黒髪の救世主
私が言うと、ソレがにっと笑った。
「いいよ。その前に君の血を一滴ちょうだい。」
ソレがあーん、と口をあけるので私は先ほど怪我したところからソレに血を吸わせた。
「ふふ。ふはははははは!!」
ソレの身体がいきなり巨大化して凶悪な姿となる。
「え・・・・・・・。何なの、それ・・・・・。」
ソレは私の問いには答えずに、トイレから飛び出した。
あわてて私もソレのあとを追いかけた。
突如として教室は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
ソレの身体はまるで悪魔だった。鋭い爪でクラスメートの体をひっかく。
ソレの動きと共に教室が血に染まる。
ソレの姿が見えない子たちは何が起こっているかわからないだろう。
「ねえ、もう止めて!!みんな死んじゃう!!」
私が叫ぶとソレがニヤリ、と笑った。今まで見たこともない恐ろしい顔だった。
「何を言っている?こいつらを殺してくれって言ったのは同じだろう?」
その言葉を聴いて、私ははっと気が付いた。
そうだ、これを望んだのは私自身。こうなっても、私にはソレを責める事ができない。
それどころか、裁かれなければいけないのは、私。
そのとき私の顔の横を何かが通り過ぎた。
それと同時に声がする。
「天の使いよ、我が命に従え。契約により我が僕となり我の力となれ・・・裁きの天使よ。」
いきなりソレが動きを止めた。いや、止めたんじゃない。動けなくなったんだ。
ソレの視線の先になにか天使のようなものがいた。
「あれは・・・天使?」
すると先ほどの声が答えた。
「・・・。あれが、見えるのか?」
微かに驚いた声で、言った。
「・・まあいい。説明は後にする。確かにあれは、お前たちの言う天使だ。あれは裁きの天使。天の使いの中で最も残酷で血を好む。・・・悪魔よりも。」
ざっと私の横で足音がした。私は震える体でそっとその人の顔を見た。
とても長い黒髪。私よりも綺麗な髪。
あまりに長い黒髪なのではじめは女かと思った。
だが声は、男の声だった。
「なぜ、ここに悪魔がいる。しかも、あまりに強い。だが・・・。」
彼は笑う。静かに笑う。
「私が、何とかする。安心しろ。」
その笑みは、強さからくるのか・・・。
私の強張った心にゆっくり入ってくる、その強さ。
「あ・・・、」
私の思いは言葉にならない。
私は思う。
彼は、救世主だと。この黒髪の彼は・・・。
私の非日常から、救い出してくれる、救世主に違いない、と・・・。
やばいですね、なんか、悪魔&天使来ちゃいましたねえ・・・。
黒髪の彼・・・誰なんだろうね・・・。