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デート?…それと未知との遭遇

 さて、服屋を目指して歩いているわけだが……周りからの視線が鬱陶しい。

 王都には貴族がそれなりに住んでるので貴族が珍しい訳ではないが、ヒトの貴族っぽい格好をしたエルフはかなり珍しい。この国のヒトの国で、貴族はヒト以外の種族にはわりかし厳しいく配偶者として家に迎える者はほとんどいないからだ。

 現在そんなレアな条件に該当するのは第二王妃とサティアくらいだ。

 サティアは公の場にあまり現れないことで有名だが──大勢の男からの視線が恐いらしい──ヒトのドレス姿のエルフの幼女はサティアくらいなのですぐにバレてしまったらしい。

 直系の王族が街に来ているのも珍しいが、ほとんど姿を現さないサティアなのでなおのこと注目が集まっているらしい。

 

「…ぁぅ……」

 

 当然、男からの視線もあるのでサティアがそれに恐がって俺の服の袖を摘まんで歩いている。

 はぁ、これ絶対、貴族の跡取りと王女のデートって思われてるよな。だって子供同士だからか視線の半分くらいは微笑ましいものを見る目があるもん。

 サティアを引き剥がすのも面倒なのでとっとと服屋に入ろう……。 

 

「ぁ、ありがと…」

 

「何がですか?」

 

 足早に歩き服屋に到着すると、サティアがお礼を言ってきたけど……とりあえずイジる。

 たぶん自分のことを慮って俺が速く歩いたと思っているんだろう。

 

「ぅ~、な、何でもない!///」

 

 あ~、もう真っ赤になってかわいいな~。……っと、それより早く店に入らないとまた視線が集まり出すな。

 

 カランカラン

「いらっしゃいませ~」

 

 ドアを開けるとカウベルが鳴り、若い女性の声が飛んできた。

 

 

『ニンフェット』

 

 ここは15歳くらいまで女の子向けのファッションブランドの店で男の店員もいないだろうからサティアも大丈夫だろ。

 扱う商品は下着から礼服、平民用から貴族用まで幅広く取り揃えていて全国展開しているブランドだ。

 まあ、幅広くとは言っても客側の貴族に平民と同じ店で買い物をするのを嫌がる奴がいるので貴族用、平民用、総合型の店舗が存在する。この店舗は本店で総合型だけど貴族寄りらしい。

 店の大きさは個人経営の店程度と本店なのにかなり小ぢんまりとしているが、この店からこのブランドが始まったらしく実際に個人経営時代の店舗をそのまま残しているらしい。

 

「ようこそニンフェットに……いらっ……しゃ……」

 

 元気よく出てきたお姉さんがキョロキョロと物珍しそうに周りの服を見ているサティアを見たとたん言葉が途切れた。

 サティアよ、服屋…と言うか店に入ったのは初めてだろうから気持ちはわからんでもないがもう少し落ち着けよ。まあ、子供だから仕方ないといえば仕方ないか……。

 ちなみにサティアは男からの視線がなくなったので俺の袖から手を離してる。

 

「え、え~と、少し待って……、いえ、少々お待ちください。

 て、店長────!」

 

 ふむ、自分の手に余ると判断したのか店長にヘルプコールしに行ったな、なかなかの判断力だ。

 まあ、貴族も相手にする店舗の従業員とはいえ王族、それも直系の王女が来るとは思わんし、どう対応すればいいかわからんわな。下手な対応をすると最悪不敬罪で首と胴体がさようならすることにもなりうるし。

 

「どうしたのかしら?」

 

 周りを見るのに夢中だったサティアも店員が奥に走っていくのには気付いたらしい。

 

「責任者を呼びに行ったみたいですね、さすがに一店員に王女の相手は荷が重すぎますから」

 

「そうなの? それより可愛い服が多いのね。お城の人たちもこういうのを作らないのかな?」

 

「無理でしょうね」

 

 この辺り(入り口付近)に置いてある服は平民向けのカジュアルなもので、貴族向けのは奥にある。つまりサティアが作って欲しがっているのはカジュアルなもの。 城の職人達は貴族向けのもののノウハウしかないから作るのは無理だ。

 

「わたしもこういうの着てみたいなぁ……」

 

「それならプレゼントしましょうか?」

 

 淋しげに呟くサティアに提案してみる。

 たまにエルフ服姿を見ることはあるが、基本ドレス姿なのでカジュアルな服装も見てみたいし。

 

「え、いいの!?」

 

 すると、嬉しそうにサティアが聞き返してくる。

 ぶっちゃけ、獣人の娘を買って金が大分なくなったのでキツいといえばキツいが……サティアの喜ぶ顔が可愛いのでよしとする。

 

「あ、でも、あまり物を王族としてふさわしくない物はもらっちゃいけないって……。お城の人たちが作らないってことは王族にふさわしくないってこと……よね?」

 

 まぁ、あながち間違いではない。

 

「心配要りませんよ、ぼくがなんとかしますから」

 

 

 それならサティアがカジュアルな服を着れる手を打てばいいだけだ。まあ、いくら王族でも国内一位の貴族であるイスカンダル家の跡取りからのプレゼントを無下に扱うことなんてできんから手を打つ必要はないけど。

 ……それに小遣い稼ぎになるし。

 

「本当に!? ありがとう」ギュッ

 

 サティアは大輪の花のような笑顔を浮かべ、俺に抱き着いてきた。

 ちょっと罪悪感で胸が痛いです、って言うか喜び方大げさじゃね?

 つーか、ちょっと抱きしめるのやめて、幼女とはいえ可愛い娘に抱きしめられるのはさすがに照れるし、この状況を王様やパパンに知られると面倒だ。

 幸い今は周りに客も店員もいな……

 

「はぁぃん、お待たせぇ~ん」

 

 

 ギャー店員来やがった。

 

「あらん、お邪魔だったかしらん?」

 

「え、あ、きゃっ」

 

 突然の店員の登場にサティアは俺を抱きしめるのをやめる……が、代わりに手を握っている。

 

 

 

 なぜなら、現れた店員は

 

 浅黒い肌

 

 スキンヘッドで

 

 大きな傷のある歴戦の戦士顔の

 

 ゴスロリ服の大男だからだ。

 

 

 

 

 聞こえて来た声が野太かったからある程度予想してたけど、予想以上酷いっつーか……惨いな。

 

 うん、これサティアじゃなくても怯えるわ、手を握って来たのはこっちとってもありがたい。

 ……ってあれ? たしか最初に出てきた店員は店長を呼びに行ったんだよな? で、このモンスターがやって来た。

 

 

 

 え、これが店長!?


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