絶対侵入
これで家の中は密室になった。
ベランダの鍵も閉めたし、トイレの鍵も確認した。我が家に入るためのありとあらゆる進入手段はこれで完璧に防いだはずだ。
午後21時、私は家の中全ての鍵を確認して回っていた。というのは今夜、我が家に侵入者が来るのだ。奴は大胆不敵にも必ず決まった日に犯行予告を出す。私と奴との対決も今回で三度目を迎えていた。
前回の対決まで私は奴の後手にまわっている。全ての出入り口を封鎖したと思い不覚にも眠ってしまった私の枕元に、翌朝、奴の侵入した証が見せしめのように置いてあったのだ。それを見て私は愕然とした。前回たった一つ見逃していた進入経路、それは煙突だった。我が家には暖炉があったのだ。
名探偵と言われる私が二度も遅れをとったという事実は私の自尊心を激しく傷つけていた。今度はなんとしても侵入を防いでみせる。
これは私と奴とのプライドの戦いなのだ。奴をただ捕まえるだけならわけもないが、それでは過去二度の敗北の借りを返したことにはならない。全世界どこにでも侵入すると言われている奴が私の家に侵入を試みて失敗に終わる。それこそが私が求める勝利なのである。
もちろん、今夜は煙突も中から蓋をして進入できないようになっている。念には念をいれて人が入りそうな通気ダクトも塞いで、最小限の換気扇しか残していない。もはや、中から鍵を開けない限り進入は不可能だ。奴にはルールがあり、ガラスや扉を破り侵入してくるということはない。奴は犯罪者ではあるが芸術肌なのだ。自分で決めたルールは破らないだろう。もし万が一、窓を破られて侵入されたとしてもそれも私の勝利なのだ。
さあ、どこからでも入ってくるがいい。入れるものならばな。
私は眠ることにしよう。次に目覚めた時、それが私の勝利の瞬間になる。
次の朝、私が目を覚ましベッドから降りるとそこには大きな箱が置いてあった。なんということだ! 奴が侵入したのだ。
私は敗北感に打ちのめされた。一体どこからこの家に侵入したというのだ。窓は全て鍵が閉まったままだし、煙突も換気扇も塞がれたままだというのに!
悔しさに歯を食いしばりながら、私は奴の贈り物を確かめることにした。
「ちょっと考えればわかりそうなものだけどね」
「仕方ないわ、いくら名探偵と言われてもまだ子供なんですもの」
箱の中から出てきた大きな熊のぬいぐるみと遊んでいる息子を見て二人は呟いた。周りの子より少し頭の回転はいいかもしれないが、やはり子供である。楽しそうにぬいぐるみと戯れている息子はとても愛らしい。
それから二人は小さな声で、たっぷりの愛情を込めて言った。
「メリークリスマス。愛してるよ」
お疲れさまでした。
最後まで読んで頂だきありがとうございます。
子供の頃、疑う事を知らなかったあの頃。サンタクロースは煙突のない我が家に一体どう侵入しているのか不思議で仕方ありませんでした。
それよりももっと不思議だったのはサンタが私の望んだものではなく勉強道具を置いていくことでしたが。
お暇がある方、厳しい評価お願いします。
参考までに、私は褒められて伸びるタイプです(▼▼メ