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いたずらとリア爆と汚点

「うふん、あなた達が王女様に、貴族の若様ねん?」

 

「あ、ああ……」

 

 モンスターが身体をくねくねさせながら確認してくる。

 ……何だろう、この油断するとうっかり斬りかかりたくなる物体は?

 

「男が苦手なことで有名な第一王女様と一緒にいるということは、あなたはイスカンダル家の若様ねん」

 

「まぁ、そうだが……」

 

 サティアの男性恐怖症って結構有名なんだよな……原因とかは公表されてないけど。

 

 ……あれ? サティアと一緒にいる男=俺ってのも結構有名な話?

 

「お二人はデートかしらん? いいわね~ん、アテクシにもそんな時代があったわ~ん」

 

 これがデートって……いったい何とデートしてたんだろ? つーかデートじゃねぇし、アテクシって……。

 モンスターは過去を回想してるらしく(内容は知りたくもないが……)、トリップしている。

 今のうちに逃げ出したいが……サティアはおぞましい物を見た所為か魂が抜けてるし、逃げ出しても逃げれそうにないんだよな……

 なんつーか、魔王からは逃げられない的なノリで。……いや、むしろジェイソンかな? あの物体は存在自体がホラーだし。

 

 

 最初に出てきた店員も戻って来たみたいだから、こいつと話して二人が帰って来るのを待つか……。

 

「なぁ、あの物体は何だ?」

 

 あまり確認したくはないが、話の取っ掛かりとしてモンスターのことを聞いてみる。

 

「ひゃっ、ひゃい……」

 

 何でそんなに緊張してるんだ? この店なら貴族の来店も珍しくないし、さっきの機転を見る限り新人ってわけでもなさそうだし…………あ、うちは悪名高い貴族だったね。

 

 

「そう緊張するな、多少の失礼があっても店をつぶしたり、奴隷にすることはない」

 

 イスカンダル家の持つ特権として相場の3倍の金を払えば王族以外の国民を奴隷にできるってのがあるんだよな……貴族の当主や次期当主、その配偶者はできないとかいくつか制限はあるけど。この特権が使用されることは滅多にないが、悪名高さにブーストをかけてる。

 

「は、はい、あの物t……彼はニンフェットのオーナー兼デザイン総指揮者兼本店店長のクリーチ・アベルです」

 

 今こいつあの物体って言いかけたよな……。

 クリーチ・アベルねぇ……そういやクリーチって名前のロシア生まれのカップケーキみたいな菓子パンがあったなぁ……。でも、あれはクリーチって言うよりクリーチャーだよな?

 

 クリーチ・アベル……クリーチア・ベル……クリーチア……クリーチャー?

 

 

 

 

 ……って、え?

 

 本店店長の前になんか二つついてなかったか? オーナー兼デザイン総指揮者、って。

 確かニンフェットはまだ創業10年程度の若い店で、複数のデザイナーを抱えているものの創業者も現役のデザイナーで指揮を執ってるって……。

 つまり、あのクリーチャーが人気ブランド・ニンフェットの創業者でデザイナー?

 

「あれは表に出しちゃダメだろ……」

 

 服のデザインはいいのに、デザイナーの親玉があの物体ってのはどんなネガキャンよりも効果ありすぎだろ。

 

「ええ……、ですから普段は奥に封い……もとい奥でデザインと経営に集中してもらっているのですが……」

 

 こいつ封印って言いかけたな……まぁ、気持ちはよくわかる。

 

「いくら王女様のお相手が荷が重いとはいえ、クリーチャー召喚はダメだろ。他に責任者はいないのか?」

 

 小さいとはいえ本店、店長より権力が弱くとも責任者に値するヤツはいるはずだが……。

 

「あいにくとゼネラルマネージャーの奥様は留守にしていまして……」

 

 申し訳なさそうに店員が答える。

 

 ゼネラルマネージャーは留守か……タイミング悪……ん? またおかしなワードがあったな……奥様?

 

「奥様って誰の?」

 

「え~と、信じがたいとは思いますが……店長の、です」

 

 はい?

 

「アレ、結婚してるのか?」

 

「ええ、わたくしも未だに信じられませんが……」

 

「何と?」

 

 できれば異界(天界と魔界のこと)の存在、無理ならヒト族以外であってほしい。それなら価値観が違うって自分を誤魔化せるから。

 

「人間……ヒト族の女性です、それも結構美人な」

 

 …………うん、聞かなかったことにしよう。ある意味あのクリーチャーそのものよりもショックな事実だ。

 

 

 

 

 う~ん、しばらく店員と話していたが、サティアの魂が戻る様子もクリーチャーの奇行も収まる様子もない。

 ……よく考えたらサティアはともかく、クリーチャーは無視してもいいよな?

 ってことでサティアを起こすか……。

 

 

「サティアさ……「ひゃんっ!?」」

 

 ……なに、その反応?俺、ただ肩に手を置いて声をかけただけだよ?

