシと同好の士なのかしらん。

 家族の方には知られたくないのねん。わかるわん、アテクシ達の趣味はなかなか理解されないものだもの。

 しかもその歳にして下着までなんて……」

 

 言葉につまった所為かクリーチャーが妙な誤解をしてやがる、誤解でもこれと同類に見られるのは絶対イヤだ。

 

「ちが……」

 

「ああん、でも王女様は理解があるのねん。ここに一緒に来たのもカムフラージュのためねん」

 

(-_-#)イラッ

 

 人の話を遮った上に、サティアすら誤解に巻き込むとはいい度胸だ。

 

「轟け迅雷

 逆巻け颶風

 母なる水よ、雷を呑み込み風を纏いて

 我が敵を打ち払う刃となれ

 《テンペスト・ソード》」

 

 大嵐の下級魔術 《テンペスト・ソード》

 水で剣を形作り、風で刃を作って、雷で切れ味上昇とスタン効果を付加した対物・対生物ともに攻撃力の高い魔術だ。

 

「え、ちょっと……!」

 

「死ね」

 

 サティアが止めようと手を引っ張るが無視してクリーチャーに斬りかかる。

 

 キンッ

「ああん、オイタはダメよん」

 

 テンペスト・ソードはクリーチャーに当たるが、人体からは発するはずのない音とともに弾かれた。

 

 あっるぇー?

 

 

 大嵐の特性は天候支配、いくら室内ではその威力を発揮しきれないとはいえ服屋ごときに弾かれる筈ないんだが……。

 

「ええと、斬りかかる気持ちはわかりますが店長はギルドのSSランカーなので討伐は難しいですよ」

 

 いきなりクリーチャーに斬りかかった俺に焦る様子もなく店員が説明してくる。

 ……って、は?

 SSランカーってあのテンプレ組織ギルドのSSランカーのことか?

 

 序列はX・SSS・SS・S・A~Fだから上から3番目のランク。

 実力は戦闘系なら現界最強種族の龍族、その中でも精強と名高い龍闘士ともサシで殺り合えるような強さなんだが……。

 

「なんでそんな見た目だけじゃなく、実力まで化け物なのが服屋なんか……」

 

「もともと服飾職人で自分の満足いく素材を求めていたらいつの間にかSSSまで上がっていたそうですよ」

 

「は? SSS?」

 

 SSSは魔物龍の大群れを殲滅出来る実力者の筈だが……。

 

「店長の目元に大きな傷があるでしょう?

 あれが元で視力が落ちたを機に自ら素材を集めるのを止めて、デザイナーに転向してこのお店ニンフェットを始められたそうですよ。その時にランクを返上しようとしたそうですが止められて、一つランクを落として緊急クエストや任務専門のランカーになったそうです」

 

 名目上はSSでも実質SSSとかマジ化け物なんですけど……。そりゃ下級魔術くらい簡単に弾かれるわ。

 つーか、この店員の落ち着き具合から見てクリーチャーに攻撃をしかけたのって俺以外にいたっぽいな……。

 

「んもぅ、ピリピリって来るのはいい感じなんだけど、オイタをする子にはお仕置きが必要よねん。」

 

 クリーチャーがお仕置きとやらをすべくにじり寄って来た……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その手に巫女服を持って。

 

 

 うん、いつの間にそんな物を出したのか激しく疑問なんだが……少なくとも周りにそんな服はなかったぞ?

 お仕置きってそれを着せるってことか?

 と言うかこの世界に巫女服ってあったんだな……。

 

 

 ちっと不味いことになった。どうやってこの事態を回避するかな……。ギルドの高位ランカーには貴族の権力が効きづらいんだよな……。

 いくらムカッと来たからとはいえ、無礼討ちにするほどのことじゃないから非はこっちにあるし、逃げ出そうにもサティアが何故かさっきまでよりも手に力を籠めて離してくれないし。

 

 とりあえず、

 

「巻きつけ、テンペスト・ソード!」

 

 テンペスト・ソードをクリーチャーに巻きつけ動きを封じる

 

 テンペスト・ソードはソード……剣と言っても実体は水だから簡単に形が変わるので鞭としても使え、刃は風だから鞭にしても剣の性質は失わない。

 ただし、これをやるには中級レベルの魔力制御が必要、しかも元々大嵐の魔術は派手にぶっ放すタイプの術以外は他の属性魔術と比べると1ランク上の制御が必要だから実質上級レベルの制御が必要だし、切れ味も少し鈍る。

 

 剣撃は弾けても、鞭の巻きつきは弾けないだろう。

 

「轟け迅雷」

 

 念のため雷の魔力をテンペスト・ソードに籠めスタン効果を高め、クリーチャーの動きを完全に封じる。

 

「あぁん、いいわん」

 

 ……何これ?

 結構な量の電気流してるのに苦しまないどころかなんで気持ち良くなってんの?

 

「うふん、なかなかイイ感じだけど……そろそろお仕置きね、ふんぬ!」バチュン

 

 クリーチャーがキモい声をあげるとテンペスト・ソードが弾けとんび、ただの水に変わる。

 はい?

 いやいや、結構な量の魔力を込めてたから身体強化でもせんかぎり力尽くで外れるようなもんじゃないはずだぞ。

 身体強化は基本的にその属性を示す色のオーラが出るから見てすぐにわかるし。

 

 …………いや、待てよ、このクリーチャーはSSS相当の実力者だったな。 

 確か身体強化で発生するオーラは強化に必要な量以上の魔力が溢れた余剰魔力だったな。

 本物の実力者は余剰魔力なんて出さずに強化する。強化率が高いほど制御が難しく余剰魔力も多くなるから、見た目にはオーラが多いほど力が強いって勘違いされてるけど。

 

 このクリーチャーは魔力を完璧に制御して身体強化をしてるっぽい。

 よく考えたら、身体強化をしてない生身の身体でテンペスト・ソードを弾けるわけない……よな?

 クリーチャーだといまいち不安だな。

 

 身体の硬質化は地系統の身体強化の特徴、それでいてピリピリ来たってことは絶縁体の性質を持たない鋼属性だろうな。

 金属音もなってたし……。

 

「うふふ、覚悟はいいかしらん♪」

 

 拘束のなくなったクリーチャーが右手に巫女服、左手にメイド服を装備してにじり寄って来る。

 いや、よくない……って言うか何でメイド服が増えてんの!?

 

 逃げようにもサティアがいつの間にか両手で俺の手を掴んでるし……これ完全に俺を逃がさないようにしてるよね?

 最初はクリーチャーが恐いから手を掴んでたんだと思うけど、今は俺を拘束してるよね。

 

 昔、仲が良かった頃に俺を女装させようとしたこともあるし……実際女装させられたし。

 あの時は何故か第一王妃と第二王妃が協力して逃げられんかったな……。

 

 まぁ黒歴史はおいといて、マジどうしよ? このままだと俺の黒歴史に新たな一ページが追加されちまう。

 昔のはまだ綺麗なお姉さんと美幼女だからまだ良かったけど、化け物に剥かれるとかトラウマ以外の何物でもないぞ。

 

 

「何をしているのですか?」

 

 クリーチャーの手が俺に届きそうになったその時、背後──店の入り口の辺りから聞き覚えのない、冷たさを感じる声が飛んできた。

 その声を聞いたクリーチャーは動きが完全に止まったので後ろを振り向き声の主を確認すると、そこには一人の女性が立っていた。


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