保健室のジュリア
学校で薬がある場所といえば保健室だ。
ここは一階で保健室は二階だけど、彼は大丈夫だろうか。
先ほど見た限りでは相当発熱している。
そう考えながら私は走った。
普段運動をしていないので、すでに息があがってしまった。
しかし、頭の中ではさっき起こった事件が何回もリプレイされている。
(天使・・・悪魔・・・・・ここでは聖書の中でしか見たことのない単語だ。)
荒い息さえ、邪魔になってくる。
(なぜ、ソレは変わってしまったの・・・ソレは、私を騙していたの・・・?)
そこまで考えてはたと気付く。
(変わったといえば、みんなのあの豹変振りは何・・・?まるで、何かに・・・。)
そして最大の疑問は。
(私のまわりで、何が起こっているの・・・?)
悩みながら走っていると、あっという間に着いてしまった。
緊急事態なので、ノック抜きにする。
すると、中からキャッという声と、パリン、という何か割れる音がした。
ぱっとそちらを見ると、養護教諭のジュリアがいた。
実は彼女、学校一といわれる変人(?)だ。
誰も知らない薬を生徒に与えているとか、こっそりアルコールを摂取してるとか、いい噂は、無い。
「あらあらあら。カップが割れてしまったわ。ミコト、きちんとノックしなさいな。」
怒っているのかいないのか。ふんわり笑顔で言う。
「ごめんなさい。ジュリア。でも、緊急なんです。怪我している人がいて・・・。」
あら、とジュリアはお上品に口に手を当てて
「救急車、呼んだほうがいいのでは?」
と電話に手を伸ばす。
「呼ばないでっ!!」
私の鋭い声にジュリアは驚いたようすも無く、そう、と言って手を引っ込めた。
「怪我の様子は?」
え、と思わず顔を上げる。問い詰められると思っていた。
「怪我、してるんでしょ?」
ジュリアはただふんわり笑っていた。
「え・・・と、火傷していて・・・熱も・・・」
ちょっと待っていて、と言うとジュリアは戸棚へ向かう。
「ありがとうございます。」
おもわず、つぶやいた。
ジュリアは立ち止まると、
「いいのよ。」
とだけ、返してきた。
だから、泣かないで、
とも。
涙が止まらない。
裏切られた私の心を包み込んでくれる。
私は、大人になったら彼女のようになりたい。
「火傷に効く軟膏があるの。あと熱さましも。よく効くわよぉ。」
ジュリアが戸棚をあけた。次の瞬間。
キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!
という絶叫と、何かが崩れる音がした。
見ると、数々の薬が転げ落ちていた。
戸棚を見ると中は・・・・
これでもかと言うほどぎっしり詰まった薬の数々。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
なるほど、落ちたのはこれが原因か。
なんというか、その・・・。戸棚の意味をなしていない。
ジュリアはむっつりと黙り込んで、私に必要なものを渡した。
「この戸棚、私が並べると、いつもはきだすのよ・・・。」
・・まあ、それは当然ですよ、とは口が裂けてもいえなかった。
今回は短くてすみません・・・・。