 ……そういや、ちょっと手が耳にかすったな……エルフって耳が敏感らしいからそれが原因か? ……いや、待てよ。

 確かさっき獣人の娘を膝枕してる時に、獣人の娘が身を捩ったときにくすぐったそうにしてたから、くすぐったがりで、肩に触れたことが原因かも。思い返すと、昔からそんな感じだった気もするし。

 ……どっちが原因なのか気になるな。

 幸いと言うべきか、サティアはまだ正気に返ってない模様、正気に返すという大義名分はある。

 ってことでLet's try.

 

 まずは肩から。

 

「サティア様~」

 

「……ぁん」

 

 少し高めの声……ふむ、反応からすると多少敏感な程度か。それなら耳の方の可能性が濃厚か。……ってことで次は本命の耳……の前にちょっと検証3割、悪戯7割で脇腹をつついてみる

 

「ティアちゃん~」

 

 ついでに懐かしの呼び方で呼んでみる。

 これはまだサティアに嫌われる前──だいたい一年前まで使ってた呼び方。あの頃は『ティアちゃん』『るーくん』って呼びあってたんだよな……

 

「……ひゃう」

 

 ふむ、最初のには劣るもののさっきの肩よりは反応あるな。基本的に肩より敏感な脇腹でこの反応ってことは、やっぱり耳に触れたのが原因か。身体の方もそれなりに敏感っぽいけど。

 

 さて、それじゃあ……もうほとんどわかっているけど本命の耳。

 

「ティアちゃ……「……ひゃん!?」」

 

 おおう、食いぎみに反応したな、やっぱりこっちが原因か……。

 

 そういや、物心つく歳になる前からの付き合いだけど耳に触ったのって初めてだったな……。

 

 ムニムニ

「あっ、ぁぅ……ひっ……ゃん! ……や、やめ……るーく……ぁん……!」

 

 なんで触ったことないんだっけ? 一年前までは仲が良かったからそういう機会がないわけじゃなかったはずだが……。

 ん~、なんかあったような気がするんだが思い出せん

 

 ムニムニ

「……ぁ、……ぃゃ……ぃ、ぃい……か……」

 

 しっかし、なんか触り心地のいい耳だな。先が尖ってるから硬いのかと思いきや、全体が耳たぶみたいな感じでいい感じにムニムニしてて。

 朱く染まった耳と淡い青銀の髪のコントラストも綺麗だし…………ん?

 朱く染まった……?

 

「……ぃ、いい加減に離して、るーくん!」

 

 パァ────ンッ!

 

 っ痛ぇ! 本日二度目のビンタ、しかも狙ってなのかは分からんが的確に同じ場所。

 いつの間にか気が付いてたのね。

 って、今の状態で不意討ち気味のビンタはマズイ! 何がマズイかっつーと、サティアはクリーチャー出現からずっと俺の手を握ってる。

 そしてサティアはエルフの嗜みで弓をやっているので、意外と力があるから不意討ちならビンタで俺を軽くノックバックできる。

 

 つまり、

 

「キャッ!」

 

 手が繋がっているので、ノックバックした俺にサティアが引き摺られるわけだ。

 

「っと、大丈夫ですか?」

 

 ふぅ、危ない危ない。

 倒れ掛けたサティアをあわてて抱き止める。

 

「……あ、ありがとう…………!?」

 

 だが、俺もバランスを崩してたのであまり余裕がない状態だったわけで……サティアの顔が目と鼻の先にある。

 

 

「…………」

「…………」

 

 顔を真っ赤にしたサティアと目が合ったまま固まる。

 

 さて、どうしよう?

 将来有望どころか、現状でも充分すぎる美幼女なサティアと簡単にキスできる距離にいる。

 前世ではロリ属性はなかったはずだが、サティアという美幼女が身近にいたためロリ属性が付加されたので気分的には『もうゴールしてもいいよね』って感じなんだが……。

 だって、敏感なところを刺激された所為か目が潤んでるし、こっちもショタだから合法だし。

 

 

 よし、それじゃあゴールするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、そこよ王女さま、そのまま押し倒しちゃいなさい。女は度胸よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、そこで視界の外からそんな声が届いた。

 …………はっ、今俺なに考えてた!? 相当問題あることやらかそうとしてなかったか?

 

 まぁいい、それより今の声はいつの間にかトリップから帰還したクリーチャーの声か?

 助かった……。

 

「あぁ、もう

 初々しくていいわねん

 思わずアテクシも濡れてきちゃったわん」

 

 何が濡れて来たのか小一時間ほど問い詰めたい──答えは聞きたくないけど──が、無視するとして…………これに助けられたのは癪だな。人生最大の汚点じゃないかな?

 

 わずか五歳にして人生最大の汚点を作ったことに凹みつつ、サティアから顔を離す。

 

「あらん、やめちゃうのん? もぅ、意気地なしねん……」

 

 うわぁ……、いろんな意味ですっげぇムカついたな。

 

 とりあえず落ち着こう、斬りかかるのは用事が済んだあとでも出来ることだし

 

「……お前がここの店主だな」

 

「あらん、アテクシとしたことがまだ名乗ってなかったわねん。

 そう、アテクシがニンフェット本店店長のクリーチ・アベルよん。

 それで大貴族の若様と王女様が何の用かしらん?」

 

「服と下着を数着見繕ってもらいたいのだが……」

 

 ふぅ、ようやく此処に来た目的を果たせるな。


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