勝利
彼は私の前に立った。
「私の後ろに居ろ。安全だから。」
「あ、安全・・・・・?」
彼はそれ以上私にかまわず、天使に向き直った。
それから、なにやらほかの国の言葉らしきものでで天使に告げた。
「 。」
その瞬間天使が飛び立った。体重を感じさせない動きだった。
ひゅっと空を切る音がしたと思うと、次の瞬間にはソレの身体から緑色の血が噴水のようにふきだす。
その血が触れたところは、塩酸が触れたようにじゅうっと音を立てて溶けていった。
あまりの惨劇に目の前が暗くなる。
ふと天井を見ると私に向かって血が雨のように降り注ごうとしていた。
「・・・・・・!!」
恐怖で身体が動かない。
そのとき誰かが私を突き飛ばした。
直後、じゅうっと言うおとがした。
はっとなって私はその人を見た。
「ひどい火傷。」
しかし彼は表情を変えずただ、静かな目で、ソレを見た。
が、いきなり表情を変えると私を見た。
いや、正確には、私の後ろを。
恐る恐る後ろを振り向く。
そこにはもう一匹、悪魔がいた。
激しい殺気を全身にまとって。明らかな憎悪を隠そうともせずに。
そこに、いた。
「ジャマヲスルナ。ニンゲンゴトキガ、ワレワレノジャマヲ!!!」
口を開け、襲い掛かって、
こなかった。
悪魔は、そのままがくりと膝をつくとそのまま倒れた。
巨大な身体の後ろから出てきたのは先ほどの天使だった。
愛らしい姿にはとても似合わないたくさんの返り血をかぶって。
それをとても幸福だと言いたげな顔をして。
もはや悲鳴を出せるほどの体力もなくなった私は、ぼんやりとそれを見つめていた。
ふと周りを見渡すと、あれほどいた生徒たちが一人もいないのに気が付いた。
そのとき彼がポツリと何かをつぶやいた。
とたん、天使の姿が消えた。
それですべて、終わりだった。
あれほどの騒ぎがあったのに、なぜ、誰一人集まってこないのだろう。
ソレの姿を見ながら考えた。
突如、ソレの身体がピクリと動いた。
そしてさけぶ。
「ミコト、お前は私たちのものだ!!小僧、俺を倒しても、意味がない!!」
ひゃはは、という狂った笑い声を残して、ソレの姿は跡形もなく消え去った。
ガクッと黒髪の彼は膝を付いた。
あわてて駆け寄ると、彼の額には大粒の汗が滲んでいた。
呼吸も荒い。
「・・・っ!!大丈夫ですか!?」
彼は返事をする余裕もないらしい。
「今すぐ人を・・・」
急いで立ち上がろうとした私の腕を彼がつかむ。
「人は・・・呼ぶな。」
息も絶え絶えにつぶやいた彼の身体は異常なくらい熱かった。
「わ・・・解り、ました。」
そっと彼の腕を見ると、火傷がひどくなっていた。
「今、薬を持ってきます。だから、動かないで。」
そういって私は、教室から飛び出した。
わ~~い!!『救世主』の勝利ですね!!
・・・でも、悪魔たちが私の頭の中で好き勝手なセリフ言うんで、今夜は寝れなさそう・・・。(泣)